20年2月上旬
第5次欧州旅行
●第4日 20年2月4日(火) カッタリヨック→キルナ→カッタリヨック
時差ボケのためか夜半何度も起きたが、5時頃、本格的に目が覚める。外を見ると晴れているので、大急ぎで準備してオーロラ観察に出かける。気温は-10℃ほどで、風もなく快適だ。昨晩見た暖を取る小屋のあたりで場所を決める。除雪車が溜めた雪の塊の上のようで、場所によって硬さが違い、三脚の設置に少し手間取った。空を見ると、うっすらだがオーロラが見えていて、焦る。左方に、昨日足止めされたリクスグレンセンの街の明かりがあってオーロラが少し見えにくい。加えて魚眼レンズでは宿の看板や小屋が画面に入ってしまう。もっと暗くて周りに人工物がない場所を後で探そう。今日はキルナまで片道130kmの往復があるから、E10沿いで北の方向に開けている場所を探すことができると思われる。
1時間ほど粘って、オーロラが見えなくなったので撤収する。6時になると、道路向かいの建物の外の明かりが邪魔になることも把握した。やはり夜の間に粘る必要があるようだ。
朝食にラーメンを食べて、しばらく休んだあと、キルナ行きの準備をする。キルナのあるLKAB(ルオッサヴァーラ=キルナヴァーラ株式会社)の鉄鉱山の見学に行くのだ。キルナからの帰路は陽が沈んだ後になりオーロラ撮影ができるかもしれないので、基本的には機材一式は持っていくことになる。鉄鉱山のツアーに持参のレンズ全部は必要ではないが、見学ツアー中(2時間45分もある)車の中に残すのは危ないので、トランクに置く荷物は減らし、三脚やその他道具類、厚手の手袋などをバッグにまとめて入れておく。
9時半頃出発する。天気は晴れ、予報通りである。ちょうど日の出から正午くらいまでのドライブで、南東に向かって進むからサングラスも持参している。これは実際役に立った。何しろ太陽の位置が低いのだ。道路はきれいに除雪されていて走りやすい。5年前のアラスカ旅行でフェアバンクスからコールドフットまでツアーバスで移動した時、運転手が下り坂で排気ブレーキをこまめに調整して安全速度を保つようにしていたのを見たので、それに倣って慎重に運転する。特に、初めての道路で、斜度やカーブの場所の予備知識が無いから慎重にならざるを得ない。カーブの方向は携帯電話で表示しているマップが役に立った。道路はほぼ一本道なのでナビとしては当面要らないのだが、進行方向の様子が見られるのは安心感がある。しばらく60km/h巡航、下り坂かつカーブでは50km/hくらいで運転していたところ、後続車にどんどん抜かれる。一定距離ごとに退避場所があるのでストレスにはならないものの、どうも遅すぎるようで、徐々に速度を増して行き、75〜80km/h巡航にした。それでも後続車は追いつき、追い越していく。どうやら皆さん、90km/h以上で走っているようである。まあ、交差点はほとんど無いし、道の線形が分かっていれば速度は出しやすい。それに、起伏も緩やかである。
風景は雄大で美しい。雪道に朝日が反射し、テカテカのミラーバーンが見えることすら美しい。いや、ミラーバーンは怖いものだが。助手席には動画機をセットしているが、これならスティルのインターバル撮影の方が良かったか。待避所がちょうど良い場所にあればそこで停めて撮影するのだが、待避所は展望台ではないので、必ずしも都合よい場所にあるわけではない。これは仕方ないことなので、景色が良い待避所で車を停めて撮影していた。
道中、ほぼきれいに晴れていた。カッタリヨックでは-10℃くらいであった気温は内陸に入るに従って低下し、-20℃近くの場所もあった。やはりカッタリヨック付近はメキシコ湾流からの暖かく湿った空気が流れ込むところなのだろうか。
出発して2時間半後、キルナ市街に入る。途中、何度も止まり景色を眺めながらも順調なドライブであった。市内で1ヶ所、曲がるところを間違えたが、ロータリー式交差点はこういう時便利で、簡単にUターンが出来る。ロータリーに入ってしまえばロータリー内が優先であり、直交する交差点のように停止して対向車とのタイミングを見計らう必要が無いし、Uターンするのに切り返しが必要かどうかなどを考える必要もない。
無事に目的地の駐車場に着いた。事前の案内だと、受付で申告すると4時間分の駐車券がもらえるとのことだったが、駐車場にはゲートがなく料金が発生するような感じではなく、無断駐車をチェックする係員が巡回している様子もなかった。
まずは周辺を散策する。気温は-16℃、少し風があり寒い。街は少し小高いところにあって遠くに鉱山から鉄鉱石を運び出す貨物列車が見えた。駐車場から少し下ると公園があり、雪像が並んでいて、ミニ雪祭りをやっていた。雪像に順位が書いてあり、なんらかの投票で賞を決めたようだ。
駐車場に戻り、近くのハンバーガーショップでセットメニューを注文した。店の人は無言でクレジットカードの決済端末を差し出した。やはりここでも現金を使わなかった。ハンバーガーは大きく美味しい。フライドポテトに塩が振っていないので、自分で持ってきて振らなければならないのは少々面倒だが、他にもスパイスがあるので試しにかけてみたらちょっと変な味になってしまった。セットのドリンクはロカ・シトロンを選んでみたところ、柑橘フレーバーの無糖の炭酸水だった。美味しい。ゆっくり食べて、ツアーの窓口に向かう。名前を確認して、駐車券をもらった。ツアーの集合は13:45で、しばらくベンチに座って待つ。
集合時刻になり、名簿チェックをして、バスに乗り込む。ここから鉱山の中まで、バスに乗って移動する。ツアー定員はバスの座席と同じ51名とのことで、定員いっぱいの客が乗り込むと客席ギッチリ、着膨れしている人が大半でもあり、大層狭苦しかった。
鉱山の入口ゲートを通り、構内を進むと山の壁面に鉱山への入口が現れた。坑道内ではフラッシュ撮影をしないようにアナウンスされる。最後列に座っているので前が見えないのは残念だ。坑内には交差点や分岐があり、大きなバスは器用にそこを曲がって行く。しばらく走り、地下540mのビジターセンターに着いた。
深い坑内は地上の気温に関係なく年間通じて8〜12℃とのことである。地中の気温は安定しているのだ。以前行った岩手県の龍泉洞を思い出した。あそこも気温は通年10℃ということだった。キルナのいまの地上の気温-16℃に較べると、坑内の10℃は外に比べ+26℃というわけで、厚着しているとものすごく暑い。そんなこともあろうかと、自分は日本を出発した時の軽装で参加した。夜間のオーロラ観察用の防寒着と靴は車のトランクに入れている。
ツアーコンダクターは鉱山会社の人で、非常に詳しく、長々と話してくれる(説明は英語)。自分は材料系の学科を出ている上に、父がかつて川崎製鉄で働いていて、工場見学に行ったり製鉄についての本を読んでいたので、鉄鉱石についてもある程度は知っているつもりだったが、それにしても詳しすぎて話についていけなかった。トリップアドバイザーの口コミに、「面白いけど飽きた」「大半は鉱山会社のプロパガンダだ」などと書かれていたのを思い出す。しかしプロパガンダって、まあ見学ツアーなんて広報活動そのものだろうし。確かに、環境に配慮し〜、持続的成長が〜、世界に先立って従業員の福利厚生に〜とか、いろいろあったが、それはそれで良いじゃないかと。
暑いと予測して軽装にしていたのに、それでも暑く、薄手の上着は脱いだ。それでもまだまだ暑かった。坑内の展示を見ながら、途中に一箇所、休憩用のカフェがあって、そこでクッキーと飲み物が出た。昔の鉱夫用のカフェテリアを模していて、これはこれで趣があって良い。ただし、この区画はさらに暖房を入れてあり熱いコーヒーが飲みにくいほどだった。冷たい飲み物が先になくなった。
説明が一通り終わると、ビジターセンター入口近くに分岐する坑道があり、そこに博物館があった。昔の道具や鉱夫の家の再現など興味深い。なんと通勤用のトラムの電車まで展示されていた。今は車社会であり、キルナに電車は走っていない。
坑内ツアーは終わり、バスで観光案内所まで戻る。すっかり日が暮れて、均等に街灯が並ぶ鉱山が船のように見えた。バスを降りたらその場で解散となった。案内所のトイレを使い、さてこれから130kmの夜のドライブである。携帯電話で地図を出し、帰路の設定をするがその前に、念のため給油ということで近くのガソリンスタンドを検索した。数百m以内にありすぐに着いた。セルフなので、自分でカードを読ませて給油するのだが、何か間違えたのか給油が始まらなかった。カード読み取り機は1台しかなくて、他の人が別のポンプで給油をしようとしていたのでその人が終わるまで待っていたら、こちらの困惑が伝わったのか、カードの読み取りを手伝ってくれた。今度は上手く行った。ありがとうございました。
帰路は右手(北東方向)に湖が見えるので、道路の退避場所で視界の開けた場所があるかどうかを見ながら進んでいく。しかし天気は下り坂で、厚い雲がかかっていてオーロラは見えそうもない。それどころか、雪が降って来た。吹雪いているわけではないが視界は悪くなる一方で、地図に表示されるカーブを確認しながら運転する。降る雪の中から待避所が突然現れると、一瞬カーブと勘違いして怖かった。それでも、行きと同じ道だから、起伏やカーブも何となく覚えていて走りやすかった。帰路は80〜85km/hで巡航した。それでも追い越していく車がいたが。
特に問題もなく、すんなり帰ってきた。しかし雪は多くなる一方だ。今日のオーロラ観測は無理と判断し、ラーメンを作ってシャワーを浴びて寝ることにした。
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