SIGMA fp・M42、デッケル、エキザクタマウント その他

 ライカ系とOM以外のマウントのレンズによるものをここにまとめておく。一眼レフ系のレンズの方が、レンズ後端と撮像素子の距離が離れていることもあって撮像素子周辺への入射角が緩くなり、広角レンズでも使えるケースが多いようだ。デッケルマウントのようなレンズシャッターSLR用レンズ、つまりレンズシャッター機構の筒の大きさから制約を受けて後玉が小さい場合でも、案外写りが良く、使える描写のレンズが多いのが面白い。
 たくさん撮りためているが、掲載が追い付いていないので、順次増やしていく。パクセッテマウント、オリンパスエースマウントもここに追加している。

●M42マウント

ディスタゴン Distagon 25mmF4 (ツァイスイコンフォクトレンダー)

 IcarexのM42マウント用に供給されたが直後にカメラ撤退が決定したためにほとんど世に出回らなかったとされているレンズだ。東側ツァイスのフレクトゴンが前玉の大きないかにも広角レンズ然とした外観なのに比べ、こちらは少し長めの標準レンズのような外観で、小さな凹レンズが前玉になっている。レンズ構成などの資料がなく、いろいろ謎の多いレンズであるが、写りは大変すばらしい。デジタルでは少し周辺に着色があるが、ピントはシャープで使えるレンズである。
          
タクマ― SMC Takumar 28mmF3.5 (ペンタックス)
 後玉が小さく、周辺画質があまり良くないのではと思ったが、予想以上に良い。F3.5という開放F値も、撮像素子経由なら明るく見ることができ、ピント合わせも容易だ。
 
 
フレクトゴン Flektogon 35mmF2.4 (カールツァイス・イエーナ)
 フィルムで優秀なレンズは、デジタルでもよく写る。ピント面のシャープさ、画面全体の均一性、色合いもきれいだ。
 
スコパレクス Skoparex 35mmF3.4 (ツァイスイコンフォクトレンダー)
 デッケルマウントのレンズと同じとされているが、個体差なのか、こちらのM42マウントレンズは周辺描写が少し悪い。F8まで絞ると全体に均質になる。
         
タクマ― SMC Takumar 35mmF3.5 (ペンタックス)
 未だfpでは使っていない。
 
ウルトロン Ultron 50mmF1.8 (ツァイスイコンフォクトレンダー)
 被写体側の1枚目のレンズが大きな凹レンズになっていることと、描写が優れていることで有名なレンズである。デジタルでも描写は秀逸で、周辺光量の落ち込みや解像の悪化は少なく、絞り開放からたいへんシャープに写る。画面に太陽を入れるような逆光では強いゴーストイメージが出るが、画面全体のコントラスト低下は少なく、十分に使えると思う。
 
テッサー Tessar 50mmF2.8 (ツァイスイコンフォクトレンダー)
 絞り開放から良い描写で周辺までよく写っている。レンズ鏡胴に比べてレンズの径は小さく地味な外見ではあるが、実用になる良いレンズである。
 
アウト・D・クヴィノン Auto-D-Quinon 55mmF1.9 (シュタインハイル)
 絞り開放からよく写る。1段絞ればなお良い。ピント面はシャープでボケ味も良く、35cmまで寄れるので守備範囲が広いレンズだ。
 
パンコラー Pancolar 80mmF1.8 (カールツァイス・イエーナ)
 35mmと同様、デジタルでも優秀なレンズ。
ビオメター Biometar 80mmF2.8 (カールツァイス・イエーナ)
 絞り開放からよく写っている。近接でも描写が良く、色もきれいだ。
 
スーパーディナレクス Super-Dynarex 135mmF4 (ツァイスイコンフォクトレンダー)
 デッケルマウントと同一の光学系のようだ。絞り開放から良い描写であるが、絞り開放〜F5.6くらいまでは周辺光量は落ちる。市場にはあまり出回っていないレンズであるが、135mmというレンズは他にもたくさん選択肢がある上に今時は需要が少ないためか、安価なレンズである。。
         
         
●パクセッテM39マウント

 以前、ボディ含めて何本か持っていたのであるが、スクリューマウントを多く持っていても持ち出す回数が少なく、整理していた。今回、アメリカのレアアダプターズさんのところでパクセッテ/Lアダプターが出ていたので入手し、いくつかレンズを試すことにした。
 アダプターが大きい(おそらく、ハッセルブラッドやフジの中判デジタルカメラのマウントをカバーする部品を使っているのだろう)ので、レンズが小さく見える。また、アダプターがカメラからはみ出しているので、三脚に据えるのは難しそうだ。まあ、三脚を使って気合を入れた撮影はこれ以外のマウントですることにしよう。

ウェストロン Westron 35mmF3.5 (イシュコ)
 レンズ鏡胴の直径は大きいが、レンズはものすごく小さい。レンズ構成の情報はないが、レトロフォーカスなどにすると前玉が大きくなり前に出てくるはずなので、そういう形式ではないのだろう。描写は、解像はしっかりしているものの画面全体にコントラストが低く見えて、絞ってもあまり変わらない。周辺の色付きは少なく、コントラストを後処理すれば良い画像になりそうだ。
         
リネオゴン Lineogon 35mmF3.5 (シュテーブレ)
 ウェストロンと異なり、こちらは前玉が大きめの凹レンズであり、レトロフォーカスタイプだ。トリプレットレンズの前に凹レンズを配したシンプルな構成であるが、絞り開放から周辺まで画質がよく、シャープなレンズである。周辺の着色もなく、優秀だ。パクセッテシリーズのレンズなのであまり有名ではないように思われるが、少数ながらライカスクリュー版も存在し、かなり高価である。
         
クヴィノン(キノン) Quinon 50mmF2 (シュタインハイル)
 パクセッテマウントのレンズの中で最もF値が小さいレンズで、50mmF2はこのレンズとロシュラインのルクソン50mmF2がラインナップされていた。このレンズはその中でも比較的数量は多いようで、中古市場でもそこそこ見かけるが、他のF2.8レンズに比べるとレアで価格もそれなりに高い。
 ダブルガウスタイプのF2レンズであるが、非常にコンパクトにできていて、アルミの鏡胴ということもあって軽量である。デジタルとの相性はあまり良くなく、周辺解像は怪しくて絞っても四隅はあまり改善しないから、撮り方は工夫が必要である。
         
ルクソン Luxon 50mmF2 (レシュライン)
 クヴィノンに続きルクソンも手に入った。このレンズはレシュライン社を立ち上げたレシュラインさんが元々フーゴ・マイヤー社でプリモプラン型大口径レンズを設計したことや、パクセッテの説明書に5枚構成という記述がある
(構成図は無い)ことから、このパクセッテ用レンズもそのタイプのレンズであるという説が有力らしい。プリモプランは4群5枚構成で、私の手元にあるF2クラスのレンズではELCAN(ライトレンズラボの復刻品)の4枚に次いで少ない。
 描写は評判通りでかなりのじゃじゃ馬、中央のピントはシャープだが良像面積が少なく、周辺はボヤボヤ、背景ボケは同心円状に引っ張られ、口径食が大きいため光源のバブルボケは中央部のみで周辺は楕円どころかボケ像が欠けている。口径食は日中の撮影にも影響し、F11以上に絞ると画面四隅が黒くなる
(フィルター、フードなしで)。と、こんなレンズなのだがデジタルでよくある周辺の色付きはなく色合いは全体にニュートラルできれいである。上記の通りレンズ自身の鏡胴にケられF11以降は四隅が黒くなるので、解像とのベストバランスはF8である。夜の街角だったり、周辺の結像を気にしない構図ではボケ方を理解して楽しむことができるレンズである。
 しかし、50mmF2級のレンズは昔から優秀なものが多数あるわけで、わざわざこのようなレンズを探して使う必要は..と言われると返す言葉がない。
         
カッサリート Cassarit 50mmF2.8 (シュタインハイル)
 M42マウントなどでも供給されている3枚構成の廉価版レンズだ。3枚構成でも、この前にカッサロンなどの銘もあり、カッサリートは1枚目と3枚目のレンズを分厚く設計して収差補正に努めたらしい。写りは典型的とも言えるトリプレット型のもので、ボケ像は同心円状に引っ張られて荒々しいし、点光源のボケは所謂バブルボケになって外周に明るい輪郭がつく。これは日中だと細いものが二線ボケになるパターンであり、同心円状に引っ張られ、二線ボケになるというなかなか面白い写真になる。
 いま手元にはレンズが2種類(製造番号196万台と220万台)あり、鏡胴は同じだが入っているレンズの位置が異なる。設計変更されたようで、製造番号が新しい方のレンズは少し画角が狭い。このレンズは初期には45mmで出ていたので、その関係だろうか?残念ながら、新しいレンズの方が描写が悪い。個体差なのか、元々そういうものなのかは何とも言えない。ボケ方は非常によく似ていて、画角は違えどレンズ構成は基本的に同じなのだろう。
・製造番号196万台のレンズ
         
・製造番号220万台のレンズ
         
ブラウン カラーウルトラリート Braun-Color-Ultralit 50mmF2.8 (シュテーブレ)
 上の、カッサリートと同様、いろんなマウントに供給されている3枚構成の廉価版レンズだ。3枚玉によくあるとされるバブルボケ傾向は比較的少なく、絞り開放から中心部はシャープで、F8程度まで絞れば画面全体が均一になって実用になる。
         
テレクソン Telexon 85mmF5.6 (シュテーブレ)
 開放F値がF5.6という小口径中望遠レンズであり、そのF値通りきわめて小柄に出来ている。レンズ構成などは全く資料がないので分からないが、この小ささとなると構成枚数は多くはないとは思う。F5.6で廉価なレンズであり、注目度は低いが、絞り開放からシャープで均一な描写であり、実用になる。ミラーレスなら開放F値が暗くてもあまり支障はないし..それはオリジナルのRF機でも同じだが、感度オートが効くので撮影可能範囲の広さは段違いである。
         
テレナー Telenar 90mmF3.8 (レシュライン)
 テレクソンに比べると1段以上明るいが、コンパクトに出来ているレンズだ。少しコントラストは低めのようだが、解像は良く、周辺の色付きは少ない。
         
テレナー Telenar 135mmF5.6 (レシュライン)
 中望遠にあるテレクソン、テロンといったF5.6の超小型レンズの系統のようなレンズであるが、メーカーが異なるので、別に系統を狙ったものではなく、パクセッテの短い基線長でピントを確保しつつ小柄に仕上げファインダーを隠しにくいという利点を狙ったものだろうか。他メーカーの135mmレンズにはF3.5のテレエナリートやF3.8のテレクソンがあり、バラエティに富んだラインナップであった。
 最短撮影距離は3mで、∞から3mを330度くらいの大きな回転角で合わせるので、EVF上でのピントの変化が少なく、デジタルでの拡大アシストを使っても合わせにくいほどである。私の場合は、レンズのヘリコイドで大まかに合わせたあと、アダプターのヘリコイドを使ってピントを追い込んでいる。写りはあまりよくなく、全体的にコントラストが低く、周辺の結像は甘い。F8、F11で周辺光量落ちが改善し結像もわずかながら良くなるが、今度は高輝度部との境目に色ずれが目立つようになる。
         
●オリンパスエースマウント

 独自マウントでありレンズも3種類と少ないので、マウントアダプターの需要・供給もないと諦めていたが、mukカメラサービスさんが3Dプリンターとライカスクリューマウント/ライカMのアダプターを合わせたものを製作しているのを見つけ、迷わず注文した。樹脂部品中にレンズの固定用ピンは設定できないため、レンズを付け外しする際につまむレンズ左右の突起部を、樹脂部品のくさびによって固定するやり方になる。このくさびはタイトにできていて、さらに脱落防止のための固定ねじも用意されている。その分付け外しは手がかかるので、オリンパスエースのボディが故障した場合はアダプターにレンズを固定しっぱなしという割り切りもできるが、銀塩でもデジタルでも使いたい、という場合は少し面倒ではある。しかし、こればかりは機構上仕方がない。アダプターを提供いただけることに感謝している。
 レンズは全て5枚構成なので、3本ともレンズ銘はE.Zuikoとなる。

Eズイコー E.Zuiko-W 35mmF2.8
 3群5枚のヘリア型のような構成の広角レンズだ。フィルムでの写りは良いが、デジタルでは周辺画質は壊滅的と言っても良いほどで、F8以上に絞ってなんとか使えるか、といったところだ。
         
Eズイコー E.Zuiko-S 45mmF2.8
 4群5枚のゾナー型構成のレンズで、このシリーズはレンズ固定式のカメラでも多く使われてその描写の良さは広く知られていると思う。デジタルでは、絞り開放では周辺光量落ちや解像のあやしさはあるが、F4以降大きく改善され全体に均質になる。このレンズだけのためにアダプターを持っていても良いと思う。
         
Eズイコー E.Zuiko-T 80mmF5.6
 5群5枚構成の望遠レンズである。この手のレンズ後方にリーフシャッターを配置したカメラにありがちな、マウント径の制約によるレンズ設計への影響を感じざるを得ない写りで、絞り開放では周辺光量落ちが激しく、四隅は鏡胴内で蹴られているような落ち込み方である。これはフィルムでも同様の現象だが、デジタルでは撮像素子への入射角度の問題もあってか、より顕著に現れる。F11くらいに絞って使う必要がある。解像は絞り開放から優秀である。
         
●デッケルマウント

 このマウントは、直接ライカLマウントへのアダプターがないようなので、DKL/M42-M42/Lか、DKL/ライカM-ライカM/Lの2段のアダプターを重ねて撮っている。後者の組合せでは、ライカMからのアダプターにヘリコイド内蔵タイプを使うことで、レンズの最短撮影距離が長いハンディキャップを埋め合わせることも可能だ。レンズ開発当初には想定されていない撮影領域だが、これがまたよく写るので侮れない。フィルム時代では考えられない楽しみ方が出来る。

クルタゴン Curtagon 28mmF4 (シュナイダー)
 デッケルマウントでは最広角のレンズだ。残念ながら、デジタルでの四隅の画質はあまり良くないが、フィルムで撮っても少し怪しいので、時代的には仕方ないと言ったところだろうか。後期の、最短撮影距離60cmのタイプ。
 
レチナ・オイリゴン Retina-Eurygon 30mmF2.8 (ローデンシュトック)
 レアな広角レンズ。35mmに比べて格段に大きくなるのでフィルムで使ってもデジタルで使ってもバランスはあまり良くないと感じる。写りは良い。ボケ味はかなり荒れた感じになり、背景には気を付けないといけない。最短撮影距離は90cmだが、近接ヘリコイドつきのアダプターを使い、本来このレンズの守備範囲外の領域も使うことが可能になった。
         
クルタゴン Curtagon 35mmF2.8 (シュナイダー)
 周辺の色付きはあるが、絞り開放からコントラストがよくきれいに写るレンズである。最後期の最短撮影距離60cmのタイプ。ヘリコイド内蔵アダプターでさらに近接しても像はしっかりしている。
 
レチナ・クルタゴン Retina-Curtagon 35mmF2.8 (シュナイダー)
 初期型、レンジファインダーのIIISに使えるよう距離計カムがついたタイプのモデルだ。最短撮影距離は90cm。レンズ構成は上記の60cm近接タイプと同じだと思われる。実際に並べてみても変わっているところが見当たらない。
         
スコパレクス Skoparex 35mmF3.4 (フォクトレンダー)
 40cm近接タイプで、デッケルマウントの中では最も寄れるレンズだと思う。画質は素晴らしく、シャープでコントラストのはっきりした画像が得られる。
 
レチナ・オイリゴン Retina-Eurygon 35mmF4 (ローデンシュトック)
 ローデンシュトックのレンズはどれもあまり市場では見かけないが、35mmはレアとはいっても30mmに比べると手が出しやすい価格だし、コンパクトで使いやすい。開放がF4で最短撮影距離が90cmであるからボケを狙った写真は本来守備範囲外ではあるが、近接ヘリコイドつきのアダプターを使えばかなり寄れるので使い勝手も良くなる。描写はシャープでよく写るレンズだ。
         
スコパゴン Skopagon 40mmF2 (フォクトレンダー)
 50cm近接タイプ。デッケルマウントは標準レンズや中望遠レンズが小型なので、このレンズのように長いのは特殊であるが、何しろ標準レンズの先にさらに3枚追加したような構成なので物理的に仕方がない。絞り開放では周辺光量の落ち込みと解像の悪化があり、被写体を選ぶ。中心部は絞り開放からシャープでよく写る。
 
レチナ・クセノン Retina-Xenon 50mmF1.9 (シュナイダー)
 60cm近接タイプ。あと5cmだけでも寄れると良いのだが、レンズシャッターSLRでは構造上やむを得ない。逆光には弱いが、シャープで良いレンズだ。
 
イロカ・クヴィノン(キノン) Iloca-Quinon 50mmF1.9 (シュタインハイル)
 シュタインハイルの明るい標準レンズであり、イロカ向けに供給されたものだ。デジタルとの相性が悪く、周辺画質が良くない。色付きはないが、解像が悪く、これはフィルムでも少しその傾向があるので、光線の入射角度の相性よりも像面が平坦でないとか、そういったことなのかと想像している。中心部はすごくシャープなので、絞って使えば風景には使えるし、周辺に被写体を持って来ないならボケ像を活かして撮ることは可能だ。
         
ゼプトン Septon 50mmF2 (フォクトレンダー)
 フィルムにおいてもそうだが、デッケルマウントの中で最も良い写りをするレンズの1本ではなかろうか。解像とボケの良さが両立していて、色も良い。いつの間にかクセノン、クヴィノンとF2級レンズが手元に揃ってきたわけだが、このゼプトンが最も優秀だと思う。
 
カラースコパー Color-Skopar 50mmF2.8 (フォクトレンダー)
 ゼプトンの影に隠れ地味なレンズという印象もあるが、その実、大変優秀なレンズである。画面周辺まで良像で、シャープ。廉価版のカラーランターと比べてレンズが1枚多いのだが、その差は歴然としている。60cm近接タイプであり、使いやすい。
 
カラーランター Color-Lanthar 50mmF2.8 (フォクトレンダー)
 フォクトレンダー社が60年代以降いろいろなカメラに搭載した廉価版の標準レンズで、前玉回転式でピントを合わせる3枚構成のレンズである。フィルムでも若干、周辺画質は悪いが、デジタルではより目立つ結果になっている。前玉回転式の宿命として、最短撮影距離が長く、1mまでしか寄れない。これは、レンズシャッターSLRの構造の問題ではなく、前玉回転式フォーカシングの収差からの制約だろう。
 
レチナ・クセナー Retina-Xenar 50mmF2.8 (シュナイダー)
 コダック・レチナシリーズのSLR用のレンズで、60cm近接タイプである。レンズ全長が薄く、ピント操作がしにくいほどだ。画質は良い。
 
ヴェガ3 Vega-3 50mmF2.8 (KMZ) 【アダプターによっては装着できないことがあるので注意】
 ソ連のKMZで1964-68年の間に生産されたゼニット4〜6シリーズのバヨネットマウント用に製造された標準レンズだ。このマウントはデッケルマウントとほぼ同形状
(元々のデッケルマウントが通称であり、形状が各社で少しずつ異なるので「ほぼ」としか言えない)で、絞りの連動・制御機構は同じである。ただしオリジナルのデッケルマウントと異なる重大な点がフランジバックで、ゼニットマウントの方が2mm程度長いとされている。そのため、このレンズを通常のデッケルマウントのアダプターに装着すると無限遠位置よりカメラ側にレンズが寄ってしまうから、遠景を撮るにもレンズを繰り出さないといけないし、最短撮影距離(1m)にセットしてもピントは数m先にしか合わない。ミラーレス機ではこれを調整することが容易で、近接ヘリコイド付きのアダプターを用意すれば良い。私の場合は、デッケル/ライカMとライカM/ライカLバヨネットのアダプターを用意し、後者がヘリコイド内蔵タイプである。通説通り、2mm程度レンズを前に出すことで無限遠位置が正確に出ることを確認できた。
 デッケルマウントをコピーしたような来歴のカメラシステムであるが、このレンズは4群5枚のクセノタータイプであり、元のデッケルマウント群のF2.8レンズが3、4枚構成であるのに対し構成は凝っている。絞り開放では周辺の解像に甘さがあるが、色付きはなく、十分に使える描写だ。色合いは少し暖色系で黄色っぽい雰囲気である。ボケは荒っぽく、点光源のボケ像には口径食の影響が見られる。
 なお、アダプターの種類によっては装着できないことがある。購入時は、自分のカメラのマウントに装着できるか試すことをお勧めする。私の場合、中国製のデッケル/ライカMのアダプターには装着できたが、日本製のデッケル/M42のアダプターには入らなかった。
         
レチナ・テレアートン Retina-Tele-Arton 85mmF4 (シュナイダー)
 4群5枚のクセノタータイプのレンズで、開放F値は暗く地味なspecだがよく写るレンズである。最短撮影距離は1.8mと長く、使えるシーンが限られるものの、ヘリコイド内蔵アダプターによって取り回しは格段に向上した。
 
レチナ・ロテラー Retina-Rotelar 85mmF4 (ローデンシュトック)
 テレアートンに比べると情報が少なくレンズ構成は不明であるが、あるウェブサイトで示されているロテラー(焦点距離は明示されていない)の構成図では望遠タイプで前と後ろのレンズ群の距離が離れた形になっている。実際このレンズはテレアートンより鏡胴が長く出ているので、おそらくその構成で正しいのかとは思うが何しろ情報が少ない。
 写りは、デジタルとは相性が良くなく周辺画質は悪い。私の持っているレンズは右側の方が良くないので片ボケの疑いもある。絞ればそれなりに良いし、周辺をボケ像にしてしまえば中央部分はシャープなので十分使える描写ではある。
         
ディナレクス Dynarex 90mmF3.4 (フォクトレンダー)
 良く写るレンズであるが、最短撮影距離が2mと長く、レンジファインダー機の中望遠に比べて撮影範囲が限られるのが惜しい。今後はヘリコイド内蔵アダプターを使ってもっと寄ったものを撮っていく。
 
テレアートン Tele-Arton 90mmF4 (シュナイダー)
 85mmの後に出ており、レンズ銘からレチナの文字がなくなっている。85mmと共通のヘリコイドなのか、最短撮影距離は1.8m→1.9mに伸びている。コンパクトなレンズで、フードをつけるバヨネット部分がないためレンズが前枠近くにあり取り扱いには少し戸惑う。写りはシャープで色も良い。
         
ディナレクス Dynarex 100mmF4.8 (フォクトレンダー)
 プロミネントの同名のレンズの手法を引き継ぎ、レンズ前玉だけが動いてピントを合わせる方式だ。これによって、レンズシャッターの筒の影響を受けず(レンズ後玉の位置は変わらない)、最短撮影距離1mを実現している。ただ、開放F値がF4.8と暗く、ほぼF5.6に近いので当時の一眼レフでは使いにくかったかと思われる。デジタルカメラでEVFを使って見る分にはこの開放F値は問題にならないので意外に出番が多い。
 絞り開放〜F5.6近辺はもやっとしたものがまとわりつくが、シャープで周辺の色付きなどもなく良好な画像が得られる。F8以上であれば何ら問題なく、全体に締まったシャープな写真になる。
         
スーパーディナレクス Super-Dynarex 135mmF4 (フォクトレンダー)
 曇りがある個体なのであまり出番がない。加えて最短撮影距離は4mで、さすがに使いにくい。
 
テレクセナー Tele-Xenar 135mmF4 (シュナイダー)
 絞り開放から使える描写だ。最短撮影距離は4mで、構えてみて「近すぎたか」と思うことが多い。まだ慣れない。
 
●エキザクタマウント

 M42マウントに比べるとマイナーな領域になるが、良いレンズも多く、バヨネットマウントであるからレンズ交換が迅速なのも良い。エキザクタマウントは、レンズに付いた絞りレバーを押して絞り込み・カメラのレリーズ押し込みをするレンズが多い。これが、アダプターで使うとなると、シャッターリリースはカメラ側で完結してしまうから絞り込みの動作を忘れそうなので、マニュアル絞りモードにして使っている。

フレクトゴン Flektogon 35mmF2.8 (カールツァイス・イエーナ)

 19cmまで寄れて、拡大率がかなり大きい。ただし、広角レンズゆえ近接時のパースペクティブの強調が強いのでマクロレンズとは異なる写りである。それはさておき、遠景も近接も良く解像するレンズである。
 
アウトクヴィナロン Auto-Quinaron 35mmF2.8 (シュタインハイル)
 少し周辺の色付きがあるが、色がきれいでシャープ。
 
クルミゴン Curmigon 35mmF4.5 (シュタインハイル)
 トリプレットレンズの前に大きな凹レンズを置いた4枚構成のレンズで、一眼レフ用レンズとしては非常に小型に出来ている。周辺画質は良くないが、中央はかなりシャープに写り、撮り方次第では面白いと思う。
 
アウトクヴィノン Auto-Quinon 55mmF1.9 (シュタインハイル)
 M42と同じレンズなのかどうかは分からないが(レンズ前後の直径が同じように見えるので同じか?)、M42ともどもよく写るレンズだ。