15年1月中旬−下旬
アラスカ旅行


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●第3日 15年1月18日(日) フェアバンクス→コールドフット

 北極圏にある町(正確には町、ではなくキャンプ)のコールドフットに行くツアーに参加する。2泊3日で、このツアーだけで10万円も使ってしまうのは痛いが、一人部屋の追加料金もあるし、料金自体は仕方ない。アラスカパイプラインの建設用に造られたダルトン・ハイウエイを北上し、途中で何箇所か降りて見物しながら夕方にコールドフット到着、2泊して帰りは小型飛行機で戻るという旅程だ。
 6時半に起床し、準備しレストランへ。パンが食パンタイプとベーグルが何種類か、シリアル、ソーセージ(マクドナルドの朝メニューのような)、ベーコン、卵は茹で卵のみ。ジュースはクランベリー、アップル、オレンジ、パッションフルーツ・グアバミックス、果物はシロップ漬けのもの。昨日のケーキのようなものはなく、多少マシだろうか。

 8時前に受付に行ってタクシーを呼んでもらう。その時、左手の中指の爪が割れているのに気づき、これは手袋をするときに非常に面倒なことになると感じて、昨夜に引き続き、またも借り物のリクエスト。残念ながら爪切りはないんだけど、ハサミはあるよ?と言われ、それでいい、それで切ってしまう。丁重にお礼を言い、返した。
 ツアー会社は小型飛行機の運用もしているため、空港の敷地にある。ホテルからは遠くて、22ドルほどかかった。それにしても、タクシーの運転手、スピード出しすぎで、こんな寒冷地で65マイル/hは怖い。ツアー会社には8:20頃に着いた。バウチャーを渡し、名前の確認。どっちがファーストネームなのかが分からない由、まあやむを得ない。
 ここで、昨日の鉄道で一緒だった中華系の方々と再会する。ホテルも一緒だった。聞くと、台湾の人が何となくリーダーっぽい感じで、それは英語が話せるからのようで、あと2人が上海から、残り1人はカナダ在住とのこと。上海の人は英語が出来ないようで、台湾の人が通訳していた。皆さんお金持ちのようで、ソニーα7にライカMのズミクロン35mmF2とかエルマリート21mmF2.8とかコシナフォクトレンダーのノクトン35mmF1.2とか、ライカRの19mmとか、重量制限どうしたんだと聞いたら、レンズは共用したりするらしい。中に1人、EOS 5Dmk3の人がいた。EOSの方がマイナーって、ちょっとヘン。
 そうそう、計量である。ツアー事務所で荷物の計量が必要だ。前のお兄さん(カリフォルニアから)は魔法瓶やLEDランタンまで持って来ていて、オーバーして何かを減らしていた。自分の番が来て、いきなり10ポンド近くオーバー。おかしいな。iPadは降ろし、他にも選んでいたら、まあいいでしょ、ということになった。iPadは大きなカバンに入れて、事務所に預ける。

 長い説明があり、ほとんど聞き取れないまま出発となった。どうやら、コールドフットに泊まるのは先の中華系4、カリフォルニア1、と日本の私の6人で、他は日帰りだ。さらに途中でフェアバンクスに戻るツアーの人が合流して途中で泊まり組は分離する模様だ。人数が多いので、通常の10人乗りワゴンではなく、24人乗りのバスとなった。ボンネットバスで、正面グリルには寒さ対策でカバーがかけられている(少し折り畳んでラジエーターに風が入る穴を作っている)。なんとなく並んでバスに乗ると、最前列、運転手の後ろが空いていた。反対側はカリフォルニアの人。側面の窓はダークなフィルムが貼られているので、写真を撮るなら正面から、という点でこの座席は最高だ。敢えて通路側に座って75mmレンズで撮る。丁度良い画角で、昨日の鉄道といい、今回の旅行でこのレンズは非常に役に立っている。
 運転席の上に温度計がついていて、フェアバンクス市内は5〜7Fの表示。つまり-15〜-14℃、郊外に出ると気温が上がって16〜25F(-9〜-5℃)となった。ここのところフェアバンクスは暖かく、昨夜のタクシーの運転手はクレイジーな暖かさと言っていたが、数字が裏付けている。通常は-20℃を下回るはずなのだ。まあ、寒ければ良いわけではなく、私としては、気温はどうでもいいから曇っているのは勘弁願いたいところ。
 最初に、フレッド・マイヤー向かいのスーパーで昼食やドリンク買う。ターキーサンドイッチ、ビーフと豆のブリトー揚げ、ピザスティック(これも丸めて揚げたもの)を買っておく。全部昼食で食べるつもりはなく、どれかを夕食にするつもりだ。

 しばらくエリオット・ハイウエイを走り、古い金鉱跡地でトイレ休憩。屋外にある簡易トイレ、便座に座ったらものすごく冷たいだろうと思う。幸い、座る方には用は無かったが。
 そこからすぐに、ダルトン・ハイウエイへの分岐となる。ハイウエイと言っても、通常の米国の広い道路ではなく、片側1車線の道路だ。所々、未舗装である。未舗装とはいえ、今は凍っているので、大きなバスに乗っていることもあり、あまり揺れず快適だ。行き交う車はほとんどが大型のトレーラーである。田舎の雪道によくある、路肩を避けて中央寄りを走るため、轍が3本になっており、トレーラーとすれ違う時は少し速度を落とし路肩に寄せて走る。その都度、トレーラーとこっちの運転手は手を挙げて挨拶していた。
 道路はアップダウンが激しい。特に下りでは排気ブレーキを多用し(何段階か効きを切り替えられる)慎重に運転していた。そえにしても、こんな環境下、よく走るバスだ。休憩時にタイヤを見たら、前輪がスパイクタイヤ、後輪がスタッドレスタイヤだった。

 休憩は都合4回ほどで、概ね2時間に1回くらいの頻度だ。トイレが近い息子を連れて来たら、ちょっと保たないかもしれない。それ以前に、車に酔うか。

 一番興味深いストップは、ユーコン川のところで、時期によっては宿泊施設も営業するのだろうか、建物があった。小さな小屋のギフトショップがあって、そこの親父がスノーモービルをデモしていて、ツアーの女性客がそれに乗っていた。この女性はけっこうお年を召した方で、元気だ。いや、コールドフットに行こうとする時点で元気だが(しかも日帰り組だ!)。スノーモービルの料金はなく、「お気持ち(寄付)」とのこと、こういう時にいくら出せばいいのか、って日本人にはなかなか難しい。スノーモービルは女性を後ろに乗せて、ユーコン川の方に降りて行った。ならば自分も、徒歩で。
 ユーコン川は結氷しており、川の上に立てる。なんとも妙な気分だ。運転手に写真を撮ってもらったら、橋を背景にするので、それより広い川面がいいなあと思い直して、運転手が居なくなったところで自撮りした。

 日が短い(概ね5-6時間程度)から、北極圏到達の頃にはすっかり暗くなっていた。モニュメントをバスのヘッドライトで照らしてくれるが、その分、写真では周囲の風景が全く潰れてしまって写らない。こういうのは、やっぱり3月くらいの方が良いのだろう。
 北極圏のモニュメントのところで、車が入れ替わる。滞在組は、コールドフットから来たワゴンに乗り換えた。他の人はバスでフェアバンクスに戻る。これはつらい。後でツアー会社のwebを見たら、日帰り組の帰着は23時半〜25時半くらいだそうで、帰りはまるまる闇夜だからつまらないと思う。我々滞在組は、3日後の午後に飛行機でフェアバンクスに戻る。小型機での地表に近い風景はさぞかし素晴らしいと思う。
 ところでこの交代のために、チップを渡すタイミングを逸した。ツアー会社のパンフレットにチップのガイドラインが書かれていて、$10/乗客/1日あたり、だそうだ。残りの日帰り組がたくさんいらっしゃるから、いいよね?

 さて、そこから先が辛かった。今までの乗り心地は、バスゆえのもので、10人乗りとはいえバスより小さなワゴン車は大いに揺れる。また、狭いから防寒着も脱げなくて、無茶苦茶暑かった。うつらうつらしながら乗っていると、19時前にコールドフットに到着した。やれやれ疲れた。帰路、天候不順で飛行機が欠航して、じゃ車で、とか言われたら泣くだろう。

 コールドフットは町ではなくキャンプ。サービスエリアのようなもので、トラックが給油したり休憩したりする施設だ。カフェと給油所があり、その向かいにスレート・クリーク・インという宿泊施設がある。宿泊施設には受付などはなく、諸々の手続きはカフェで行う。我々はツアー会社から既にチェックインのような状態にされているようで、宿泊施設のところでワゴンの運転手から鍵を受け取った。
 宿泊施設は予想以上に大きく、通路がトの字のように枝分かれして、通路の両側にツインの部屋が52室並んでいる。部屋は質素ではあるがきれいで、洗面台、トイレ、シャワーは個室内にある。シャワーはスタンドアップシャワーと言っていたが、80cm四方くらいの広さで狭いけど、シャワーは大抵立って浴びるし、別に問題はない。部屋の入口、窓側の天井あたり空調ダクトがあって送風音が始終するし個別の部屋での調整はできないものの、うまい具合に温度が調整されていて、22℃ほどで実に暖かく快適だ。インターネット環境は当然なく、携帯電話も圏外であるが、これから2泊、ネットを見なかったからといってどうということもない。携帯電話がつながらない代わりに、宿泊施設に共用の電話があった。部屋ではなく通路にあるので、個別に課金されるのではなくておそらくタダなのだろう。ただし通話は10分以内で、と書いてあった。

 カフェに行ってみる。中華系4人組と話す。彼らは明日のアクティビティについて悩んでいるようだ。日中のオプショナルはさらに北の峠に行くもの($109)、犬ぞり体験($129)で、犬ぞりは却下、北の峠も気乗りしない由、それは私も同感だ。オーロラが見えればそれでよいので、私は昼間のオプションには興味がないのです、と意見表明しておいた。
 売店でジュースとコーヒーを買って、朝買っておいたサンドイッチを食べたが、味がついていないと思うほどで不味い。大半を残してしまった。まあ、カフェは24時間営業だし、後で食べに行くかと思ってベッドでゴロゴロしていたらいつしか寝てしまった。

 21時半ごろ起きる。2時間くらい寝ていたようだ。だるいが起き上がってカフェに行く。今晩、もしオーロラが見られるなら早朝近くまで起きていることになるから、食べておくほうがいい。スタンダードバーガーなるものを注文。ドリンクはコーヒー。なお、ここでお酒を飲む場合は、カフェの売店兼キャッシャーを越えた反対側のスペースに行かねばならない。公共の場所での飲酒は場所が区切られているようだ。たしかに、本来はドライブインなのだからそれは正しいだろう。ハンバーガーの付け合せはテイタートッツにした。これは知らなかったので、何かと聞いたら、さいころのような形で、細かく切ったポテトをフライしたもの、というのでちょっと興味が湧いたのだ。プレートが来てびっくり、テイタートッツは日本でいうハッシュポテトのような、刻まれたポテトを小さな賽の目に固めて揚げたもので、それがお皿の3分の2を占めようかというほどの量なのだ。カリカリしておいしいのだが、如何せん絶対量が多すぎる。食べきれなかった。
 コーヒーはお代わり自由なのであるが、店員に頼むとなみなみと注がれ、飲んでいる途中でぬるくなってしまうので、自分でやっていい?と聞いて半分くらいを2回お代わりした。前の2日間に飲んだどこのコーヒーよりも良い香りがした。薄いのはアメリカだから仕方ないとしても、コーヒーが美味しいのはありがたい。昼間も暇つぶしにコーヒーを飲んでもいいかと思う。
 会計を済ませる。チップ用に小さなバケツのようなものが置いてありそこに任意に入れるのだが、あからさまで正直といえば言えなくもないか。現金の入ったバケツ、誰も持ち出す心配はないんだろうな。なにせここは逃げ場がないから(笑)。

 外にある温度計を見ると、5Fくらいで、-15℃くらいに相当する。風がないのでそれほど寒くは感じない。乾いた雪が降っていて、ガソリンポンプの照明でその様子がよく写った。ただ、雪が降っているということは上には雲があるわけで、オーロラが見える可能性はそれだけ下がる。少し不安だ。
 部屋に戻り、シャワーを浴びる。お湯は潤沢に出て、全く不便なところはない。気候からするといろいろ大変なんだろうけど、しっかりしていると思う。ついでに洗濯もしておく。ランドリー室は別にあるのだが、そんなに大量ではないし、ぎゅっと絞って部屋に干す。常時空調の空気が入れ替わっているからすぐに乾くだろう。
 外は雪だが、念のため、三脚にカメラ2台を固定するためのバーと、そのバーにはクイックシュー用のベースを固定し、カメラにはクイックシューをつけておく。準備をしたら、ちょっと外を見るか、と軽装でロビーに歩いていくと、やはり雲が覆っているようだ。中華系の方々が居て、交代で外を見に行くらしい。晴れたら教えてくれるというので、ご厚意に甘えて部屋番号を教えておく。部屋番号といえば、今日同宿しているカリフォルニアの青年、この宿泊施設に着いた直後に私に声をかけてきて「君は部屋を替えてもらわないのかい?、ここの壁は薄すぎて、あの人たち(中華系4人組)の声がうるさいよ」と。いや、壁が薄いんじゃなくて彼らは廊下向かい合わせの部屋だからドア開けっ放しにしているだけじゃないか、と思ったけどそういう文章を組み立てるのが面倒なので聞き流していた。結局彼は部屋を変えたらしい...つまり、彼の部屋番号は今は誰も知らないのだった。やれやれ、やつは気付かなかったらずっとこのままだろうけど、今となってはどうしようもない。

 深夜2時くらいまでは粘ろうと思い、部屋で日記を書いたりしていたが、せっかく交代で空を見ている人がいらっしゃるのだから自分も外に出てみるかと、とりあえず軽装、カメラは手持ちで雪の結晶などを撮っていたら、英語ができない上海の方が空を指差して何やら叫んでいる。出たか、いよいよ。急いで部屋にとって返し、防寒服を着ていたらノックの音が。声を聴くまでもなく「分かった!すぐ行く!」と叫んで部屋を飛び出した。と、手元作業用のライトを忘れたのでまた部屋へ。ええいもどかしい!もう一度ロビーに行くと、別のツアーグループのお客らしい韓国系と見える方がぼんやりと空を眺めていたので、「ちょっと、そっちじゃない、こっちに来てるよ!」と教えてあげると、向こうも大いに焦って、礼を言いつつ部屋に走って行った。
 宿の前の広場に出る。何となく空が緑色に見える。さっそくそこで撮り始めるが、ガソリンポンプやトラックの照明が明るく、周囲の景色やうすい雲に反射してコントラストが悪い。なるほどね、ここまで来てさらにワイズマンという村に行くツアーが設定されているのには訳があるということだ。つまりここは光害がある。トラックのデコレーションは黄色〜オレンジで、オーロラは緑色に写るから区別はつくのであるが、オーロラ部分以外の空が明るいとコントラストが低下してオーロラがぼやけた感じになる。

 初めてのオーロラは、あまり形は明確ではなく、全体に淡いものだった。でも、少しコツも分かった。長く露光している間はカメラに集中しなくても空を眺めながらでも良いし、カメラのことばかり考えていて肝心の印象が薄れるということもなく、楽しめた。1時半から1時間くらい、空を見ていたことになる。

 カメラを片付けようとレンズを見たら、乾いた雪が乗っていた。ふっと吹くと、飛んで行った。今日はいろいろとコンディションが良くなかったか。明日はワイズマン行きを申し込むことにした。


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