花火を撮りに行く、というと「難しいんでしょうね」と言われることが多いのですが、実はそんなこともないので、ここに、撮影法を簡単に記してみようと思います。もう今年の花火には間に合わないかも知れませんが、来年参考にしてもらえれば..(冬にやっているところもありますが)
なお、最近はデジタルカメラの方も多いと想像しますが、私は未だ本格的にデジタルカメラを使っていないので、それは来年以降に追加します。ただ、基本的なところは変わらないので、参考にはなると思います。


★機材・持ち物編

(1)カメラ

何を持って行くか。大まかにはバルブ(B)撮影が可能な、一眼レフ(SLR)またはコンパクトカメラということになります。ここで、バルブとは、「シャッターボタンを押している間、シャッターが開き放しになる」機能です。

・マニュアル露出のSLR機
絞り、シャッタースピードを自分で決められるカメラ。これがあれば一番簡単で、シャッターダイヤルに"B"とあればOK。

・自動露出のSLR機
普段、オートでしか撮らない方は、取り扱い説明書を参照いただき、マニュアル露出が出来るかどうかを確認する必要があります。バルブ(B)でのシャッター秒時に制限があったりするらしいので。

・レインジファインダー(RF)機、二眼レフ(TLR)機
SLRではシャッターが開いている間、ファインダーがブラックアウトするので、構図にうるさい方はこれも候補になるでしょう。ただ、花火だけのためにRFやTLRを買うのはお勧めしません。一般に、これらのカメラはSLRより高価なので。また、単焦点レンズしか使えないので、画角の微調整が出来ないのは短所となるでしょう。

・コンパクト機
バルブ(B)またはタイム(T)露出が付いていればOK。タイムとは、シャッターボタンを1度押すとシャッターが開き、もう1度押すと閉まる機構。もっとも、ほとんどのコンパクトカメラにこれらの機能はなく、せいぜい最長1秒前後。ちょっと厳しいので、挑戦すること自体はお止めしませんが、出来ればSLRを用意した方が良いと思います。

カメラに付随するものとしては、ケーブルレリーズが必要。分からない人はカメラ店に問い合わせて下さい。特に、最近のオートフォーカスカメラは、専用のレリーズスイッチが必要です。

(2)レンズ

焦点距離は35mmフルサイズで記述しますので、APSやその他の方は換算して下さい。
さて、焦点距離は、花火を見る位置によります。

・メイン会場などで見上げるように鑑賞する位置
28-70mm程度あれば十分です。周りの観客や風景も入れて撮りたい方は超広角という選択肢もあると思いますので、まずは撮ってみることです。特段に明るいレンズを用意する必要はありません。F8程度に絞るので、ほとんどのレンズで描写が問題になるようなことはないと思います。

・遠くから見る位置
50-100mm、場合によっては70-200mmが必要です。
例えば、東京湾大華火祭をお台場から見た私の例では90mmで風景と花火が撮れました。花火のみを狙う人は望遠ズームを活用していました。望遠を使うときはよりしっかりとした三脚を使う必要があります。

(3)三脚

三脚は必須です。脚を広げて、カメラを載せたとき、脚が振動したりしないものを選んで下さい。一般的には、4段より3段(脚を伸ばす段数)の方がしっかりできているはず。雲台(カメラを載せるところ)は、自由雲台や3ウェイ雲台などありますが、単に左右に振るだけなら3ウェイの方が楽です。自由雲台はどの方向にも動いてしまうので、慣れないとまごつくかも知れません。

三脚を立てるときの基本も簡単に書いておくと、
・脚は太い方から先に伸ばす
全部の段数を伸ばさなくてもいい場合は、太い方を伸ばします。細い方を伸ばすと強度が不利になります。
・まずは脚だけで水平を出すように心がける
なるべく、水平は脚の伸縮で調整します。これで水平を出しておくと、3ウェイ雲台などでカメラを左右に振っても、構図が傾くことを防げます。

(4)フィルム

デジタルの方には関係ない話ですが..
ISO100のリヴァーサルフィルム(スライドまたはポジフィルム)
100なんて感度で撮れるのか、という方もいらっしゃると思いますが、大丈夫です。露出は別項に書きますが、ISO100でF8-11くらいが標準です。
ネガフィルムではだめか、というわけではないですが、フィルムが現像から上がってきてからずらりと並んだ花火を見るのも楽しいものです。ポジで挑戦してみて下さい。また、ネガで撮ってプリントする場合、夜空が黒く焼かれない場合がありますので、店に花火を撮ったことを伝えた方が良いと思います。

・フィルムの銘柄
これは、好みもあるのですが、最近出たフジのVelvia 100Fあたりはなかなかよろしいと思います。もう少し派手にしたいならVelvia100、またはコダックのE100VSなども良いです。ただ、派手な色のフィルムは地上の水銀灯やナトリウム灯の色も派手目に出てしまうので、不自然な色かぶりが発生する可能性があります。また、以前は長時間露光の場合、フィルタで色補正が必要とされていましたが、最近のフィルムでは花火程度の露光では問題になりません。

(5)その他の持ち物

・懐中電灯、ペンライト等
暗い中、フィルム交換やレンズ交換など、いろいろ作業するために。

・電池の予備
電子式カメラの場合、電池が切れると終わりです。また、バルブ中に電流が流れ続けるカメラもあり、普段より早めに消耗する可能性がありますので、要注意です。露出計以外に電池を使わない機械式シャッターのカメラでは、特に不要です。花火では露出計は使いませんので。

・ビニールシートなど
地面に座る場合は必要。私は三脚の収納袋に座って、これを省略しています。

・周辺の地図、花火プログラム
主催者や観光協会で配っていると思うので、入手しましょう。位置決めや、帰りのルートを考えるのに便利。また、花火プログラムにはどういう種類の花火が上がるかを記しているものがあるので、今後の勉強にもなります。自分の好みの花火がどんなものかを覚えて、次回に活かすわけです。

・飲み物等
判断はお任せします。


★撮影編

(1)場所の確保など

・到着時刻は?
花火大会の規模、会場の広さに依存しますが、大きな大会で動員数が数万人以上ともなれば、かなり混み合うことは確かです。花火開始の2-3時間前には到着しておくことが望ましいと思います。人によっては、前日からキャンプしています。

・場所の確保
だいたい、ビニールシートで場所取りをしている人が多いと思いますが、撮影の場合、三脚を立てておくのが望ましいです。三脚があるとその前後にぴったり座られることはないですし、意思表示は明確にしておいて損はありません。また、早いうちから酒盛りをして騒いでいる人、お子さんを遊ばせて放任している人の近くは避けましょう。お互いのために..
場所を探す時に注意して欲しいのは、三脚は畳んで歩くこと。これは本当に邪魔です。ラッシュ時に荷物を背負っている人以上に、邪魔でかつ危険です。また、三脚にカメラを付けて歩かないこと。引っ掛けられたら、終わりです。
また、こんなことを書くのはどうかと思いますが、三脚を立てている人のすぐ前に位置しない混んでいる一角に入って行って三脚を立てない。これは常識の範囲でやって欲しいところです。
花火がどこに上がるかは、主催者が配布する案内図などがなければ、何時間か前に上がる「昼花火」を参考にして方向を確認しておくと良いです。夜の発射台と同じ場所のはずです。

・場所を確保したら
なるべく持ち場は離れないことをお勧めします。立てた三脚が盗まれるかも、というのもありますが、周囲の人たちとちょいと会話できれば撮影がスムーズに進む可能性が高まります。また、放置した三脚につまづいてトラブルになる可能性もあります(特に暗いとき)。

(2)撮影準備

昼間からカメラをセットしておく必要はありません。熱くなってフィルムが変質したり、カメラが故障する可能性があります。日が傾いてきたら、準備をしましょう。

・三脚
これは、上記の通り、事前に準備しておきます。公園などで、手すり・柵がある場合、これに触らないようにセットします。手すりに他の人が触ったりした時に、振動が伝わってしまいます。

・カメラ
三脚にセットします。縦位置にするか、横位置にするかはその時々で判断するしかないですが。また、ストラップは短めに結んでまとめておくことをお勧めします。縦・横を変えた時に、ストラップがレンズを隠すという事故を防止するためです。露光中はファインダーが見えません。ストラップが画面に掛かっているかどうかが判断できないので要注意です(RF機を使う人はここらへんはよく注意されると思いますが)。
カメラを2台以上使うときは、ケーブルレリーズの長さ(目印をつけても良い)を変えておくと便利です。間違って、別のカメラを作動させていることが稀にあります。

(3)撮影

★ピントについて
夜空に向かっては、ほぼオートフォーカス(AF)は効きません。マニュアルフォーカス(MF)にして下さい。最初に、遠景または花火自身でピントを調節し、以降それで撮ります。ピントリングが軽くてずれる恐れがあるものは、テープ等で固定した方が良いでしょう(塗装剥がれなどあるかも知れません。自己責任でお願いします)。また、最近のAFレンズや超望遠レンズは、∞(無限遠)を通り越して回るものがありますので、∞位置を過信してはいけません。ピントは常に自分で確認して下さい。

★露出について
自動露出(プログラム、絞り優先モード、夜景モードなど)は使えません。適正と判断して、途中でシャッターが閉まってしまうからです。花火が中途半端に写ってしまいます。マニュアル露出に切り替えて下さい。

・絞り設定
ISO100のフィルムで、絞りF8〜F11くらいが標準です。大型の白い花火だとF16くらいでないと露出overになることが多いですが、事前に何色が上がるかは分からないので、これは何種類か絞りを変えておくしかありません。

・シャッター
シャッターはバルブ。打ちあがったら開けて、開ききったら閉じる、を基本にして、いくつか試してみて下さい。ニコちゃんマークやドラえもんなどの絵柄の場合は、1秒以下に露光を切り詰めないと絵に見えません。
SLRの場合はシャッターを開けている間、ファインダーは暗転して見えません。その間、撮影前に見えていた範囲を思い描き、花火がそこに何個入ったかを見て下さい。これは、欲を出すと負けです。同じところに2つ、3つと入るとそこだけ露出overになったり、煙の中に花開いたりします。ある程度運に左右されますので、最初は撮影枚数を稼ぐことをお勧めします。
黒紙などを用意して、欲しい花火だけを写して、他をカットするというテクニックもあります。私はあまりやりません(上手く行った試しが無い)。

・夜景との整合性
夜景も一緒に写したい場合、上記のISO100・F8の設定では、概ね8秒程度の露光が必要です。F11では16秒。しかし、この露光時間を優先して、花火だらけの画像になっても面白くないので、いろいろ試すことをお勧めします。特にフィナーレなどで大量の花火を打ち上げる時に、10秒以上開けていると空は真っ白になる可能性が高いので、この場合は露出を切り詰めます。
露光時間については、時計を見ているヒマはないので、自分で数えます。そんなに外れたりはしません。心配な方は、電子メトロノームを買って1拍=60で設定すれば1個の音が1秒になります。

・フラッシュ(ストロボ、スピードライト)
普通は不要です。手前の観客を入れながらという撮影もあるわけですが、花火鑑賞の邪魔になると思われます。控えるべきだと考えます。

★構図
・レンズの画角
最初は、どんな高さに上がるか、どんな大きさのが上がるかは分かりません。いくつか撮影せずに、ファインダ内で構図を確認してみて下さい。自分の好みは何mmに相当するか、覚えておくと次回以降に活かされると思います。望遠で花開くところを画面一杯に狙うのはかなり難しいです。玉の大きさで打ち上げの初速が違うので、何回か見ているうちに開くところが予想できるようになるでしょう。

・構図の変化
露光中にズームしたり、三脚を操作して花火を別の所に入れたり、ということも表現の一つとしてアリだとは思いますが、夜景との整合性は破綻しますし、実際のイメージとかけ離れてしまうのでお勧めしません。

★撮影中の注意
・唐突に動かない
レリーズを使っているのでだいたい問題はないと思いますが、肘を横に突き出したり、突然立ち上がったりして左右・後方の方々の迷惑にならないよう注意しましょう。

・レンズやフィルムの交換中
懐中電灯などの光が隣の人のレンズを直射したりしないように、注意して下さい。

(4)後片付け

慣れないうちは、ゆっくりやりましょう。いつ会場を出ても、帰り着く時刻はそう変わらないので。撮影しない人では、フィナーレを見ずに帰る人もけっこういらっしゃいますが、まあ写真を撮る人はやっぱり最後まで粘りたいところではないでしょうか。
当たり前ですが、ゴミは持ち帰りましょう。時々、山でフィルム交換をしていると「ちゃんと持ち帰れよ」と声を掛けてくれるイヤミな先輩諸氏がおられますが、やはり捨てている人がいるのも事実のようです。アマ写真家だけが悪者じゃないんですけどね..


★鑑賞編

・リヴァーサルの現像
特別なことはありません。カメラ店に持ち込んで現像を依頼して下さい。ただし、一般にこの種類のフィルムは「同時プリント」というものはありません。出来なくは無いですが、現像850円、プリント130円×36枚というのはいかにも高額です。まずは現像のみで出し、フィルム上で失敗・成功を確認するのが普通です。現像時に「マウント(1枚ずつスライド枠に入れる)かスリーブ(普通のネガと同じ、6枚単位)か」と聞かれるので、好みの方を選んで下さい。

・プリント
自宅でデータ取り込みやプリントをしない場合は、好みのコマを指定してプリント依頼に出します。ダイレクトプリントは一般に高く、L判で130円くらいはします。レーザプリントと称するデジタルプリントもあり、それは若干安めです。個人的にはイマイチですが..ワイド6ツ〜ワイド4ツくらいにプリントすると、迫力が出て良いと思います。


以上です。新たに気付いたことなどは追記していく予定です。


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初めての人のための 花火撮影講座
(写真は別途追加予定)