昨年春、岩手から帰ってきてから、一度も花火に行っていなかった。そこで、今年はいくつか撮影しようと、急遽東京湾に出撃することにした。急遽なので単独行動である(事前に募っても単独であった可能性は否定できないが..)。前日、台風が通り過ぎたので良い天気となった。台風の後となれば暖かい空気も入るからかなり暑くなろうかと思っていたが、部屋を出てみるとそれほどでもなく、いささか拍子抜けの感。こちら側に予想が外れるのは良いことである。14時過ぎでこの暑さなら、これからは涼しくなるわけだ。駅前でハンバーガーを食べて遅めの昼食とし、京浜東北線に乗ると、浜松町駅は既にたいへんな混雑であるとのこと。14時出発では遅すぎたか。りんかい線でお台場に行けとの車内アナウンスだ。あまり乗降客がいない(私が見たところ、休日は)りんかい線への営業的な誘導かと勘繰りつつ、大井町で降りた。改札を出て、右に進むとりんかい線のホームだ。JRとほとんど同じ車両だが、ここは別の路線だ。suica(JR東日本の無線カード)が使えるのだが、別路線なので別の料金を取られてしまう。しかも初乗り200円、東京テレポートまで13分が260円とはずいぶんではないか。こういう、接続で集客に利する路線で、接続割引等を設定しないのはどうかと思う。
と、くだらないことを考えている間もなく、東京テレポート駅に到着した。駅からエスカレータを上ると、フジテレビの裏側というのか、南側に出る。首都高湾岸線の上を歩いて、フジテレビの脇を北の方角に向かって進むと、お台場海浜公園に到着。自由の女神のレプリカなどを撮影する。雲ひとつ無い、まさに快晴。アグファのアンビジレッテというカメラに、ウルトラという超弩級の派手なフィルムを入れているので、これは結果が楽しみだ。歩行者デッキは17時から通行止めになるらしく、あまり長居は出来ない。おそらく、階段を群集が転がり落
ちるような事故を防止するための措置と思うが、当然であろう。個人的には、高いところから撮影したいという希望はあるものの、これは仕方が無い。海浜公園は、東西に(正確には、南西から北東に)細長い公園で、お台場やレインボーブリッジを見ながら散歩するには良いところだ。花火の主会場である晴海埠頭は真北になり、公園から海を真正面に見るのではなく、若干右方向を見るような格好になる。地図で推定するに、おそらくレインボーブリッジの右に花火が打ち上がる。15時半には公園に着いてしまったので、人はまだ少なく、カメラの画角を邪魔されない一番前の場所を確保できた。これまた推定なのだが、これだけ空いているのは、おそらく
花火がそんなによくは見えないからではなかろうか。レインボーブリッジを前景に、と言えば聞こえはいいが、その実、これは邪魔になるのではないかと。まあ遅めに出て楽に場所が確保できたのだから良しとしよう。
さて、これから花火開始まで3時間半、花火終了まで5時間、帰りの交通機関も考えると6時間以上は立っていなければならない。座って鑑賞できないのは何故かと言うと、ここは海側に柵があって座ると視界を遮るからである。こうして柵に手をついて待っていると、何だかウィーン国立歌劇場の天井桟敷を思い出すが(突拍子もなくて済みません)、救いなのは日が照っているものの涼しい風がゆるやかに吹いていることである。おおよそ南から南西の風で、この分だと花火の煙がこちらに来ることはない。むしろこの風では晴海主会場が困ったことになりそうだ。何年か前の大曲の花火でも2年連続で風上に居たし、風や天候では恵まれている。今回はちょっと遠目なので、念のために持ってきた90mmレンズ(カラーテリネア
90mmF4)が活躍しそうだ。周りは三脚だらけで、写真を撮るには良い場所であるらしい。皆、カメラは出さずに仲間や近所の人と談笑している。あと2時間もすれば大小のカメラがここを賑わすわけだ。それを見るのもまた楽しい。さて、一旦仮に場所を確保しておいて、南西の端まで歩いてみたが、先述のように南西から北東に向けて長い公園なので、どこに位置しても花火は右方向にしか見えない。レインボーブリッジを真正面に見たければ海に入るしかなく、それはムリである。かといって品川埠頭からではかなり距離がある。今更動きようもないし、今年はここと決めよう。17時に号砲(昼花火)が鳴って、その煙の方向は案の定、レインボーブリッジの右側であった。あまり構図はよくない。
しばらく、というには長い時間をその場で過ごした。本を持ってくるつもりだったが、忘れてしまったので、思い切り退屈である。それでも日は暮れて、19時が近づいてきた。開始時間間際に来る人もけっこういる。あっと言う間に通路部分も埋まって、花火大会らしくなった。携帯電話は通じない状態になっている。携帯電話が普及してから、待ち合わせがいいかげんになって、とにかく現地に行って、それから電話すりゃいいということになってしまって久しい。こういうとき、本当に緊急の用件がある人は困るだろうと思う。
花火が始まった。空は暗くならない。東京の花火を見るのは実は初めてだが、こんなにも空が明るいとは思わなかった。天文ファンの嘆きも分かる。普段気にも止めていないことだが、こうして見ると分かるものだ。そして、肝心の花火だが、スターマインや滝の小さいものは橋の影で見えない。大型の(おそらく7号以上)の物が上がると、ようやく全体を見ることが出来る。web情報によると、7号以上は全13000発のうちわずかに450発だから少ない。今日持ってきたカメラはブロニカRF645、65mmF4(35mm判で39mmくらいに相当)と、先述のアグファ・アンビジレッテ、35mmF4、50mmF2.8、90mmF4であるが、35mmでは画面が余りまくっ
てしまう。50mmでも縦位置では使い物にならず、やはり最終的には90mmに落ち着いてしまった。周囲を見ると、AF-SLRに70-200mmズームという組み合わせが多く見られ、やはり望遠で切り取るのがこの場合最適の様子だ。同じ場所に打ち上げていると煙の中に花開いてしまうから当然、高低差をつけるわけで、低くなるとこちらは自然、休憩タイムとなる。その間にフィルムやレンズを交換するわけだ。最近はデジタルの方も多く、実際私の両脇はデジタル(N社D1H、D100)だった。左の方はコンパクトフラッシュの交換中に大きな千輪菊が開いてしまい、かなり悔しがっておられた。デジタルは巻き戻しがなく、大容量のメモリを使えば連続の撮影(その方は200枚と言っていた)も可能でチャンスに強いのだが、それでもこういう不運はある。どうしても、という場合は2台を交代で使うべきだろう。私の場合、2台持って行ったわけだが、実はアグファのアンビジレッテの方は巻き戻しが大変難しい。操作が重いのだ。フィルムをゲートに押し付ける圧板がものすごくぴったりとしているらしく、巻き上げ、巻き戻し共に重い。こういうときはさすがに自動のカメラが良いと思わざるを得ない。今回は、フィルムを入れたままにしていたものを使い切るために持ってきたのだが、考えが甘かった。その分、ブロニカで補ったので、「撮り損ねた!」というのはなかった。ただし、ブロニカの方はムダに画角が広く構図としてはダメで、気に入った写真は皆無。もうちょっと長めのレンズが欲しいところだ。
ここらで花火の写真を並べておこう。
↓フジ Velvia100Fで撮ったもの
↓コダック E100VSで撮ったもの
右は →
ブロニカ
RF645の
作例。
(E100G)
20時20分、予定通り終了。撤収だ。帰りは混むだろうと思ったらそれは案の定で、ゆりかもめは車両のキャパシティが小さいためか、たいへんな混みようであった。りんかい線はゆりかもめに比べると駅が遠いので、駅までの道がバッファになって思いの外、スムーズに歩くことが出来た。駅前は長い列になっていて、見ると、一つの出入口を塞いで、一つで入場を管理しているようだ。なるほどと思う。この出入口からロープを張って列を誘導しているのだが、ロープゆえ今ひとつ管理が甘く、横入りする輩がいる。この程度の列、30分もかからずに駅に入れるはずで、何もそんなことをせずともいいと思うのだが。こういうセコさというのは国民性なのか、どうも貧乏くさくていけない。怒鳴る警備員、子供をあやすように説得する警備員、いろいろいらっしゃったがいずれもお寒い光景であった。フェンスを設置するなり、すればいいと思うのだが、そこまで予算がないのかも知れない。
予想通り、いや、思っていたより5分ほど早く駅に入った。21時30分。列車は頻繁に走っておらず、2137発、次は2145発である。こんな間隔でも列がかなり進むのはさすがに鉄道の輸送力というのはたいしたものである。列車が来て、ほとんど「積み残し」もなく(数人くらい)発車した。車内は通勤ラッシュに比べれば未だ余裕があり、冷房もそこそこ効いて快適。なんと言っても渋滞がないのはありがたい。昨夜、インターネットで調べたところ、自動車の場合「何時間」という単位の情報が多かったのに比べれば、駅前で25分列に並んだだけで、あとは止まることもない。ああいうところに車で出かけるというのは信じがたいものがある。人それぞれであろうが..大井町では運悪く蒲田行きだったので、1本待って22時10分ごろ川崎駅に着いた。駅前で遅い夕食を取って、帰ってきた。
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