20年2月上旬
第5次欧州旅行


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●第2日 20年2月2日(日) ストックホルム→オスロ→ナルヴィク

 朝早く目が覚めた。時差ボケである。昨夜、髪を洗っている時に水が合わないと思っていたが案の定で、髪の毛がボサボサである。丁寧に整えて、1階(日本式に言えば2階)のレストランに向かう。ビュッフェの朝食はなかなかヴァリエーション豊かで、北欧ならではの肉団子もあり、香ばしくて美味しい。また、ベリー系とシトラス系のスムージーがあり、これが素晴らしかった。

 本日の予定は本来であれば、夕方までストックホルム市内を観光し、その後夜行列車でナルヴィクまで、という旅程だったが、脱線で区間運休しているので、今日のうちにナルヴィクまで飛んでそこで一泊する旅程に変更している。列車の料金約2万3千円は手数料なく払い戻されたが、飛行機は直前に予約したので高い料金帯しかなく3万円以上かかり、さらにナルヴィクでのホテルで9000円、痛い出費である。しかしここでナルヴィクに行かないと先の旅程が無駄になるから行くしかない。
 で、短くなってしまった市内観光である。飛行機は13:20発なので1時間前に空港に居るとしてその1時間前に中央駅出発だと11時半には駅に居なければならない。博物館の類は冬ということもあってか営業時間が短く開館が遅めで、例えばヴァーサ号博物館は10時開館で、中途半端だ。となると、時間を気にしながら場所を探すより地下鉄アートを見て回るのが良さそうだ。ホテルのチェックアウトは12時とのことなので、荷物は部屋に置かせてもらい、ドントディスターブの札を掛けておく。札の表裏で「理由」が違っていて、「TVチャンネルを選ぶのに忙しいから」にしておいた。ユーモアがあって良い。

 ホテルを出てすぐ左の入口を入ると、エスカレーターがあり地下に降りられる。そこに地下鉄のTセントラーレン駅がある。地下鉄はトゥネルバナ(つまりトンネル鉄道)と言い、シンボルはTである。切符は自販機で買うが、クレジットカードしか使えない。37SEK(420円)で区間に関係なく1時間15分以内の乗車が可能ということで、隣駅まで乗るだけでは割高だが、改札を出ない限り時間一杯使えるから地下鉄アートを見て回るには便利だ。改札機はカードや携帯端末での入場用で、紙の切符にはバーコードなどもなく、有人改札を通る必要がある。ここだけちょっとマニュアル的風習が残っている。係員は有効期間部分を見ているようだ。

 事前に予習していなかったため、思いつきで赤の14号線に乗って携帯で検索してみたら、アートがあまりない路線のようだった。すぐに地上に出てしまい、そもそも駅にアートを描く壁や大きな天井が無い。引き返す。最初のTセントラーレン駅に戻り、青の10号線に乗り換えることにする。乗り換え通路に立派な壁画というか天井画があって驚いた。これが各駅にあるのか。そこからクングストレッドゴーデン(王立公園)、折り返してセントラーレンで降りず次のロードフーセット(市役所)、フリードヘムスプラン、ヴェストラ・スコーゲンで降車し、壁や天井を見て回る。なかなか面白い。有名なだけに、落書き被害もあり、修復の費用も相当かかっているらしい。
 ヴェストラ・スコーゲン駅のところで1時間10分ほどになったので、一旦改札を出ることにする。自動改札機は出場時に何もチェックせず、ただ出場するのみであった。時間のチェックは要らないのか、出る時も有人改札を通るべきだったかは分からず。時刻を見ると、ここでそろそろ戻らねばならないようだ。物足りないが、こればかりはどうしようもないから、切符を買ってTセントラーレンに向かう。お腹の調子が悪いから、ホテルの部屋で用を足すことが出来るのは良かった。何しろ初めての地では公衆便所などを探すのも手がかかる。

 ホテルを出ると、けっこうギリギリの時刻で、空港まで38分かかる在来線で向かうのは諦めた。こんなことならアーランダ・エクスプレスは往復割引券を買うのだった。昨夜は景色がほぼ見えなかったが、今は晴れているのでストックホルム郊外のきれいな風景が楽しめた。

 アーランダ駅はターミナル2〜4とターミナル5の2箇所あったが、昨日乗った、ストックホルムから見て手前のターミナル2〜4駅で降りた。これは結果的には間違いで、終点のターミナル5まで行くべきであった。地下駅から上がってから気づき、今更戻るのも時間がかかるし(なお、このターミナル間の乗車は無料)、空港内を歩いて所定のターミナルに向かう。幸い、大した距離ではなかった。スカンディナヴィア航空のカウンターに行くと、有人の窓口はなく、セルフチェックイン端末で搭乗券と荷物タグを出力する。バゲージドロップもセルフで、タグを荷物に付ける前にバーコードを読ませたらすぐに荷物が動き出したので慌てて止めてエラーを発生させてしまった。係員はその場にいなかったが、少し離れたところから見ていた方が来て、エラーを解除してくれた。お礼を言って、タグを荷物に付けた上で最初からやり直し、今度は無事に終わった。
 そこからすぐ近くに手荷物検査場があり、長い列が出来ていた。ここの検査機は一人ずつ荷物をコンベアに載せるやり方なので、どうしても流れが止まってしまうことがある。
 手荷物検査場を抜けると免税店が並ぶ一角で、飲み物でも買うことにする。先ほど検査前に放棄したのだ。現金を全く使っていないので高額紙幣しかなく、後日のスウェーデン北部での滞在で小銭が要るかと思い崩しついでに、ということもあるが、キャッシャーで500SEKを出したらちょっと面倒そうな顔をされた。小銭が棒状になったアレを机に叩きつけ、小銭を作ってくれた。つまりレジの中に小銭がそもそも無かったのだ。本当にだれも現金を使わないのか。
 他の店を見ながら搭乗口まで歩く。北欧らしい、冷たいオープンサンドイッチがあって美味しそうだが、軒並み80〜90SEKとさすがの北欧かつ空港価格である。まだ食欲がないのと、オスロ空港でも乗り継ぎ時間があるので、ここでは何も買わなかった


 ゲートに来た。急遽取った航空券ということもあり、座席は選べずここからオスロまでは最後列のB席、窓側でも通路でもない。そういう席に長く座っていたくないので、最終搭乗時刻ギリギリまで待って飛行機に向かう。自分の座席はもちろん最後列なのは知っていたが、行ってみたら、さらに窓無しというオマケもついていた。ひどい…これは辛い。見回すと、自分の座席の左右には誰も座っていなかった。いや、それどころか、最後列2列分が空席だった。これは、ひょっとするとまとまってキャンセルが出たのかも知れない。しばらく待つと、搭乗完了と業務放送があったので、キャビンクルーに席の移動を希望し、了解を得た。西向きの航路だから右側の窓側席に移動した。駐機している今はこちら側が眩しいが、しばらくの我慢だ。

 しばらくして飛び立つ。天気が良く気持ち良い。フィンランドが森と湖の国であることはイメージ通りだったが、スウェーデンも同様に湖が多く、きれいな景色だった。
 ノルウェイに入ると、木陰に少し雪の跡が見られた。赤い客車の長距離列車が見えて、09年春のベルゲン線を思い出す・・・あそこはきれいな路線だった。しかしオスロも雪はなく、想像以上に気温は高い。機体後部からタラップで降りられるので外の空気が吸え、良い気分転換になった。
 オスロ空港は10年ぶりだ。前と変わらず、すっきりとしたデザインで空間が広く、気持ちが良い場所である。入国審査はないが、一応国外からなので税関を通り乗り換えのゲートへ進む。客は多く、それぞれの店は繁盛していて活気があった。食事は、あまり食欲がないのでレストランには入らずタコスミートを挟んだパンにした。けっこう量がある。パサパサであまり美味しくないが、今晩のナルヴィク到着は時刻が遅く、地方都市、日曜、夜となれば店はほぼ閉店だろうから、ここで食べておくしかあるまい。
 賑やかだと思っていたら、ゲートの近くに子供用のスペースがあった。スーツケースに子供用の椅子が付けられているのを発見、上手いやり方だと思う一方、動いている時は危ない気もする。さすがに移動中は座らせないだろうけど。

 定刻に搭乗開始。外に出て、機体後部から乗り込む。この便では通路側の席である。先ほどのように席が空いている様子はなく、満員御礼状態であった。まあ、満席で行けなかったら途方に暮れていただろう。急遽取っても乗れたことに感謝するしかない。

 天気はあまり良くないようだった。左側(つまり西側)の座席だったので、眩しくて窓側の人は早々にシェードを下げてしまったから、遠目に景色を眺めることもできなかった。残念だ。

 ナルヴィク空港に到着する。ナルヴィク空港、と書いたが、正しくはハシュタ/ナルヴィク空港エヴェネスと言い、ハシュタとナルヴィクの中間地点にあり(ハシュタの方が少し近い)、エヴェネスが所在地だ。雪が降っており、タラップを降りてその感触を確かめる。サラサラの雪を踏みしめるといかにも北国に来たように感じられ、気分が良い。しかし、北国と言ってもこの地はメキシコ湾流の影響で緯度(北緯68度)の割には温暖で、気温は札幌と同じかむしろわずかに高いくらいである。
 荷物を待つ間、近くにあるハーツレンタカーの窓口に行って、明日の市内で借りる予定を今ここからに変えられるかと言ってみたがさすがにダメであった。エクスペディア経由なので、まずはそっちの予約を変えてくれ、と。それはごもっともである。いまその手続きをする時間はなさそうだし、ホテルに着いてから明日の開始時刻の変更をしよう。列車の到着時刻に合わせて14時から予約しているが、それをホテルのチェックアウトに合わせ10時に変更、とか。
 荷物が出てこないので先にトイレに行ったら、便器の位置が高くてノルウェイ基準(?)を実感する。さらに待って荷物を受け取り、出口を出るとすぐ目の前に空港バスの乗り場がある。空港バスは、ノルウェイの他の空港でも見られる白いバスで、運転席上の表示部にFlybussenと大きく出ているので分かりやすい。料金は乗るときに運転席にあるクレジットカード端末で払う(297NOK、3500円)。運転手さん、現金を受け取ろうという仕草が全くない。とはいえどのみち私はノルウェイクローネを持っていないのであるが。
 バスに乗り込む。乗客は3分の1くらいで空いている。車内は強烈な暖房がかかっていて暑い。空港から町まで結構な距離があり75分もかかるのでこの気温に耐えられるか心配なほどである。そういえば、先ほどの機内にダウンジャケットの下がTシャツ、なんて人がいたのを思い出した。極端な温度差に対応するにはああでもしなければならないか。でもやはりある程度微調整はしたいよなぁ。
 外の景色は、暗い上にダークな窓の色もあってほぼ見えず、暑い車内ということも相俟ってなんだかストレスフルな道中であった。

 途中、止まったところに今晩泊まるEnter Hotell(ノルウェイ語のホテルはlが2個)という文字が見えたので慌てて降りた。このホテルは受付に人がいなくて、ホテルに入るときパスコード(事前にメイルで連絡が来る)の入力が要るのだが、それが合ってないので不審に思った。誰かが出てきたついでに入ってみたが、何だかおかしい。そうか、地図を見よう、Google mapを開けると…やってしまった。ここはビイェルヴィクであってナルヴィクはまだまだ先だった。まあ当たり前で、ナルヴィク行きのバスに乗って途中で降りているのだから。となると、ナルヴィク中心までどうやって行くべきか。地方空港だし、空港バスは乗ってきた便が最終の可能性が高い。そうするとタクシーだ。ちょうどバス停のところにタクシー会社があるのだが、日曜夜ということもあってか、事務所は真っ暗である。そこで、少し歩いてガソリンスタンドに行き、そこにあるコンビニで店員さんにナルヴィクセントルム(中心部)に行きたいんだけど、と言ってみた。すると、携帯で調べてくれて、先程あったタクシー会社の電話番号を2種類教えてくれた。一つはタクシー会社店頭にあったもので、もう一つはドライバーの携帯のようだった。丁寧にお礼を言って退出する。

 タクシー会社の事務所まで戻る。深く積もった雪の上を、荷物引いて歩くのは大変で、こうなるとサラサラの北国の雪の感触、どころではなかった。次に買う時はローラーの大きいスーツケースにしよう、いや、この雪では大差ないか、などとどうでもいいことを呟きながらえっちらおっちらと進み、戻って来た。そして電話をしてみたら、なんと通じない。無効な電話番号とアナウンスされる。おそらく、無効なのは相手の電話番号ではなく自分の携帯電話のローミングなのだろう。国番号を付けたりしたが、全部同じだった。やれやれどうすればいいか。しばらくボーッとしていたら、他の客が来てバス停のところに立っているので、どうやらまだバスはあるようだ。さらに、タクシー会社の人らしき人が来て事務所のドアを開けたので、ナルヴィクに行きたいんですがと言ってみたところ、ちょっと待ってくれ、調べてあげるから、と。調べるということはタクシーを出してくれるわけではなさそうだ。車は1台、目の前にあるのだが。待っていると、事務所から出てきて、
「15分くらい待てるかな?」
「ええ、もちろん。」
「そうしたら、路線バスが来るから。」
「おお、ありがとうございます!」
ということになった。そしてその人は、タクシー車両の隣に停めてある自家用車の雪を払って、帰って行った。まあ、日曜日だし早く帰りたいよね。

 しばらく待つと、バスが来た。運転手にナルヴィク・セントルムに行きますかと訊いたら、こっちは反対方向だよ、あそこに来ているバスに乗って!と言われた。そう、左側通行の感覚で反対方向のバス停に立っていたのだった。恥ずかしい。バスの表示にナルヴィクともう一つ地名があったので勘違いに気付けなかったのだ。
 正しいバスに乗り込む。路線バスと言えど長距離用の4列シートで、大きな荷物はトランクに入れる。先程の空港バス同様にクレジットカードでの決済だ。ビイェルヴィクを出ると人家はまばらになるが、バス停は意外に多く、2-3分おきにある。乗客は十数人だし、ほとんどの停留所は降りる人がいないので通過して行く。外がほとんど見えないのになぜバス停があるかが分かるかと言うと、運転席のところにモニターがあって、これから行く先の数ヶ所分のバス停の名前が表示されているのだ。しかも、それぞれにあと何分で着くかも併記されており、大変分かりやすい。10年前に、ベルゲン郊外のエドヴァルド・グリーグの家に行く時に、あと幾つで降りるべきバス停なのかが分からない上に、バス停の表示にも地名がなくて、近くの商店の名前に地名があるかも、とか見回して降りたのを思い出す。ベルゲンのバスも今ではこういう表示が装備されているだろうか。
 しかし、今は表示を気にする必要はない。何故なら終点まで行くからだ。もう途中では降りない・・・最初からそう思って乗っていれば良かったのだが、暑さとホテル名で慌ててしまった。まことに間抜けである。
 途中、大部分が降車し(特に市役所前とか)ナルヴィク・ブススタシヨーン(バスステーション)で降りる人はほとんど居なかった。何台か自家用車が迎えに来ていて、地方都市ゆえか、バス停に余裕があるのは羨ましい。そこからホテルまでは歩いて数分だった。理想を言えば、一つ手前で降りておくべきだったようだが、まあ、ここまで来れば大差はない。

 気温は-10℃くらいで、さほど寒くはない。ホテルは坂を登った先の交差点を渡ったところにあり、1階(ノルウェイのフロアは日本と同じ数え方)は店舗で、ホテル入口は建物の横にあった。パスコードを入れて、ドアを開ける。受付のようなものはなく、そのままエレベーターに乗って4階に上がる。このエレベーター、ドアが引き戸ではなく開き戸のタイプで、古い建物では時折見かけるが、ドアが1枚だけなので、エレベーターのかごが昇降すると壁がむき出しで動いていくように見えてちょっと怖い。
 部屋番号はパスコードと共に事前にメイルで送られて来ている。405号室だ。メイルで送られて来るということは、つまりドアは施錠されていないわけで、部屋の机の上に鍵が置いてあった。わざわざ不正に泊まりに来る人はいないだろうし、これもアリだろう。ただ、間違えてしまう人がいると困るけど。

 部屋は至ってシンプルなシングルルームである。暖房は窓側のヒーターだけであるが十分暖かい。トイレ・シャワールームには電熱器があった。ドアを開けると頭上にあって、ほんわかと暖かい。シャワーを浴び、レンタカーの時間変更の希望を出して、ベッドに入った。



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