03年6月24日、オリンパスがデジタルSLR、E-システムを発表した。カメラ本体はE-1と称する。発売は10月上旬予定である。この6月はプレス向けの発表会だったのだが、今般、ユーザ向け発表会が開催されたので、行ってみる事にした。
私は旧来からOMシステムのユーザであり、OCC(オリンパスカメラクラブ)の会員である。今回の発表会は、この会員や、デジカメでユーザ登録した方々を対象に招待状を送ったようで、返信葉書に出欠の返事を書いて送ると、参加人数にカウントされて案内状が返送されてくるというやり方であった。会場は六本木ヒルズという新しい高層ビルの49階。さて、どんな会場設定になっているか、楽しみだ。
18時半から受付とあったので、会社は18時前に出なければならない。仕事がちょっと長引いて10分ほど遅れて川崎駅に着き、京浜東北線で六本木ヒルズにて浜松町、大門から大江戸線で六六本木ヒルズにて本木までという経路だ。大江戸線の駅より日比谷線からの方が近いようだ。暑い日だったので、列車に乗るたびに温度サイクル試験にかけられているようで、疲れる。六本木駅から外に出て、左に300mほど歩くと、左手に高層ビルがいきなり現れた。早速、撮っておく。今日はE-1の発表に合わせたというわけではないが、軽快装備ということでM-1に50/1.8,28/3.5という軽量なセットにしている。フィルムはフジのスペリア400。三脚もなく、適当に開放絞りで1/15秒も露光すれば、ちゃんと夜景が撮れる。便利だ。こんなシンプルな機能でも写真は写真なのであって、スペックや機能一覧に踊らされずに冷静に見るため、敢えてこの72年7月製のカメラを持って来たのである。などと書くのは少々大げさか。
さて、会場へは係りの人が看板を持って立っていてくれたので迷わず行けそうだと思っていたら、エレヴェータで戸惑ってしまった。行き先階が2つしかない専用で、明々と行き先のランプが点いているので、誰も49階を押さず、しかし箱は49階まで行ってまた2階に戻ってしまった。ボタンを押していないのは問題外にしても、なぜ49階まで往復したのか不明。同乗していた人々も首を傾げるばかりであった。それでもう1度49階を押したら無事に会場に着いた(当たり前)。少し遅刻したので受付には既にほとんどお客さんはおらず、さっと案内葉書を出してプレートをもらう。「スタッフ」「ゲスト」という感じに分けられているのであろう、ゲストは赤色であった。突き当たりに大きな講演会場があって、後ろのドアからそろりそろりと入場する。昆虫写真家の海海野氏講演、蛍の作例海野氏講演、モンシロチョウ野和男氏が壇上でE-1を片手になにやら語っている。背景には大型スクリーンがあって、プロジェクタでE-1の外観写真が出ているところを見ると、講演はまだ始まったところであろう。最後列の補助イス(?)に座って、聞くことになった。海野氏の作例は既に「小諸日記」のサイトhttp://eco.goo.ne.jp/wnn-x/unno/files/diary/index.htmlでおなじみであるが、改めて大きなスクリーンに投影されると美しさが際立つ。もっとも氏の写真がきれいなのはE-1だからというのではなく、氏の撮影が上手いということが99.9999%以上を占めているとは思う。特に蛍の写真には感激。カメラについてのインプレッションは、軽快に撮れるということ、防塵・防滴ということをやはり前面に出されていた。「私はこんな風に撮らないんですが」と言いつつチャチャチャ..チャチャチャ..チャチャチャと少し間を開けながら連写して見せていた。他は、突然の大雨に降られて大丈夫だったこと、他社カメラを使い大雪山で撮っていて撮像素子にダストが乗ってしまったということなど、実際の作例中のゴミまで示して話された。
講演中は何枚か撮ったが、他にも撮る人はいて、ほとんどデジタルだった。液晶画面が明るく手前に見えるので、よくわかる。会場は年配の方が多く、OCC会員の平均年齢はかなり高そうだ。一部お子様が講演に飽きてむずかっていらっしゃったが、途中で静かになっていたのは、寝てしまったのかも知れぬ。F-1マシンとRQ
講演が終わってから前の人から順に展示会場に案内される。5列おきに案内されたが、私は最後尾なので当然一番後になってしまった。手前から技術コーナー、作例コーナー、撮影コーナーという部屋がある。混んでいて展示物が見えにくい。とりあえずどういう部屋があるプリントコーナーのか見て、実機展示(撮影)コーナーに行ってみたら、右側が南東方面の夜景、左奥に煌々と照らされたF-1マシンとレースクイーンのお姉さま方2人、右中央にはマクロ撮影コーナーで、花やジオラマがあるブースがいくつか。左手前はプリントアウトするところで、説明員がPCを操作してマクロ撮影コーナー撮影結果を印刷するようになっていた。この部屋が最も混んでいて、そりゃカメラに興味があるからここに来ているのだから当然であろう..しばらくは他の部屋で展示を見ている方が良さそうだと思い、通路を戻った。
まずは技術コーナー。ここは現状予定されているボディ・レンズ・アクセサリ全部の展示、さらにキーとなる構成パーツの展示、説明がなさ部屋全景れる。ほとんどの内容はwebで見られるものと同一であるから、インターネットで事前に情報を仕入れている人には特に新しいことはない。展示物の中で印象的だったのは、水しぶきをかける展示で、「え、こんなに濡れていいの」というくらい濡らしていた。驚いた。通常、このくらい濡れるシーンもあまりあるまいが、突然の夕立などで困ることはあるわけで、万能ではないだろうがそういうリスクに対するマージンは向上すると思う。
対して一番つまらないのは基板の展示で、どこのICを使っているのかな、と半導体サプライヤとしての興味があって見に行ったが、IC上に黒紙を貼って見えないようにしていた。こんなことだろうと予想していたが、残念であった。OM-3Tiなどは三菱のマークなどが見えたものだが(系列)、今は部品などどこのメーカで調達するかは仕様・性能・価格・納期・サポート次第だから全く予想できないものなのだ。16〜20mm□ほどのF-BGAが3つだからけっこうな規模のものを積んでいるようだ。発熱もバカにならないだろうし、これをCCDと液晶画面の間に入れるというのは熱設計も簡単ではないように思われた。全製品展示シャッターユニットダストリダクションユニット








水に濡らしてみるコーナーボディとレンズ







シャッターユニットは小さいのだが、画面も4/3CCDと小さいため、相対的にシャッターのメカ部分が大きく見えてしまう。将来予定している小型化版はここにも手を入れるのだろうか、あるいは共用化でコストを取るか、という考えもあろう。さらに、このシャッターの後ろには自慢のダストリダクションシステムがあって、この厚みも大きい。これのためにシャッター効率が簡単に上げられない可能性もあり、それに耐久性を加味して上限が1/4000secというシャッター秒時になっているのかも知れない。作例コーナー作例コーナー
作例コーナーにはE-systemのwebにある5人のプロ(石黒健治氏、岩合光昭氏、海野和男氏、宮嶋康彦氏、山岸伸氏)の作例があって、B1サイズの大きさのプリントが飾ってある。色鮮やかで非常に美しい。B1なので画素数から単純に拡大計算すると足りないし、目を近づけると解像してないのではという人もいるだろうが、鑑賞する距離を考慮すれば全く問題ない画質が得られていた。実際は一般のユーザがB1にする機会などおそらくないだろうし、A4・A3程度なら全く問題なさそうに思えた。なお、石黒さんの写真はweb作例と似たような傾向で渋めの色になっていて、おそらく本人の好みでそういう色にしていると見た。
最後に実機展示(撮影)コーナーに行く。全レンズを触ることが出来る。また、フルオプション(ストロボや増設電池)のものやシンプルのものなど、好きなものを選べるの49Fからの夜景はありがたい。ただ、超混みで希望の装備を選ぶには待ち時間を覚悟せねばならない。上述の通り窓際は夜景で、花・ジオラマのコーナ、一番奥にF-1マシンとRQがいらっしゃって、どれを撮ってもいい。花のコーナには海野氏もいて、気軽にお話ができた。私は話さなかったが、お高く止まっていないし実直そうな方で、好感度高し。 この花のコーナーで手持ちのCFにデータを書き込んでいる人がいた。私は事前に聞いてみてNGと言われたのだが。持っていけばよかったと激しく後悔した。公式見解と現場の解釈は、常に同じとは限らないということが分かっていなかったのだ。まあ、あと1ヶ月ちょっとで実物が手元に来るのだからいいのだが。
以下は箇条書き版にも載せたインプレッション。若干加筆あり。なお、実機は9/3からオリンパスプラザで触れるようになるという。

★ボディ
・造りはしっかりしていて仕上げも良い。ボディには厚さがあって、ゴロッとしているが右手はしっかりホールディングできる形状・感触になっている。頻繁に使いそうなボタンは右手付近にあってよろしい。
・大きさの割にあまり重さは感じなかった。ただし、これは人によるだろう。私は体が大きいので。
・ファインダ倍率は50mm装着時で0.96倍、実際は焦点距離が2倍相当だから実画像に対しては0.48倍相当になって小さいかも知れないと思っていたが、実際見たところ小さいとは思わなかった。比較用にM-1を持っていたが、違和感はなし。4:3画面で、下に液晶の情報表示部があるので、ほぼ正方形の視野になり、ファインダ倍率とペンタ〜接眼部の大きさをバランスよくまとめられているように感じた。
(横長画面だと、視野を広げつつ倍率を上げると光学系が大きくなるばかりで不利)
・AFは3点で、画面周辺にはない。CCDが横方向に小さく、ミラーが小さいため、大型のAFモジュールが搭載できないためと推定するが、私はMZ-Sでも中央1点でしか使っていないので、このくらいがちょうど良かった。これは個々人で意見が異なるだろう。
・スクリーンは明るく、シャープに見える。コントラストも良好で、MFもしやすい。
・シャッターはたいへん静か。シャッター部が小さく、ボディが分厚いため音が外に出てこないのかも。ミラーショックも少ない。
・Pモードでサブダイヤルを回すとプログラムシフトになり、これは案外使いやすかった。ペンタックスのハイパープログラムと発想が同じ?(E-20とかに既についていたら単に進歩に遅れた感想でしかないが..)

★レンズ
・AFは問題なく、速い。ヨドバシなどで展示してある他社に比べて遜色なし。この日のために、カメラ屋に寄ったときはD100や10Dを触って、どんなものか見ておいたのだ。
・コアレスモータは静かで、全く音がしない。EOSと同じ感覚。これを触ってしまうと、ペンタックスのボディ内モータなどはいささかガサガサした感じがしてしまいそうだ。
・AFは2段階に動く。さっと近くまで行って、最後に微調する。測距は迷わず、正確だと思った。
・MF時はピントリングの動きに従って電動でレンズを動かしている。その感触は良好で、適度なトルク感があって、ワンテンポ遅れたような動作はなく、スムーズに出来た。300mmF2.8のMFに至っては、銀塩MFレンズに比べるとピントリングがむしろ重いくらい。AF用レンズは一般に回転角が急でMFに向かない(少し回すとピントが変わりすぎて使いにくい)が、この電動MFでは手動の場合に回転が緩くなり、MFがやりやすい(精度の高い)設定になっている。
・14-54mmズーム(フルサイズ換算28-108mm)の最近接22cmは使いやすい。ズームであることを忘れさせる。このレンズだけでほとんどの撮影ができそうだ。サイズはタムロンの28-75mmF2.8とほぼ同寸。これは予約してあるので、楽しみである。
・50-200mmズーム(フルサイズ換算100-400mm)はオリンパスプラザで見ていて知っていたが、やはりコンパクトに出来ていると感じた。これで明るさがF2.8-3.5なのである。いま都市対抗を撮ったりしているが、こういうレンズがあるといいなあと切に思う。
・50mmマクロ(フルサイズ換算100mm)はシャープで、色もきれいに乗るタイプで、まさにOMの90mmF2マクロか50mmF2マクロの再来のように思われ、これも欲しいレンズである。ただ、個人的には中望遠よりは広角〜標準くらいの単焦点が欲しい。残念ながら、係の人は新しいレンズの計画などは言っていなかった。あるのかも知れないが、具体的には言えないのかも。

花と夜景を撮って、夜景のデータをプリントすることにした。しかしブレていた(笑)。混んでいて、待ち時間が長かったため、既にやり直しが効かず諦めざるを得なかった。なお、説明はソフトの操作説明などもあって丁寧で分かりやすかった。
ここで20時半近くになっていた。予定時間をかなり超えていた。廊下には説明を終えた係の人たちが並び、一斉に「ありがとうございました」と礼をする。何だか、こそばゆい。受付で首から下げていた「ゲスト」のプレートを返し、引き換えにシステムカタログ、コンセプトカタログ、E-1とプリントされたレンズクロス、プロ5人の作例プリント、予約キャンペーンのレリースをくれた。内容は以下のようなものであった。
・システムカタログの作例はwebの5人に織作峰子さんも加わって6枚。きれいだった。
・プリントサンプルはシステムカタログに比べると色味が不自然に見えた。これはプリンタの設定次第なので、実際買ってからいろいろ試すしかあるまい。
・システムカタログに11-22mmのレンズ構成(10群12枚)、作例があったが作例が小さいのでよいかどうかは分からず。MTFは11mm側で周辺2mmくらいで落ちるものの全体は良さそうに見えた。
六本木ヒルズにて六本木ヒルズにて
帰りにまた夜景を撮る。21時、六本木ではまだまだ早い時刻なのか、人通りは絶えない。駅に向かいながら、良いカメラだと改めて思う。このインプレッションを書き留めておくために、帰宅を急ぐことにした。


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オリンパス E−システムへの期待 特別編
03年8月26日 六本木
(新型デジタル一眼レフ発表会)
(拡大する写真には枠が付いています)