Braun Paxette III Automatic

 パクセッテシリーズ最後期のIII型はバヨネットマウントでのレンズ交換式である。厳密にはElectromaticというものがあるし(現物見たことなし)、パクセッテシリーズと並行してカラレッテ(初期デッケルマウント)シリーズも存在するが、パクセッテ系統としてはこの機種が最終形と言えるだろう。III型のバヨネットはプロンターマウントとも言われ、類似のものにキング レグラやボルタ フォタヴィット36があるが、それぞれ形状(絞りや距離計連動)が異なっていて互換性は無い。
 カメラ外観はシャッター周辺の突起がなくなり、シャッターリリースがカメラトップに移動しすっきりした外観と安定した操作性を得た。大型のファインダーを搭載したためスクリューマウント機に比べると全体に大きくなっている。
 オートマチックというのは絞り、シャッターリングと露出計の針が連動するというものであり、自動露出ではない。手元のカメラは既に露出計が不動でその恩恵にはあずかれないが、露出計の中にある指針は連動して動くことが確認できる。シャッターはプロンターの1/300秒までのタイプで、ここはII BLより後戻りした感がある。また、シャッターリングが光沢で設定値が読み取りにくいのもマイナス点である。外観はカッコいいのではあるが。絞りリングとシャッターリングは軽くロックがかかっていて、回しても一定の露出を保つような仕組みになっている。絞りリングの黒い部分を押すと絞りだけを回すことができる。
 レンズは28mmから200mmまで供給されたそうだが、ファインダーは35mmがファインダー視野いっぱい相当、ブライトフレームは50/90/135mmとなっている。バヨネットマウントで迅速なレンズ交換を実現してはいるが、時代は既に一眼レフへの転換期であり、スクリューマウント機に比べるとこのカメラとレンズはあまり市場に残っていない。

 供給されたとされるレンズは以下の通りであるが、28mmと200mmはネットでの画像も見たことがない。他は、店頭や通販の画像で見たことがある。実物を見たレンズも他社シリーズに比べると相当レアで、35mm、50mmF2.8、135mmがほとんど、都内のカメラ店のうち1,2軒で見たのみである。ヘリコイドの回転が、シュタインハイルはIIBL以前のシリーズと同じ、他は逆方向でそういうところは使いにくい。また、マウントからのリリースボタン(レンズ側にある)が華奢で、ここが壊れていることが多いようである。フィルター径は私が持っている3本は45mmで共通となっている。45mmは通常のフィルター径ではないので、45-46mmのステップアップリングを使うなど、工夫が必要だ。
・エンナ
Ultra-Lithagon 28mmF3.5
Lithagon 35mmF3.5
Color-Ennalyt 50mmF1.9
Color-Ennit 50mmF2.8
Tele-Ennalyt 90mmF3.5
Tele-Ennalyt 135mmF3.5
Tele-Ennalyt 200mmF4.5

・シュタインハイル
Quinon 50mmF1.9
Culminar 50mmF2.8

・イシュコ
Westron 35mmF3.5
Color-Ultralit 50mmF2.8
 
ヴェストロン Westron 35mmF3.5 (イシュコ)
 いろんなカメラの資料をまとめたサイトでもこのレンズの存在は記載されていなかった。eBayで見かけたときは本当にこのマウントか?と思ったが、鏡胴に使用感があったので実用されていたと解釈し入手した
(なお、この系統のバヨネットマウントレンズでSLKと表示されているものはこのマウントである)。ヴェストロン35mmF3.5というスペックのレンズはパクセッテスクリューマウントの方にも存在しているが、そちらは鏡胴の奥に小さなレンズが収まっている形式で、こちらバヨネットマウントの方は大きな凹レンズがあるレトロフォーカス式のレンズである。これはM42やエキザクタマウントにもあるので、レンズそのものとしてはポピュラーなものだろう。描写は周辺光量落ちが大きく、全体に解像が甘めである。
 
クルミナー Culminar 50mmF2.8 (シュタインハイル)
 シリーズ中では比較的レアなシュタインハイルの標準レンズである。手元のレンズは拭き傷があって少しもやっとする描写であるが、十分よく写っている。絞り開放では周辺画質が怪しいものの中央部はシャープである。レンズ筐体は大きく、その奥に小さいレンズが埋め込まれているような形をしており愛らしくも格好の良いレンズである。
 
テレ・エナリート Tele-Ennalyt 90mmF3.5 (エンナ)
 小柄な中望遠レンズだ。カメラの距離計像が薄いのと、レンズの回転角が大きいので、少し陰ってコントラストがはっきりしない状況だとピント合わせが難しい。絞り開放では少しもやっとしているが絞れば十分シャープである。色合いも良い。
           
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