20年2月上旬
第5次欧州旅行
●第9日 20年2月9日(日) ロヴァニエミ→ヘルシンキ
今日はヘルシンキへの移動のみ。待望の鉄道だ。少し早めに起きて食堂に行ったら、照明が暗くてまだ営業していないのかと思ったが、ちゃんと先客もいたのでパンを焼き、ハムとチーズを取って食べた。
食堂の入口のところが宿の事務所になっていて、宿泊料の精算をする。あれ、払ったような気がしたが、ブッキングコムでは前金として40%分が事前に請求されていたのだった。残金を払い、荷物をまとめて、駅に向かう。
駅には1時間くらい前に着く。本日の列車はIC24、ロヴァニエミ09:47発→ヘルシンキ17:35着で900kmを7時間48分で走行する(表定速度115km/h)。鉄道は他の物価に比べて安価で、この長い区間の料金は普通で34.8ユーロ、エクストラで47.8ユーロである。今日はエクストラクラスを予約してある。エクストラはコーヒー、紅茶が自由に飲めるのと、1+2列の座席、というのが特典らしいが、本日の車両は古い世代のようで2+2列シートの配列のうち、進行方向左側を1列のみで指定するやり方になっている。これはフィンランド鉄道のwebでの予約時の座席表にも反映され、左側2列のうち通路側が灰色になって選択出来ないようになっていた。座席の向きはそれぞれの車端部から中央に向かっていて中央が向かい合わせ、各座席の方向が変えられないという、ヨーロッパではよくあるタイプだ。私は進行方向の反対を向きたくないので、インターネットで情報を集め、進行方向に向いていてなおかつ窓が見やすい席を予約した。全く便利な世の中になったものだが、しかし、それ以前に座席が回転できて窓とピッチが合ってくれてもいいのだけどね!ちなみに、5年前に乗ったアラスカ鉄道では車端の1区画を除き全部の座席が進行方向を向いていた。地図を見るとあそこは終着駅で方向転換のためにループできるようになっているようだ。アラスカはとにかく広いからね。
それはさておき、まずは荷物を置いて、全体の編成の確認をして行く。全ての車両が2階建になっている。機関車は後方から押す形になり、昨日見たソ連製ではなくジーメンスの機関車だ。客車には動力がないので、台車があるところを除きフルに2階建になっていて、出入口は低くなった1階部分にある。日本だとプラットフォームが高いので、車端部の1階に出入口があって1階2階にそれぞれ階段で行く形だが、フィンランドでは1階から中2階、2階に上っていく感じだ。だから2階の席は荷物を持って上がるのが大変で、荷物用のエレベーターもあるが、今は時刻が早すぎるのか、エレベーターのドアが開かないようになっている。座席はオープンタイプの他に、2人用、4人用のコンパートメントもあるが、車端の台車上、中2階の位置にあって列車全体からすると数は少ない。食堂車は1階、中2階部分を使っていて、厨房部分は狭くおそらく温めるだけで、座席を多くレイアウトしていて、狭い中効率良い設計だ。その車両の2階は4人向かい合わせ席と1人用席が窓に向かっているタイプだった。どういうクラスなのだろうか。自分がwebで予約する時には全く気付いていなかった。
定刻になり、無音で発車した。加速にギクシャクしたところはなく、スムーズである。大きな車体で腰高に見えるが、広軌ということもあるのか、乗り心地は大変良い。天井に設置された情報表示に次の駅や到着時刻、現在の速度が表示される。ちょっと字が小さいのが惜しいが、フィンランド人は皆さん目が良いのかな。速度は最高で199km/hまで上がった。客車の外に表示されている200km/h通りであった。客車には重量も記載されていたが、非常に重くて51tもある。モーターなどがないことを考えれば、2階建新幹線の車両(例えばE4だと8両で428t)と同じくらいで、こういう車両を地盤の固い広軌の線路で走らせているからか、乗り心地は良い。
車内は途中までガラガラであったが、ケミ駅からは徐々にお客が増えて、混み始めた。家族やグループでもないのにエクストラクラスの2列側に座っている人は、他人と密着して座るわけで、ちょっとかわいそうである。
2階席は外の景色がよく見えて楽しい。まあ、一面雪景色なのでどこも変わらないだろと言われそうであるが、それでも地域差はある。どこでも広く見られるのは林業で、森を一定区画で区切って伐採、植林しているのが見えて、停車駅にはほぼ必ず丸太が積まれ、専用の貨車が並んでいた。平坦な場所で林業が出来るのは有利かもしれない。そう言えば、列車は全く、山の中を走らずトンネルもない。
ケミ駅を出た後、まだ12時前だが混まないうちに食堂車に行くことにした。カウンターで食べ物を選び、精算して席に座っていれば持ってきてくれるようだ。北欧らしく、ミートボールにした。サイズは普通。大きいのはジャイアントサイズとあったがきっと本当にジャイアントなのだろう。ついでにビールも注文。今回の旅行で2度目の飲酒である。カルフという銘柄で、フィンランドのビールだ。ビールだけ先に来てしまい、食べ物と一緒に撮りたいとしばらく我慢。傍から見たらかなり変だよなこれ。
ミートボールは安定の美味しさ。今回、ストックホルムとナルヴィクのホテルの朝食で食べたものは割と固めで香ばしい感じだったが、この食堂車ではすごく柔らかく、マイルドなグレーヴィソースと付け合わせのマッシュポテトの滑らかな食感も合わせて、食べやすく美味しい。家族と一緒ならジャイアントサイズを注文して食べたいところだ。しかし、ベリーのジャムが一緒なのはやっぱり苦手だ。ノルウェーのベルゲン線の食堂車でも同様だったが、当時面食らったものだ。
美味しくいただいて、自席に戻ってきた。
南に進むにつれ、雪が少なくなり、湖の湖面が見えるようになってきた。元々曇っていた天気だが、日没近くなり急速に暗くなって外の景色はあまり見えなくなった。こうなると長い乗車はちょっとつまらなくなってしまう。5年前のアラスカ鉄道では、出入口ドアの上半分が開放出来て暗い外でも景色は見られたのだが(その代わり、当然寒い)…って、あれは別に乗客サービスではなくて車掌さんの仕事用であり、他の列車に求めるのは無理がある。
パシラ駅を過ぎるともうヘルシンキはすぐ近くで、列車はゆっくり進む。すれ違う列車が多くなり、都会に来た感がある。郊外へ行く列車も車体が大きく、余裕がありそうだ。明日の空港までの列車が楽しみだ。
ヘルシンキ中央駅に到着した。ずっと座ってお茶を飲んでいただけだが、さすがに疲れた。荷物を持って慎重に階段を降りる。結局荷物用エレベーターは使わなかった。他に使っている人も居なかった。壊れていたのだろうか?
ホテルはここも駅前で、オリジナル・ソーコスホテル・ヴァークナという名前だ。ビルの中にあって、ロビーは2階分をぶち抜きにして、2階の一部分を食堂に、他のフロアは客室で、長い廊下の両側に部屋が並ぶ。エレベーターが6人乗り3機で、部屋数に対してキャパが足りないような気がする。何しろ、スーツケースを持っていると3人乗れるかどうか、という狭さだ。
部屋は立派で、ベッドも大きい。今回旅行で初めての浴槽付きであるが、カーテンがなく、シャワーの脇に小さな板があるだけで、これは絶対に床が濡れることになる。これも今回旅行で初めての冷蔵庫付きの部屋であったが、鍵がかかっていて使えなかった。ミニバーになっているので、客室の清掃後に鍵を開けるのを忘れた、とかだろうか。ミニバーの中身に用はないが、冷蔵庫は使いたいなあ。
夕食はヘルシンキ中央駅のバーガーキングにした。駅も建物の壮麗な内装の中、バーガーキングの設備をうまい具合に入れてある。天井が非常に高く、皆の話し声がぐわんぐわん響いていた。誰だ、フィンランド人は話さないなんて言うやつは(笑)。
入口にある注文用のボードで注文し、クレジットカードで決済する。店員との接点は、番号が出て受け取る時だけだ。それにしても、今回現金を使っていない。明日帰国だがユーロは将来使えるだろうから再両替はやめておこう。
番号が出て、ハンバーガーを受け取って飲み物をカップに注ぎ、適当に空いているところに座る。広い空間で、座席が多いので場所探しは楽である。フィンランド人に倣って、距離を置いて座れる場所を選んだ。
食事の後、周りを歩く気力もなく、ホテルの建物の地下にあるスーパーマーケットで飲み物を買う。ムーミンソーダは濃厚なブルーベリーのサイダーだった。美味しい。日本でも手に入ると嬉しいのだが。
シャワーを浴びて(案の定床が濡れた)、パッキングをして就寝。
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