ここのところ大掛かりな旅行は自粛中なのだが、土日でちょっと時間があれば出かけてみたりはしている。久しぶりに、まとまった量の写真を撮ったので、その中からいくつかを選んで紹介しようと思う。
高校生のとき、友人たちと初日の出を見に行く催しがあった。そのときは京急で三崎口まで行って、そこからバスで城ヶ島に行っていたのだが、それは大学に進んで、さらには就職してからもしばらく続いていた。城ヶ島の海岸で、ただ日の出を見て、寒いので鍋をやる、というのが主な行動で、初詣などは面倒なのでやらず、そのまま帰ってきて家で寝ているという、何とも中途半端で思いつきの域を出ない学生のイヴェントであった。とはいえ寒い中日の出を待つ気分は独特のものだし、空腹は最良のシェフならぬ、寒さが鍋を美味しいものにしてくれたものである。今日は突然それを思い出し、城ヶ島へ行ってみようかと思い立った。ところが、家を出るのが少し遅くなってしまったので、横浜横須賀道路を走っているとき、手前で下りてしまうことにした。それが、今回の観音崎・三笠公園というわけである。
実は、観音崎も三笠公園も、行ったことがない。横須賀は、東芝フィルの定期演奏会でよこすか芸術劇場に行っただけで、ほとんど街の中は歩いていないのだ。配偶者Sは横須賀には何度か来ているそうだから道を案内してもらうことにする。横横道路から横須賀市内へと直接入れる短い有料道路があって、本当に街中まで一気に着いてしまうのは便利だ。市内を抜けて、海の方に進む。メインの道路から外れて海岸沿い近くを走ったら、左手に記念艦三笠が見えた。帰りに寄ることにしよう。さらに進むと、うみかぜ公園というところの脇を通るのだが、ここは高い建物もなく開放感あふれる良い道路だ。天気もよく暖かいから、どこかに車を止めて歩いてみたい。この先に横須賀魚市場があって、何やらおもしろそうな店があるので昼食はここにしようと思う。国道16号線に戻って、まずは観音崎近くの海岸にて観音崎を目指す。道が細くなって、カーヴが多くなった。ほどなく到着した。
駐車場は1回540円、このうち20円は緑化資金の寄付だそうで、いやだと言えば520円になるようだが、そこまで細かく考える人もいないだろう。540円を払って駐車する。駐車場から海へはすぐで、陽気が暖かいからコートは脱いで行く。海は岩が多く、水が意外にきれいだ。カメラは、今日はマミヤ645Pro(中判の一眼レフ)だけを持ってきて、SにはGR digitalを渡している。私はマミヤの超広角レンズ、35mmでしばらく海を撮っていた。灯台への道にて
海岸を歩いて、右手の山の上に観音崎灯台がある。灯台への道は日陰で少し肌寒いが、坂を登っていると体はすぐに暖まった。マミヤにはワインダーまでつけていて重いので、ただでさえ思い体重が増えたような錯覚がある。カメラと交換レンズ4本、交換フィルムバックで4kgくらいか。重いカメラなので、ホールドをしっかりすればブレないのはあり観音崎灯台がたい。
灯台へはたいした距離ではなく、すぐに到着した。灯台の見学料金を払って中に入る。狭い螺旋階段を登ると、ケルンの大聖堂を思い出す。壁には全国の灯台の写真がかけて灯台の電灯とレンズあって、これが想像以上にヴァリエーション豊かで面白い。とはいえ狭いから降りてくる人とのすれ違いが大変で、じっくり眺められないのは残念だ。さて、階段の段数は少ないけれど、灯台の上に上がれば、元々の山の高さもあって、見晴らしは最高である(灯台だから当然)。手すりが細くて少し不安になるのだが、これは毎度のことで、要するに私は高いところが苦手なのである。でも、写真を撮っているとそんな恐怖感も薄れて撮りまくってしまい、Sを呆れさせた。
灯台からの景色望遠でも撮ってみる灯台の上でちょうどフィルムが終わって、バック交換やレンズ交換をしていると、狭いから他の人の邪魔になる。いろいろ気を遣いながら、作業をしていた。灯台を降りて、資料館の覗いてみると、期待していなかったのだがしっかりした資料があって面白かった。残念ながら撮影は禁止だったので写真はない。
灯台を出て、来た道を戻らずに東京湾海上交通センターの方に歩く。NHKのProject Xでも放送された、東京湾の交通の管制塔だ。ここも資料室のようなものがあるようだが、祝日ゆえか入ることはできなかった。相当数の船の行き先を捌いているはずであるが、職員の車が一台止まっているだけで、周囲は静かなものである。
弾薬庫だったのかなここは、高台であり、横須賀の海軍基地が近かったこともあり戦前は砲台があったところだ。むろん今は大砲はないが砲台の遺構はまだ残っており、方々に壕や弾薬庫の跡のようなものがある。使われていないこれらの石組みは一種不気味な雰囲気がある。第2砲台跡というところを抜けて、海の見晴台木々と青い空を目指す。この見晴台へのトンネルも薄暗くて怖い。トンネルを出ると、その先もどうやら砲台の跡地のようで、その上に見晴台というには少し背の低い構造物があった。背が低いので海はあまり見えない。ゆえに写真は撮らずに一休み。ここは南東を向いていて、木々が切れているから陽光が暖かい。おにぎりでも持ってくればよかった。とんびのぴーひょろろという鳴き声と、風に吹かれる葉の音がする他は、全く何の音もなく、静かである。
ここら一帯は県立観音崎公園となっており、かなり広いのだが、腹が減ってきたので全部ここにも灯台?は見ないで帰ることにする。一般道に出て、トンネルを潜ると先ほどの駐車場の方に出る。歩道のポールも灯台の形をしていた。ただ、なぜ青緑色をしているかは謎だ。
駐車場から車を出して、先ほど歩いたトンネルを通って横須賀市内へと戻る。実は遠回りしているのだが、一応、見ていないところも車から眺めて行こうというわけだ。自然博物館があるところで止めようかと思ったが、ここでも540円の駐車料金を取られるのでやめておく。
横須賀魚市場の駐車場に車を止めて、「魚がし食堂 はま蔵」というところに入る。魚市場の社員食堂にもなっているという。今日は祝日で、しかも14時を回っているから市場自体は閑散としているが、この店には行列が出来ている。ガイドブックなどにも載っているようで、一般の客地魚丼がたくさん来ているというわけだ。食券を買う形式であるが、混んでいるので、まずは食券だけ買って待っている。そして、席が空いたところで調理のコーナーに食券を出す。呼び出しをしている女性の声がキンキンして落ち着かない。私は地魚丼というのを注文しているが、どうやら同じ種類のをまとめて作るようで、Sが頼んだちらし寿司が先に出来て、私のはずい分待たされた。地魚とは、かんぱち、かつお、さば、しらすの4種で、これにネギときゅうりがかけてある。値段は味噌汁つきで800円、かんぱちがぷりぷりして美味しいのだが、かつおとさばはちょっとどうかな、というところ。
店を出て、市場の方を歩いてみる。もちろん閉まっている。市場の裏手というか海側は小さな漁港になっていて船が多数係留されている。ここでもとんびが飛ぶのが見えた。Sは、タコつぼらしきものに興味を示している。つぼといっても四角い。入口に扉があり、そこを開けて海に沈めるのだろう。三笠公園へ
次に三笠公園に向かう。ここはもう説明の必要がないほど有名であろう。日露戦争当時の連合艦隊の旗艦であり、その後ワシントン条約時に廃艦リストに載ったものを、交渉により記念艦として武装や動力などを外して保存することになった艦である。戦後、上部構造がほとんどなくなって、水族館やダンスホールに改装されていたのを、製造所があったバーロー市在住の英国人が来日しその荒廃ぶりを新聞に投書したのがきっかけで復元が始まったとされる。従って、いま上部にある建造物はほとんどが昭和30年代に作られたレプリカである。さて、艦に入る前に近くの売店で入場券を買うのだが、種別が大人・高校生・自衛官とある(中学生以下は無料)。なんと自衛官は割引なのであった。今日は2月11日、建国記念日とあって自衛官の方々も何人かいらっしゃった。5月27日の旧海軍記念日(日本海三笠の主砲海戦の日)はもっと来るのだろう。というより、昨年5月27日は日本海海戦100周年だから当然イヴェントがあったはずである。まあそれはいいとして、階段を上がると、いま上から見た主砲の砲塔の時代からすると案外小柄なこの戦艦の甲板は、狭くて薄暗い(天幕が張られていることもあるのだが)。上部構造はいたってシンプルで、東郷平八郎司令長官が指揮したという艦橋は完全なむき出しで、いやまあ周囲がよく見えるといえばそうだが、砲弾が飛び交う中ここにいるのは生きた心地がしないと私は思う。その艦橋から主砲を見下ろすと、30サンチ砲ともなればやはり巨大ではある。
艦内に下りる。艦尾は長官や艦長の公室や士官室などがあって一部は同時の調度が揃っている。艦長寝室風呂などは当時を再現しているらしい。他に軍楽隊の楽器が展示してあったりもするのだが、その海戦の様子を再現した模型楽器は後世のものが寄贈されたもので、時代は合っていない。金属製のクラリネットというのは初めて見た。うーん、ソプラノサックスと長さは同じだよなぁ、でも太さも違うしなぁ、とその場にいた誰もが考えていないであろうことで、ひとしきり悩んだ。
艦の中央部と、そこから艦首にかけては日露戦争、日露戦争に至るまでの経緯説明がある。艦首艦首は映写室である。ここらの展示はかなり多くて、予想以上に時間を要する。文字が細かいというのもあるが、私自身、日露戦史が好きなのでついつい読み入ってしまったりするのである。そうこうしているうちに、Sの次の予定が迫ってきた。残念だが、退散せねばならない。外に出て、艦首を撮影してから帰ることにした。
久しぶりに、のんびりと歩くことができて楽しい一日であった。



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06年2月11日 観音崎・三笠公園
(拡大する写真には枠が付いています)