17年8月中旬
第1次タイ旅行


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はじめに
 配偶者Sが勤続20年を迎えた。勤続10年以降5年ごとに、5日間(つまり前後土日含めて9日間)の休暇が得られるのであるが、20年だけは特別で、10日間の休暇日数になっている。これをお盆の期間につけて合計23日間の長期休暇にすることになった。私はSとは入社年度が異なるからこの旅行に全日程同行することは難しいが、途中で合流することは出来そうなので、行き先がどこになるかをいろいろ相談した。この年は北米の皆既日食があり、それに合わせて行ければ良いのに、と思ったがSはそういうことに興味がなく(それに、北米は元々物価が高い上に皆既日食によってホテルなどが数倍以上に高騰していた)、行先はタイになった。Sと3人の息子たちは7月25日に羽田を出発、私は8月8日に出発しプーケットで合流という算段になった。プーケットでの宿20泊とレンタカー、バンコクでは3泊を予約した。プーケットのホテルには、予約した自分は後から合流することを連絡しておいた。
 7月25日、羽田空港で家族の出発を見送り、しばらく普段通りの仕事をして、自分の出発日が来た。

(拡大する写真には枠がついています。また文中にも写真へのリンクがあります。)


●第1日 17年8月8日(火) 自宅→成田→バンコク

 家族は羽田からB747に乗って出発したのであるが、私は単独行であり、未だ乗っていない機材優先ということでバンコクまでは成田発のA380、バンコクからプーケットまではA350の便を選択した。直近に台風が来ていたのでスケジュールに乱れがあると困ると思いつつも、特にタイ航空からの事前アナウンスはなく当日を迎えた。武蔵小杉から成田エクスプレスに乗り、成田第一ターミナルに到着、2階建て機のA380は友人たちの評では「乗客が多いので何事にも時間がかかる」ということであったがその通りで、チェックインは無人端末ですぐに終わったものの荷物預けに長い列が出来ていて自分の番まで1時間を要した。こうなると展望デッキに行くのはやめて出国手続きに行く方が良さそうだ。便はTG677、出発は17:25で搭乗開始は16:45となっている。ゲートは46番で第4サテライトの一番端っこの場所だ。後から飛行機が出来たので当然であるが、A380の定員に合った待合場所のスペースは想定されていないから人が多く、窮屈な感じである。さらに飛行機に乗る入口が多いこともあって改札のための列も多く、その誘導のためのベルトパーテーションも設置されていて複雑であった。そういうのも含めてA380の体験ということだな。

 到着が遅れていたのか、機内整備の都合で搭乗時刻は30分近く遅れた。今日はバンコクのホテルに行くだけで乗り継ぎはなく、自分にとっては特に問題ない。座席は73K、1階部分の右側最後列窓側である。ほとんど海上を飛んでいるしすぐに夜になってしまうのだが、今日は夕陽が見えるだろうから西側になる右側席を取っている。新しい飛行機なので座席は良いしピッチも比較的広く感じるが、二重の窓の樹脂パネルの間が空いているのは、外の写真を撮りたい者にとっては少し困る。窓が上下に大きいこともあって機内照明の映り込みがあるのと、外側パネルの汚れにピントが合ってしまったりするのだ。もちろん、この構造は製造した側の何かの設計思想の結果であろうから文句をつけても仕方がない。ピント問題はマニュアルフォーカス設定にすれば良い。映り込みはブランケットでカメラの周りを覆って極力防止するしかない。

 定刻から25分くらい遅れて飛行機が動き出した。前席背面についているモニターには機外のカメラ映像を映すことができて、尾翼からの映像ではかなり高い視点から自分の乗っている機体と前方の様子を見ることができる。滑走路に向けて前が詰まっていることも確認できて、離陸の順番待ちであることも理解できた。この機能は面白いと思った。
 18:10過ぎに離陸した。雲が多く、台風の影響が残っているのか、揺れた。雲が多く景色はあまり良くないが、日没頃には雲の下にオレンジ色の夕陽が差し込んで美しかった。離陸後1時間くらいで機内食が出た。豚肉とナスのタイカレー、日本発の便にありがちな蕎麦つきで、さらにパンがつくのも機内食らしい組合せだった。そしてこれもお客が多いA380ゆえなのか、頼んでいたビールが食事の後に来た。

 外が真っ暗になり、しばらく陸地が見えることもないので、映画を見ることにした。昨年公開の"Hidden Figures"(邦題「ドリーム」、日本での公開はこの旅行の1ヶ月後の9月)だ。邦題が原作と全然違うのと、サブタイトルに「私たちのアポロ計画」とあって時代が合わないと物議を醸した。批判を受けてサブタイトルは後に削除されたが、そもそもの題名がおかしいと思っていた。NASAの女性黒人計算手のエピソードで、人種・性別での差別が未だ残っていた頃の話なので、Figuresは人物の外見と計算に掛けたものだろうし、それがHiddenというのは能力に見合わない立場にあったとか、ロケット打ち上げという華々しい出来事の陰にあった努力、といったところを表しているのだと思っていた。それがドリームとは。なお、映画自体は元の伝記的な原作から設定がかなり変わっていて時系列が合わないところが多いそうだ。内容は、上記の通り人種と性別の差別を打ち破って行く女性の物語で、差別用語もそのままストレートに台詞に使われており、見ていて気分が悪いところもあるが、それゆえ差別を克服していく姿に真実味を与えているように思えた。

 日本時間の21時頃に右手に台湾が見えた。飛行経路は高雄のあたりをかすめる形であった。高雄はかなり広い範囲が明るかったが、それより北の東海岸では台東以外は暗かった。そこから1時間くらいで、海南島あたりと思われる明かりが見えた。ダナンあたりでベトナム上空に達して、そこからしばらくして日本時間23時に軽食代わりのアイスクリームが供された。スワンナプーム空港到着まではあと40分といったところか。バンコク近郊は明かりが多く、高速道路の車も多かった。現地時刻の21:40頃
(タイは日本からは2時間の時差)に着陸した。上空で冷やされた機体に地表の湿気がまとわりつき、窓が曇っていた。

 ゲートに着いたが、最後列の窓側なので降機は一番後になる。飛行機が大きく客が多いので列が動き出すのも遅かった。友人の体験談によると、荷物がターンテーブルに出てくるのにも時間がかかるとのことだったから、ここは焦って降りなくても良いだろう。
 空港の通路などではあまり人はいなかった。入国審査、税関を通って外に出るとたくさんの人がいて、それぞれの交通機関へと向かっていた。本日泊まるホテルは車での送迎もあるようだったが、これから電話して来てもらうのは時間がかかると思ったので、タクシーで行くことにした。空港からは20分ほどであった。道中、昨年崩御されたラーマ9世陛下関連の大きな看板などがいくつも目に入った。公的機関は1年間の服喪とのことだ。

 シルバーパームホテルには24時過ぎに着いた。部屋は大きく、エアコンで冷え切っている上にグレーと黒の色調がその冷え方を強調するように感じた。明日は9:05発の国内線でプーケットに向かう。さっとシャワーを浴びて眠ることにした。


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