Voigtländer Prominent プロミネントというのは元々戦前の6×9判カメラのフラッグシップモデルである。その名を35mm判で復活したものがこのカメラで、もちろんフォクトレンダー社としては、フラッグシップ的な意味でプロミネントの名称を再度使ったのだろう。 所謂、レンズシャッター式でのレンズ交換カメラで、50mmレンズにヘリコイドがなく、シャッターごと繰り出されてピントを合わせるやり方である。35mmと100mmは、その50mmの繰り出し量をそれぞれのレンズに変換する機構を内蔵していて、大変に凝った内容のカメラになっている。同時代のライカよりは幅が狭く、見た感じの立派さに比べてコンパクトに感じられるカメラだ。なお、高さはライカより高く、これはもちろんレンズシャッターをカメラに内蔵したためゆえで、その分ファインダーにしわ寄せが来て、暗くて小さなファインダーになっている。このファインダーは、その後改良されて交換レンズの枠が見えるようになり、さらにII型になりガラスブロックの等倍ファインダーを実現するも、レンズ交換式レンジファインダーカメラとしてはこれで最後となり、その後は主力が一眼レフに移っていく。 写真をクリックすると拡大します。 |
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スコパロン Skoparon 35mmF3.5 このシリーズで最も広い画角のレンズである。ウルトラゴン24mmというミラーボックスを介して撮影する超広角レンズの計画もあったが、実際には発売されなかった経緯がある。 このカメラでは、標準レンズはレンズシャッターユニットごと繰り出されてピントを合わせる仕組みであり、それだと広角や望遠レンズではピントがずれてしまう。そのため、この35mmでは標準50mmレンズでの繰り出し量を、レンズ内で35mm相当に変換するために、ベアリングのように並ぶ鉄球がレンズ側の筒を斜め方向に押すことで繰り出し量を減らす機構を内蔵している。 描写はシャープで、逆光にも割と強いと思う。最短撮影距離とF値から、大きくボケる写真は撮れないが、若干うるさい感じのボケである。 |
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ノクトン Nokton 50mmF1.5 最も明るい標準レンズ。このレンズのためにプロミネントを買う人も多いのではなかろうか。絞り開放付近ではぽわんとした写りだが、色がよく出るし、解像もしっかりしている。レンズシャッターをビハインド式で使うため、レンズ設計に制約があるようで、口径食もある。 |
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ウルトロン Ultlon 50mmF2 ウルトロンといえばヴィテッサのレンズとして使われたのが最も知られているのではないだろうか。プロミネント用ではノクトンの陰に隠れて結果として目立たない存在になっているようだが、なかなか良いレンズである。逆光には弱い。 単体で売られることが少ないプロミネント用のレンズだが、銀座で良い出物があったので購入。 |
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カラースコパー Color-Skopar 50mmF3.5 ヴィトー系統やヴィテッサの一部にも搭載されている3群4枚構成のレンズだ。きわめてシャープで色ノリがよく、プロミネントはこのレンズを「交換式」で使えるというメリットがあると思う。しかし実際にはノクトンというフォクトレンダー随一の明るさを誇るレンズの方が有名であり、こちらの存在は比較的地味で、中古市場の流通量もあまりなさそうである。 開放F値が3.5ということもあり、距離精度で懸念することはない。レンズは鏡胴中央部に小さく配置され、ボディ全体からすると頼りなげにも見えるが、写りはやはりスコパーで、鮮鋭である。 |
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ディナロン Dynaron 100mmF4.5 カメラにそのまま取り付けられ、距離計が連動する望遠レンズだ。望遠はこの他にテロマー100mmF5.5とスーパーディナロン150mmF4.5がラインナップされていたが、前者はミラーボックス型、後者は距離計連動を諦めカメラで距離を測ってレンズのヘリコイドを調節するというやり方である。 さて、このディナロンであるが、スコパロンの項で書いたように、50mmの繰り出し量を100mmレンズ相当に変換しなければならないわけで、レンズの前群を50mmの繰り出し量で動かして、ピントは100mm相当になるという仕組みになっている。ただでさえ、レンズシャッターをレンズ後方に配置して設計制約が多い中、この仕組みを考えてレンズを完成させたその執念に感服する。 描写はきちんとシャープでありボケも良いが、カメラの距離計の基線長が短いこともあってピントを外すことが多く、撮影は難しいと思う。 |
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