08年4月下旬〜5月上旬
第1次マレーシア旅行

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●第5日 08年5月3日(土) クアラ・ルンプール

巨木ん、ちょっとヘン? 昨晩の息子の大またもたくさん騒ぎのおかげでかなり眠い。少し寝坊した。今日はマレーシアフィルハーモニー管弦楽団(MPO)のリハーサルを見学して、その後ペトロナスツインタワーの展望通路(スカイブリッジ)に行き、夜には再びMPOの定期公演を聴く(これは私だけ)という予定だ。MPOのコントラバス奏者、Fさんと知り合いなので、この予定になった。午後は特に決めていない。夜の演奏会は、このために旅行の日程を考えたともいえるだが、というのも、MPOは定期公演が土日なので、その日程にKLに居る必要があるからだ。私のわがままにつきあってくれる家族に感謝せねば。

 リハーサルの見学はペトロナスタワーのところのデワン・フィルハーモニク・ペトロナス(ペトロナス・フィルハーモニーホールという意味)で、9:50に約束している。ちょっと急がねばならない。と言いつつ、ホテルの朝食ビュッフェが豪華で、またまたたくさんモノレールが近づいてくる食べてしまい、結果として出発が遅くなってしまった。9時半近くにホテルを出る。インビ駅のプラットフォームに上がったら、ちょうどモノレールが出て行くところだった。これで遅刻が確定してしまった。5分ほど待って次の列車に乗る。モノレールは高架の上を走るので、景色がよく見える。まっすぐな道が少ないKLの市街はごちゃっとしているが今もいろいろなところに建設中の建物があり、活気があると思う。
 モノレールをブキ・ナナスで降りる。ここでLRTに乗り換えてKLCCまで行くのが正統なのだが、KL市内の鉄道関係の駅は、乗換え駅と表示されていても近くになくて、不便だ。乗り換えのために歩いている時間のほうが長そうなので、ここからKLCCまで歩くことにした。距離はそれほどでもないのだけど、息子を抱いて気温30℃の中を歩くのはきつかった。汗を拭き拭き、MPOのFさんに電話する。間に合わないので、1曲目のエルガー「南国にて」はパスし、次の曲から聴くことにする。
 Kすぐ下から見上げるとLCCに着いた。建物の中のきつい冷房が嬉しい。ホールはツインタワーの間の根ツインタワー、逆光にて元のような位置にある。階段を上がって、そこにいた守衛さんに事情を話し、フォワイエでしばらく待つことにする。「南国にて」は20分くらいの曲だが、指揮者がずいぶんと熱心な方のようで、結局1時間以上かかってこの曲のリハーサルが終わった。Fさんがいらっしゃって、お土産のうどんを差し上げ、守衛さんに入館許可をもらってホールに入る。ホールの中は木でできた壁に囲まれて落ち着いた色調だ。素直な直方体のホールだが意外に残響は少ない。2曲目はジョー・デュデルという人の「ルビー」という現代曲で、打楽器協奏曲になっている。多種の打楽器にピアノまで入る。初めて聴くがこれがなかなかおもしろい。普通の打楽器の演奏に加えて、ヴィヴラフォーンを弦楽器の弓でこすったり、普段見られない奏法もあって視覚的にも聴覚的にも新鮮である。3楽章の途中でスカイブリッジの見学時刻が迫ってきたので、退席することにした。

 スカイブリッジは、ツインタワーの中ほどの高さにあるビルの間をつないでいる連絡橋のことで、ここへの無料の見学ツアーがある。時間帯を区切って整理券が発行されていて、私たちの時間帯は11:45だ。見学の15分前に待合室のようなところに入り、ビルの説明展示などを見て待っていると、「11:45の方〜」と呼び出しがかかる。ついていくと、ミニシアターに入り、3D映像用のメガネを渡される。映像はペトロナス(マレーシアの国営石油会社)の宣伝だった。ま、無料の見学ツアーとなればこういうのを避けて通ることは出来まい。息子が騒ぐかと懸念したが、メガネをいじって遊んでいて特に問題なし。
 3Dシアターの次にエレヴェータで41階に上がる。ブリッジの見学時間は10分間である。短いが、見学できるのはブリッジだけで、土産物屋などがあるわけでもなく、景色を見て記念写真を撮ると、それでおしまいといった感がある。このブリッジはビルの最上階にあるような展望台と異なり、ビルの中途にあるので、左右のビルの外壁がよく見えるのが面白い。特に、このツインタワーはモスクの建築を模していて、高層ビルにしては凹凸があるのが特徴だ。そんなところを見ながらしばらくうろうろしていると、見学時間が終了した。
 エレヴェータで下に降り、待合室で雷のデモを見る。ツインタワーの模型に人工の雷が落ちるようになっていて、当然、自然界の雷に比べれば小規模なのだが、ものすごい大音響でびっくりする。しばらくその模型の前で粘って、落雷シーンを撮影した。
展望通路の様子 展望通路からの景色 北西方向 南東方向 人工の雷

 Fさんとは13時にホールのセキュリティ前で待ち合わせで、まだ30分ある。ならばということでまたホールに入ってリハーサルを見学する。ニールセンの4番の4楽章の途中だった。1stティンパニの人が気乗りのしない叩き方で、この曲でそれはないでしょと思ったが、後で聞くと、本番は別人の由。夜が楽しみだ。それはともかく、この人、練習中に指揮のマネをするのはさすがにどうかと思った。指揮者の性格によっては、それ見て帰ってしまうのでは..
 4楽章終了後、何箇所かをおさらいしてリハーサルが終了した。これからFさんの車でリッツ・カールトンに行き飲茶をすることに。メニューを見てもなかなかイメージが湧かないので、Fさんにお任せで注文してもらう。たくさん出てきたので何を食べたかが定かでない(珍しくそれぞれの写真も撮らず)が、どれも美味しかった。値段もそれなりに高くてRM199、うちRM100を払わせてもらったが、よく考えたらこっちは大人2人+幼児、明らかに3分の2以上食べていた。こういうところで頭の回転が遅いのはダメだな..
 ロビーで車を回してくるのを待っていると、ホテルの人が息子に果物をくれた。さすがリッツ・カールトン、こういう行動を流れるようにこなす。感心した。

 Fさんの車で次に向かうはKLタワー。さっき高いところに登ってまたタワーか、と自らに突っ込みたいほどの観光客的行動だ。そういえば初めて行ったNYでもそういうことをしたっけ。
 KLタワーは高さ421m(世界第4位)の通信塔で、276mの高さのところに展望台がある。先に上ったペトロナス・ツインタワーのスカイブリッジは170m(ビルは452m)の高さなので、観光客が登れるところとしては実はこちらのほうが高い。さらに、KLタワーはブキ・ナナスという高さ94mの丘(ブキBukitは丘のこと)の上にあるので、実質の高さはもっと高い。丘+塔ゆえにどの方角にも視界が開けているのでKL市内に詳しい人なら、ああ、あそこは○○だね、などと会話が弾むだろう。展望台の壁には世界各地の通信塔の模式図のプレートがあり、東京タワーもある。KLタワーだけカラー版になっていてよく目立つ。そういえばオーディオガイドを貸してもらったのだが、すぐに電池切れになったのか、使えなくなってしまった。3人が借りて3人とも使えない、とは不具合率が高すぎる!
KLタワー KLタワー展望室にて タワーからの眺望 泊まっているホテルのある方向

 またまたFさんの車で中華街に向かう。NHKの「世界ふれあい街歩き」にも出て来た場所で、KL市内でも有名なところだろう。KLは車社会とあってほうぼうに駐車場があり、なんと呼び込みまで居る。そのうちの一つを選び車を停めて、いざチャイナタウンへ。ごみごみしていて活気があって楽しい。こういうところの常で、ロレックスやルイ・ヴィトンなどの偽モノが多数売られている。何しろ、「しゃちょサン、にせろれっくすどう?」ってな呼び込みがそこらじゅうから聞こえるのだ。モンブランの万年筆がRM10(300円!)とはあんまりだが、偽と分かって品定めをしている人もけっこういた。呼びかけをいなしながら歩くも一興だ。
ドリアン! 中華街 どいたどいた〜! 美味しそう 花屋さん、派手ですね

 途中で果物屋が多い道に曲がる。ドリアンは最初の出張のときに現法の人が選びに選んだ高級品を食べて、それは美味しかったのだが、街中でひょいと食べるには勇気が要る。ジャックフルーツくらいならまあ大丈夫だろう、とRM2の1パックを買う。中身だけが剥かれてパックになっているのだ。しゃきっとしていて、臭みが少なくて美味しい。息子に「バナナだよ」とウソを言って食べさせたら、殊の外喜んで食べた。最後のひとかけらを大事に持っていた。
 一通り歩いたあと、少し戻って台湾式茶藝の店に行く。靴を脱いで店に入ると、床がひんやりとして気持ちよい。座敷ではウノをやっている日本人のグループもいた。私たちはテーブル席に。お茶と、茶で煮込んだ卵、茶入りのケーキ生地を揚げて蜂蜜をかけたもの、などを食べる。お茶は、何度か淹れると風味がまろやかになってきてそれがまた美味しい。静かな店内でお茶を飲みながらの談笑も楽しいひと時だ。
ジャックフルーツを買う 台湾式茶藝の店 ケーキ生地を揚げて蜂蜜をかけたもの 茶で煮込んだ卵

アロー通り Fさんにホテルまで送ってもらう。今日は何から何までFさんに頼ってしまった。ありがたい。部屋に戻り、私は夜のコンサートのために長袖に着替えておく。これからアロー通り(ジャラン・アロー)に出て夕食だ。ここもKL市内では有名な屋台街で、ブキ・ビンタンから1本逸れたところに所狭しと飲食店が建ち並ぶ。既にたくさんの人が集まり、そこかしこから良い匂いが漂ってくる。予備知識がないから適当なところで店を選び、テーブルに着く。牛肉入り米麺炒め、豆腐の海鮮炒め、野菜のニンニク炒め、スイカジュース、オレンジジュースを注文する。息子は白いごはんの上に突き出しのピーナツを並べて遊んでいたが、そのうち料理にも手を出し始めた。料理は、どれも美味しい。サイズはSで頼んだがけっこうな量で、来たときは食べられるかどうかと思ったが、あっという間に平らげていた。会計は全部でRM38(1100円くらい)、満足である。
この店に決める(特に根拠なし) スイカジュースなど 牛肉入り麺 豆腐の海鮮炒め

 会計だけ済ませて、私はホールに向かうことにする。アロー通りを、より賑やかなほうに抜けて、ブキ・ビンタン通りでタクシーを捜ドリアン屋す。停まっているのはプレミアタクシーだけでちょっと迷ったが、演奏会に間に合わないのはまずいので、言い値のRM20でKLCCに向かうことにする。うーん、後で考えると半額でもいいよなあと思ってしまう。プレミアといっても、車がちょっと高い車種というだけなのだ。
 ホールには20時過ぎに着いた。MPOのFさんに電話して待つ。というのも、私はコンサートに行くためのドレスコードを満たしていない。ここは、最低限上着が必要だったのだ。日本を出るとき、上着を入れるかどうかは迷ったのだが、まあいいか、と置いてきてしまったのだ。Fさんの案内で、上着を貸してくれるところに行ってXLサイズのジャケットを借りた。ちょっと袖が長いが、Lだとお腹が目立ってしまうだろう。
 ホールの席はBox Fの1番。ホールのサイドにあって、数席ずつが区切られBoxという名前がついている。Fの1番は第1ヴァイオリンの脇になるが、オケ全体も見渡せて、良い席だ。客席はだいたい7割くらいの入りで、Fさんによると、曲目によって入りがかなり左右されるらしい。まあそれは日本でも同じなのだが、MPOでは、いまの音楽監督が極力いろんな作曲家を取り上げるという方針で、例えばベートーヴェンの交響曲などは年に2、3回しかなかったりするというから徹底している。それも見識で、そうしていろんな曲をお客に提示して、一緒にチャレンジしていくのは良いことだと思う。日本のあるホールに知り合いがいるのだが、「客が入るのは、『3大協奏曲の夕べ』とかなんだよね」と言っていた。収益も大事だが、そればかりだと、いっこうに有名どころの繰り返しから抜け出せないと思う。
 さて、演奏曲目などを書いておこう。
   マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団(MPO)定期公演
   エルガー/序曲「南国にて」
   デュデル/打楽器とオーケストラのための協奏曲「ルビー」 (マレーシア国内初演)
   ニールセン/交響曲第4番「不滅」
   指揮:ポール・マン
   打楽器ソロ:コリン・クリー
まずはエルガー。快演だった。CDで聴いていて今ひとつ流れが掴めなかった曲なのだが、目の前の演奏者を見ると、なるほどと思わせるものがある。指揮者もこの曲が好きなのか、活き活きとしていた。2曲目の「ルビー」はリハーサルでほとんど全容を予習できたこともあって、楽しめた。色々な楽器を同じリズムで次々に叩いて行ったり、色の変わり方が絶妙だ。ソロの方の気合はますます高まっていて気持ちの良い演奏で、一気に聴かせた。
 休憩後にメインのニールセン。聞いていたとおり、1stティンパニの人は別人のようだった。第1楽章からものすごい音が炸裂するのだが、オケのバランスを壊すという感じはしなくて、なんとも爽快な気分になる。ただ、オケの奏者はこの音があまりに大きいのか、ティンパニの横に防音用の台を置いたりしていた。おそらく、低音金管の人が打撃で音が聴こえなくなってしまうからだろう。こういう台って、弦楽器の人が後ろからの金管楽器の音を防ぐためにあると思っていたが、横方向に置かれているのは初めて見た。ティンパニの人はテクニックも抜群で、第2楽章だったか、本来5台必要な箇所を3台で済ませ、ペダル操作で半音ずつずらして行ったりとか、こういうのが見られるのはライヴ演奏ならではだと思う。
 オケ全体としても、指揮者の情熱を上手く形にしていて、特に第1楽章ではハッとするような音の切れ目があって、変化に富んだ音楽が展開されていたと思う。第4楽章で若干乱れたところがあるが、全体を通しては上手くまとまり、盛り上がっていたと思う。アンコールは無し。
 終演後、ジャケッKLCCで小宴会トを返却してFさんと待ち合わせ。ホール近くのレストランに行き、小宴会。メンバーは日本人学校のM夫妻、JETROのHさん、MPO タワー、なるピッチャーヴァイオリンのKさん、ヴィオラのIさん(いずれも日本人)、そして今回お世話になりっぱなしのコントラバスのFさん、と私。ビール(カールスバーグの現地工場がマレーシアにある)を「タワー」なるサーバで注文する。これは細長い筒状で、つまりはこのレストランがあるペトロナスタワーを模したものだろう。中くらいのジョッキの量で、約12杯分のビールが入っている。レストランのテーブルはほとんどが外にある。マレーシアは北緯3度くらいでもちろん熱帯なのであるが、夜は24℃くらいで、外でビールを飲んだりするにはちょうど良い感じがする。昼間と演奏会の熱気を思い出しながら少し涼しくなった空気の中で飲むビールは格別だ。
 いろいろ話をする。M夫妻は8月の会社のオケのマレーシアでの演奏も手伝ってもらう予定だ。ヴィオラのIさんはなんと、会社のオケのメンバー多数と知り合いであることが判明。なんとまあこの業界の狭いこと。

 0:40頃にホテルに戻る。ブキ・ビンタン通りは大渋滞だった。こんな時刻まで渋滞しているとは、さすがKL随一の繁華街だけのことはある。部屋の前に着いて、カードキーを差すと、なんと赤いランプが点灯した。これは、中からラッチを掛けているのだ。つまり電子ロックの上に、機械的にロックしているから外からでは開けられない。困った。元々予約ではダブルの部屋だったのがジュニアスイートになっているので、ここでノックしても、寝室には聞こえないようだ。息子を起こしたくないので呼び鈴はやめたいが、やむなく押す。が、やはり起きてこない。8回まで増やしてみたがやはりダメだった。さて、どうするか。地階に下りて、レセプションのところにある内線電話で1008号室を呼び出してもらった。Sが起きて電話に出てくれた。助かった。やはり夜遊びはほどほどに、ということだろう。
 しばらく演奏会の話などをして、日記を書いてシャワーを浴びたら午前3時になっていた。寝ることにしよう。


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