10年9月上旬
第2次中国(桂林)小旅行


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●第2日 10年9月3日(金) 桂林→陽朔→桂林

 6:45にモーニングコールあり。iPhoneのアラームが鳴らないので不審に思っていたら、7:45にセットしていた。そりゃ、鳴らないわけだ。2日目から危ういことである。
 子供たちは機嫌よく起きてくれた。昨夜遅かったから、いまシャワーを浴びさせ、食堂へ。朝食は中華のビュッフェだ。種類はけっこうあるのだが、問題は味で、例えばキャベツの炒め物は全く味がついていないように感じた。日本人は塩味が濃すぎるから、という度合い以前で、これには困ってしまった。唯一、桂林風焼きそばなるものが客の人気を博していて、それはいつも、補充されるとすぐ品切れになる。他の客も何となく好みが合っているようだ。長男Sは早々にごはんを諦め、スイカに移行し他はろくに食べなかった。

 本日は、漓江の川下りツアーに行く。船着場へは車で30分ほどの行程。中国らしく、通勤ラッシュの中を左右に進路を見つけながら進んでいく。子供たちが乗り物酔いするのではないかと心配したが、これは杞憂だった。
 交通マナーは総じて自己中心的で、これはどの車もそうだ。歩行者も負けてはいない。片側3車線以上の大きな道路の横断歩道も何もないところを悠然と渡る人もいる。また、バイクは小回りが効くだけに何でもありという様相だ。このバイクのうち、既に半分が電気式だそうで、内燃機関を積むよりはるかに簡単で部品点数も少なく安く出来、客側は通勤先までの往復(しかも仕事中に充電しておけば良い)なら航続距離もたいして要らないという割り切りが普及の後押しになっていることは想像に難くない。日本だと、どうしても充電ステーションなどのインフラが、とか、完璧な制度を求め勝ちだから、普及はまだまだ先だろうと思う。
 そんな状況と、工事中で凹凸が多い道路を30分乗っていた。市内の山も桂林の観光パンフレットにあるような形をしていて、今日のツアーへの期待が否応なしに高まる。

 船着場は2漓江下りの船つに分かれている。中国人向けと外国人向けである。ここらへん、開放政策以前の中国の名残のような感じもするし、それがなくたって外国人には高い料金をふっかけるだろうから結局同じか、などと考えたりする。その外国人用船着場は、最近は中国人富裕層も使えるようになったとのことで、見たところほとんどがそういう観光客で占められており、明らかな外国人は1割くらいのように見受けられた。
 船着場の空気はよどんでいて蒸し暑い。桂林市の緯度は北緯25度16分、台北市よりちょっと北というところだから、気候は亜熱帯に属する。ただし、冬季は0度近くまで下がるそうだから緯度のわりには寒暖がはっきりしている。今日はおそらく30度を超えるだろう。船には空調がついていて、1階部分が大きな食堂のような空間、2階部分に小部屋と展望デッキという構成になっている。1階部分は上に書いた「富裕層」の中国人が座っており、我々と、英国人カップルは6人分の椅子がある小部屋に案内された。この2組以外には外国人は居ない模様。
 ガイドの高翠さんから説明を受ける。全行程は86km、最初の1時間は変化に乏しく、次の1時間がハイライト、その後昼食がサーヴされ13時に陽朔に着く4時間コースとなっている。今の季節は雨が少なく川の流れが緩やかできれいだという。

どの船も同じところをなぞって 9:00定刻に出発した。船は我々のものだけではなく、9時組だけで数隻以上いる。漓江は水深が浅く、専用の平底船を使っても航路が限定されていて、船は線を引いたように同じコースを辿る。まるで単縦陣の艦隊行動のように。見事なものだった。
 景色はすばらしい。最初の1時間は単調だというが、とんでもない。天気は曇りで、遠景がもやっているのだが、それもまた良いと思わせる風景だ。ただ、蒸し暑いのは如何ともしがたい。それでも、展望デッキと我々の部屋は同じ階にあるから、時折部屋に戻って休息すれば良い。ガイドの高翠さんがいろんな山を指差して「○○のカタチに見えませんか」と説明してくれるが、ただ眺めていても十分に楽しめると思う。
削られた山と、平坦な川 早くも飽きてきた長男S 船のトイレ 植物は熱帯の雰囲気あり
地元の人が川を横断 猫の山 モノクロにて 途中の町の船着場
水上タクシー(?) モノクロのほうが合っているな 食事

 しばらくすると、少し早めだが昼食の時間だ。早めに始めるのは、食事をしていて陽朔到着にかからないようにする配慮もあるようだし、また、ちょうど景色を見慣れて単調に思い始める頃合というのも計算されているようだ。食事はわりと単純な炒め物などが美味しい。全般に薄味なのは南方の料理らしい感じだが、それでも牛肉と豚肉のそれぞれの炒め物では相応に味を変えているし、飽きさせない工夫がある。残念なのは、冷房が強すぎてせっかくの料理がすぐに冷めてしまうこと。料理は基本的に船上で作られており、中国人専用の比較的小型の船では、船尾の、狭くてむき出しの厨房に躍動する大きな中華なべが見えて、なかなかの迫力だ。
 しばらく同室の英国人カップルと話をする。聞くと英国在の夫婦で、男性が中国人、女性が英国人、休暇の約1ヶ月を20元札の風景かけて中国各地を回っているという。1ヶ月は羨ましいが、行くところが多すぎて各地の滞在が1-2泊と慌しいらしい。なんだか日本人のツアーのような感じだが、でも日本人は1ヶ月も休まないということに気付いた。
 食事中に、高翠さんに呼ばれる。20元札の絵柄になった箇所を通るのだという。せっかくなのでそれの写真を撮っておく。当たり前だが、確かにそういう風景だった。
 高翠さんに、「英語上手いですね」と言われた。えっ、どうして、と思ったら、我々の部屋の隣にガイドの詰所の小部屋があって、会話が筒抜けなのであった。いやはや油断も隙もない。

 行きかう船は大きな船だけではない。地元の人たちの小さなボートもあるし、数人乗りの水上タクシーのようなものもある。その船は竹で出来ていて、白い樹脂で防水され、簡単な屋根と小さな発動機をつけている。乗客が水鉄砲(これもおそらく竹製)を持っていてこちらの船に向けて川の水を吸っては撃ち出してくる。展望デッキまでは届かないが、撃たれる側のこっちも含め、楽しんだ。

 しばらくして、陽朔に到着。山間のちょっとした空地に突如街が現れたような感じだ。長男Sは寝ていて不機嫌である。やむなく、抱いて下船する。
 上陸すると物売りが殺到してくる。こういう方々は全てスルーだが、階段を上った先がこれまたびっしりと土産物店の街で、しばらくは普通の住宅がないのではないかというほど、店だらけだった。町並みは古びていてきれいだが、1階部分は全て店だから、風景としてはあまり面白くない。プラハの旧市街のごとくで、ここまでメジャーになるのも考え物である。
 蒸し暑い。それもそうで、桂林から約90km、南下しているからである。滝のように汗をかきながら、長男Sを抱いて歩いた。ある少数民族の民芸店に入り、エアコンの前に立ち尽くして休憩。配偶者Sはいろいろと見て回っていた。
陽朔到着 土産物屋 こういうのは桂林とは関係ないのだが 西街
少数民族の女の子 寿司・刺身 こういうのは好きだが、どうしても荷物になるので カードゲームに興じる

 土産物屋が途切れるところが、街の外トラクターのエンジンを積んだ車れで、大きな街道に出た。そこに迎えの車が来ている。3列目のシートに長男Sを寝転がせて、私は補助椅子のようなところに座った。クッションが固くて、帰路の1時間半がきつかった。なにしろ地方都市の道路は凸凹が多い。尻が痛くなった。
 帰りには月亮山というところに寄った。下から眺めるだけなのだが、山の頂上に丸い穴が開いているという不思議な山で、その穴を月に見立てているというわけだ。場所によって、その穴が満月だったり三日月に見えたりするとのこと。ちょうどその穴のところに木が一本生えていて、桂林市の木の木犀だという。風流な景色であった。
 そこからの帰り、途中の道路で渋滞が発生していた。郊外の、それほどの交通量ではないところで、どうしたのかと思ったら、観光バス同士の接触事故のようで、道路がふさがっていてほかの車が通れないのであった。バスの脇の少し空いたスペースに双方向からの車が殺到して、さらに混乱している。こういう我先な行動は中国らしいところだ。我々の車の運転手も、反対車線を超えて路肩を突進し、結局通り抜けられずにストップ。やれやれ..
月亮山 欄干の彫刻 鏡のように静か こういう車もまだ多い

 ホテルに着く。夕食はどこかに行くのかと思いきや、ホテルのレストランでビーフン、ということだった。このビーフンは桂林名物だそうで、日本人の想像する細いものや平たいものではなく、うどんの太さに近い麺で、柔らかいというかふにゃふにゃでコシがなさすぎる。調理は汁のない炒めたものと汁のあるものの2種で、いずれも非常に味が薄い。子供用はそのまま食べさせたが、自分は豆板醤を足して食べた。
 今回のツアーで桂林料理と銘打ったものはこの夕食だけである。あとは桂林なのに四川料理、広州料理といったところに案内されることになっていて、どうしてだろうと思っていたが、まあ、このビーフンの感じからすると、ツアー向けには他州の料理のほうが向いていると判断されているのかも知れない。
桂林ビーフン 川エビの炒め物 その他いろいろ

 食後、ホテルの周囲を散歩する。このホテルは桂林の中心街からは外れたところにあるが、それでも十分に賑やかなところで、いアイス屋ろんな店があって楽しい。コンビニでアイスでも買うかと寄ってみたが長男Sは悩みまくり、結局決めかねてグレープジュースを1本買うに留まった。すると近くにアイス屋があり、薄暗く蒸し暑い店内に冷蔵ケースが数台、益々悩むところだが、結局氷菓に決定。価格は1元。細かく砕いた氷に味付けしてもう一度固めたようなもので、いろんな味(色)のものが小さな棒について数個入っている。ザラザラ火鍋屋・ゴリゴリした感触、きつい香料と砂糖でウッとなるような味だった。長男Sは喜んで食べていたが。
 しばらく進むと右手に大いに流行っている火鍋屋が現れた。歩道にコンロを並べて、この暑い中、さらに熱くて辛い鍋を食す。皆、大いに楽しんでいて、失礼ながら先ほどのショボイビーフンを食べた身からすると羨ましい。こういうところで食べてみたいのだが。フリー日に考えよう。

 ホテルに戻りシャワーを浴びて、日記を書こうとするが眠くなり、あっさり諦めた。


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