93年12月末−94年1月初旬
第1次欧州旅行


第1日 第2日 第3日 第4日 第5日 第6日 第7-8日


●第5日 94年1月2日(日) ヴィーン

 晴れ。本日は、Kと市内観光に回る。観光といっても、音楽関係の史跡めぐりである。ヴィーン市は、音楽家の住んでいた家などを保存し、それぞれを博物館として公開している。街の景色を見ながら移動し、これらの史跡を巡るのは楽しい。1箇所に集めるのも良いが、この形式も良いと思う。さすがに50回も引っ越したと言われるベートーヴェンの跡地は多く、とても全ては見て回ることはできないが、出来るだけ回ってみるつもり。分散しているので、当然、1軒1軒は小規模である。入場料は150円程度。係りの人も1-2人と少なく、昼食休憩のため、12時15分から45分間は休館となる(全てがそうではないかも知れないので念のため)。まずは近いところから、フィガロハウス。昨日もこの前を通っているが、入らなかった。ここはその名の通り、モーツァルトが歌劇「フィガロの結婚」を作曲したと伝えられるところで、当時の家具、市街の様子を伝える絵など、そして、モーツァルト関係の資料が展示されている。後年いろんな人が住んだため塗り替えられた壁を「発掘」し、モーツァルトが住んでいた当時の壁を出してあったりする。何部屋もある当時としても高級なアパートではあるが、もちろん博物館としては広いわけでもないので、見学は30分もかからない。それにし新王宮、手前はプリンツ・オイゲン像ても、他の部屋や上下階は現役として使われているのである。いったい、欧州の人たちは建物を何年使うつもりなのだろうか。
 次は新王宮に向かう。王宮と新王宮の間の広場に、色とりどりの馬車が停まっている。観光用の2頭立て4輪馬車である。最近増えすぎて糞害が問題になり、馬におむつをつけるかどうかが議論になっているらしいが、この当時そういう話があったかどうかは知らない。我々は馬車を使うことは全然考えなかったので、特段興味は無かった。新王宮はいま、博物館になっている。歴史博物館なのであるが楽器のミニチュア、その右側の建物は「武器防具・古楽器コレクション」とある。一見、脈絡の無い展示に思えなくも無いが、武器防具も楽器も、王室の行事には欠かせない物品ではある。そういう解釈にしておこう。もちろん、我々の興味は楽器にある。私は当時から、クラシック音楽の古楽器演奏という分野に興味を持っていて、一度この博物館を見たかキートランペットったのである。実を言うと、3日前に宿泊したバーゼルにも古楽器博物館があったのだが、折悪しく休館日だった。今日は、大丈夫である。楽器のコレクションといっても、いろいろで、古楽器そのものや、装飾品や楽器のミニチュアなども展示されていた。バッハ時代のハープシコードの再現品は実際弾く事も出来、2声のインヴェンションでも弾いて見ようかと思ったが、元々無い技量がさらに落ちていることは明白なので、止めておいた。欧州の博物館や美術館(一部例外はあるが)で良いのは、写真撮影が自由なことである。ただしフラッシュはどこでも禁止。収蔵品の劣化というより、フラッシュは周りの客の迷惑になる。最近、コンパクトカメラはデフォルトでフラッシュを多用する設定になっているので、スイッチを入れてそのまま撮ると、たいてい光ってしまう。フラッシュを焚くと非常にシャープな(博物館内部印象の)写真になるので、これが一般化してしまっているが、こういうときは「発光禁止モード」にしなければならず、甚だ不便である。昔は、別スイッチを入れて発光させていたのに、いつからこんなアホな仕様になってしまったのだろうか。便利さとは、人の意思を入れないこと、なのだろうか。博物館やコンサートなど、あまり機会が無いことに機能を犠牲に出来るか、ということか(*注)
 ...古楽器、脈絡のない展示話が逸れてしまった。楽器博物館に戻そう。この古楽器コレクション、後から考えると楽器種別や時代で系統だって展示されておらず、その点残念ではあるが、見学当時は何せ古楽器を見るのも初めてで、感激ひとしおであった。有名な(一部マニアだけか?)ロダン作のマーラー像もここにある。マーラー像、残念ながら良い写真は撮れなかった。どうも、ここぞという時に緊張してブレるようである。まだまだ修行が足りないようである。

 昼食は中華料理にした。青島飯店というところで、ヴィーン留学中の新日フィルの人からの紹介。牛肉入りの、きしめんのような麺を炒めたものを注文。そしてビール。冬だというのに、こう毎日ビールということは普段考えにくいが、不思議といけるのである。午後はハイドン最期の家と、ベートヴェンの住んだ家を回る。ハイドン最期の家には、トランペット協奏曲の自筆譜のコピイが展示されていた。原譜は学友協会で保管しているという。譜面が現代のものとずいぶん異なっている。いまは、楽器種別で一塊になり、高い音を担当する楽器から順番に上から書いて行くのだ。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、ティンパニ、ソロ楽器、ヴァイオリン(1・2)、ヴィオラ、チェロ、バスの順で大体定着している。このハイドンの譜面は、トランペット、ティンパニ、ホルン、フルート、オーボエ、ファゴット、ヴァイオリン(1・2)、ヴィオラ、そしてここにソロ・トランペット、チェロ・バス。ここに書く意味は何だろう?と思うが、適切な説明が思いつかない。オーケストラ側のトランペットとティンパニが総譜の一番上というのも今見ると相当違和感がある。総譜の変遷史は全然知らないが、それぞれの時代で楽器の役割に関係して総譜での位置も変わっているのだろうか。今回、いろいろと譜面を見る機会はあったが、もっと詳しく見ておくのだった。
 市中心部に戻り、リンク沿いに少し歩き回る。市役所の前に夜店が出ているというので行ってみる。市庁舎、これも現役..ここでホットワインなるものを飲む。赤ワインに柑橘系の果汁を混ぜたものを暖めてある。なるほど、冬の屋外で飲むにはなかなかよろしい。それにしても、市役所と夜店の関係がよくわからない。もちろん今日は日曜なので市役所は開いていないのだが、夜店ならもっと繁華なところの方が向いていないだろうか。自問しても答えが出るわけも無いので散歩を続けるのだが、この市庁舎がまたとんでもない建物で、これまた現役と聞くから驚く。観光都市ヴィーンらしく、夜間はライトアップされているのは私などにはありがたい。早速撮影に挑戦。三脚なしで非常に厳しいが、これは運良く成功。通りがかりの米国人らしい観光客が暗いのにフラッシュ焚かないの?と言うのだが、これは軽く却下。建築物をフラッシュ使って撮る人、いないだろう。
今日は音楽会は行かず、宿に直行した。


(*注)その後、リコーからGRシリーズという、スライドスイッチで明確にフラッシュon/offが選択できるコンパクトカメラが発売になった。少々高価であるが、写りが良く、私も愛用している。

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