10年9月上旬
第2次中国(桂林)小旅行
●第3日 10年9月4日(土) 桂林市内
3日目は市内観光の日だ。昨日は船の出発時刻があったから慌しかったが、今日はワンボックス車の貸切状態だから、集合時間はアバウトで気分が楽である。朝食は昨日同様今ひとつ、平たい麺のビーフンだけが美味しくて、それだけを取ることになってしまう。配偶者Sと、不味い中華系料理なんて珍しいねと話す。
9時過ぎにホテルを出た。まず最初は畳彩山、市内で最も高い山だ。気温が高くなるまえにここに登ってしまおうということのようだ。今日の天気予報は曇り、最高気温は29℃。山の駐車場には10分ほどで着く。
最も高い山と言っても山道ではなくて、400段くらいの階段を登るのだが、足腰が悪い人のためにカゴもある。一人260元とかなり高額だ。長男Sが非常に元気で、一人でとっとと登って行ってしまうのがありがたい。こんなところで「ダッコ。」となったら困ってしまう。まだ混み始める前のようで、自由に動けるのが良い。湧き水が流れるのを見たりして、楽しく登っていた。
今のところ、気温は低く、風がよく通って気持ちが良い。頂上付近にはミストつきの扇風機があったが、ミストというより水滴に近くてけっこう濡れた。
頂上からの景色はすばらしい。いま登った畳彩山も丸いが、他に点在する山も丸くて、その数が想像以上にあって桂林市内の風景を特徴付けている。市内を蛇行しながら二分する漓江と、その隣にある湖の位置も良い景色だし、その付近に塔が建っていて上手く調和している。湖の周辺には宋時代を模した建物があって、湖上の舟からそれを愛でることが出来るそうだが、建物の中身はなくてガランドウらしい。こういうところは割り切っているというか、もったいないというか。そういうところに無理に土産物屋や宿を詰め込まなくても、観光地として十分な資源があるということだろう。
漓江には遊覧船が多く出ている。昨日の漓江下りもよかったが、こういう市内を走る遊覧も楽しそうだ。地元の人は小さな船で中州に上陸して遊んでいたりもする。のどかな風景だ。
下りはあっという間だ。ここも長男Sは元気に歩いてくれた。降りきったところのトイレに入ると、「前進一小歩 文明一大歩」とあって微笑。こういう標語は中国語でより活きるような気がする。なんと言っても、「文明」と大風呂敷なのが良い。
桂林市の山はみな石灰岩なので軟らかい。トイレの近くにちょうど良い角度の斜面があって、そこを滑り台と見立てて滑っている地元の人がたくさんいる。皆が滑った跡が削れてピカピカになっている。これは我々も参戦せねば、ということで配偶者S、長男S、次男Mが滑り台へ、私は撮影係。ひとしきり楽しんだ。
次は芦笛岩というところで、これは鍾乳洞だ。ここへの移動中に長男Sが眠くなってしまい、鍾乳洞内の全行程を抱いて歩く羽目になった。入場前の待合室で椅子の上に寝転がしておくと、周囲の中国人たちに「どうした?」というように話しかけられるのだが、言葉ができないから返事もできない。英語は通じなかった。
洞窟の中は意外にも暑くて難儀した。ここにもカゴがいて、山と同じく260元。年老いた親をカゴに乗せて、というケースが多いようだった。私は仕方なく、長男Sを左手で抱き、右手でカメラを持って歩く。時折画角を変えるために抱いている左手のところにレンズを持って行くのだが、鍾乳洞内は狭いから、広角ズームを付けっぱなしで、ほとんど画角調整せずに用は足りた。最近のカメラは高感度特性も良い上に手ブレ補正もあるから、暗いズームレンズでも難なく撮れてしまう。
それにしても、これは中国人の感性なのだろうが、着色された光でのライトアップ、これは最初きれいだとは思ったが、全部それだと鍾乳洞の岩を楽しんでいることにならないような気がする。極めつけは、一番低いところにある大きな洞のところ、床にはLEDが埋め込まれ、岩陰にはシャボン玉発生器やレーザ照射装置などが仕込まれていて光のショウのようなものをやっていた。ここまで整備することないよなあ。
洞内は空いていた。ガイドの高翠さんによると、こんなにお客が少ないのは珍しいとのことで、通常は後から後から入ってくるお客に流されるように動くという。幼児連れには今日のようなペースはありがたい。
外に出て、結局ほとんど中では起きていなかった長男Sを車に乗せ、次は象山景区、象の形に見える岩があるところだ。天気はここで晴れになり、急に暑くなってきた。結局ここでも長男Sはダッコ状態。ここは人が多く、手荷物には注意したほうが良いと高翠さん。
象山というのは、川のところに出っ張った岩に穴が開いていて、細長い岩が象の鼻、それが川の水を飲んでいるように見えるというのだが、これ以外に見るところはなく、広大な広場と売店があって賑やかではあるが、なんだか物足りないところだった。15分ほどでそこを出た。
昼食は市内のホテルで、四川料理だ。2日目の日記に書いたとおり、ここ桂林の名物料理は昨日の夜だけで、今日は昼が四川、夜が広州料理だ。何でも揃う観光都市らしい設定ではある。いろいろあるほうが中国初心者の私には良いとも言える。
四川だから当然、辛い。幼児が居るので辛味は抜きで、とお願いしたがやはり辛かった。辛味抜きを想定して自分用に豆板醤などを別の皿に用意してもらった配偶者Sも、結局その辛味を使わずに終わった。それほどに辛い。麻婆豆腐、鶏肉と野菜炒めもジリジリする辛さだ。炒飯が無難な味で助かった。
これは夜もそうだったのだが、ドリンクは1杯だけ無料、2杯目からは有料とのことだった。長男Sはスプライトを所望、以降スプライトばかりであった。ちなみにスプライトは「雪碧」と書く。
この手の格安ツアーにありがちなのは、強制的にショッピングに連れて行かれること。むろん買うことは義務ではないが、効率が悪いし、興味が沸く案件でないとつらいだけだ。で、この午後に行ったのは寝具の店。桂林と寝具というのが結びつかないのだが、亜熱帯なのでゴム製造が盛んで、ゴムを発泡させたスポンジのような多孔質のものを寝具にしているというわけだ。しかし、いくら膨らませているとはいっても天然ゴムでマットレスのような大きなものを作ると、高い(なにせ10万円単位)。柔らかさが自然で低反発素材より良いそうだけど、独特のにおいがあるし、はっきり言って興味はなかった。
いっぽう子供たちはというと、サンプルのベッドに寝ても良いというので急に元気になって大騒ぎ。そして挙句に、ベッドから落ちて大泣きと相成った。さすがの中国人セールスパーソンも、説明が続行できなくなって一旦休憩。お茶とコーヒーを出された。コーヒーが甘くて閉口。なぜかマレーシアを思い出した。
落下事件でこの店の時間は終了した。しかしまあ、40分も居なければならないのは苦痛である。次回があるなら、こういうツアーにするかどうかは再考したい。
七星公園というところに行く。ここはホテルの近くだ。公園内に動物園があって、そこだけ有料の区画になっている。動物園の区画はまだ整備中のようだが、目玉のパンダ舎は見学可能のようだ。入口で、長男Sが我々を見失って、泣きながら反対方向に駆け出したのでびっくりした。すぐ後ろにいたんだがなぁ。長男Sは我々が自分をおいてどこかに行ったと勘違いして、勝手に怒っている。ガイドの高翠さんがなだめてくれたが、もちろん我々の問題なので、頼らずに私が説得した。まあ、旅行にしたって普段の生活にしたって、こうした行き違いはある。
動物園の構内に入る。公園はかなりの人出なのに、動物園の中は閑散としている。有料というだけでこうも違うのか。動物園入口で息子が走り出したときには人が多くて焦ったのだが、ここなら見失う心配はないようだ。それでも、しばらくグズっていたので、抱いて園内を歩いた。鳥の展示のところから自分で歩き、元気になった。良かった。
元々余裕のある敷地内ではあるが、それに比してもパンダ舎は大きくて、大きな部屋が複数あり、さらに建物より広い裏庭もある。裏庭の周囲には見学の通路があって、混合資料と笹を悠然と食べているパンダを色んな角度から見ることができた。それより何がすごいかって、列がないどころか見ている人が数人、なのである。パンダなそわざわざ見るほどのこともない、というのだろうか。おかげで心行くまでパンダを眺めることができた。
レッサーパンダ、さる、エミュー、くじゃくなどを見て動物園を後にした。この動物園区画建設は地元の反対に遭ったという。理由は、騒音と臭い、だそうだが、なにしろ広い敷地で動物たちはそれぞれ離れているし、公園外の住宅地からも離れている。騒音も臭いも、杞憂だったようだ。どちらかというと、街中の自動車のほうがよっぽどうるさく、臭うと思った。
ここで本日2箇所目のショッピング。今度はお茶。お茶の研究をしている施設だそうで、大きく立派な建物だ。お茶の葉を固めて作ったレリーフのようなものがあったりして、その発想に尊敬の念を禁じ得ない。
建物の中は個室が並んていてそれぞれの中でお茶とお菓子の試飲、試食ができる。少数民族の女性がきれいな日本語で説明をしながらお茶を振舞ってくれる。最初の八桂珍(羅漢果茶)が一番美味しかった。長男Sが何杯もお代わりしていた。他のお茶は茶というより漢方薬のような感じで、何だか安らぐというよりは我慢して飲むような感じになり、今ひとつだ。中でも田七花はゴボウのような渋い味で文字通り閉口。八桂珍は買っても良いかと思ったが配偶者Sは高いと言って買わなかった。280gで3000円くらい。
個室でのプレゼンテーションを終わりにして階下に降りると出口手前が売店という完璧な作り。いろいろ勧められるがやはり何も買わず、出口付近で果物を売っているあたり(南方らしいね)でキウィをもらった。何も買わずにもらってしまうのは恐縮。日本人観光客らしくない客かもしれない。
夕食は広州料理。17時にはレストランに着いてしまい、準備ができていない由。つまり本来は買い物時間を想定してもっと遅い時間帯のはずだったのだろう。迷惑な客といえよう。それに、お茶研究所(?)でお茶受けの菓子も食べて腹も減っていないというのもある。そこで周囲を散歩することにした。レストランの裏が川になっていて、道路から一段川のほうに降りると遊歩道のようになっている。ずっとダッコだった長男Sが急に元気になり、河原で石を拾って投げたりしていた。
しばらく遊んで、レストランに戻る。広州料理はその味で有名であるが、なるほどこれは美味しい。昼の四川に続いてここでも麻婆豆腐が出たのだが、当然キャラクターは全然違う。元は四川だろうけど、広州のマイルドな味もそれでアリではないかと思う。酢豚は肉が脂身だらけで残してしまった。セロリと豚の炒め物は絶品。
ホテルはすぐ近くだった。明日はフリー日なのだが、市内は今日回ってしまったし、遠出の手配を新たにするのも面倒だから、ということで、明日も運転手さんと高翠さんにお願いすることにした。ただし、これはツアーではなく完全なチャーターだから安くはなく、約1.5万円を要した。やむを得ない。翌朝の時刻を約して、ホテルで別れた。
そのまま夜の散歩に出る。今度は昨夜とは反対方向に向かう。そちらの方向は寂れているように思ったら、大きな通りに出て、大いに賑わっていた。大きな橋を渡ると市内の方向で、長男Sはその長い橋をとっとと歩いて行ってしまう。ミニカーを片手に、大いにはしゃいでいたが、昼間のように急に泣き出したりしないか、ちょっと心配だ。
橋を渡ったところで引き返す。河原に下りようかと思ったが、暗すぎた。さすがに暗いところは怖い。
橋を戻ってすぐに元の道に折れず、さらに遠回りして大きな店が並ぶ一角を通りすぎ、集合住宅が並ぶ路地を抜けて、昨夜散歩したあたりまで戻ってきた。そして例のアイス屋でまた買い物。長男Sは昨夜と同じ1元の氷菓、私はチョコバー(3元、ちょっと高級?)。もう1軒寄ってフルーツジュースを買ってホテルに戻った。
今日も盛りだくさんで、楽しかった。
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