20年2月上旬
第5次欧州旅行


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●第3日 20年2月3日(月) ナルヴィク→カッタリヨック

 早朝、時差ぼけで起きた。窓の外からディーゼルエンジンの音が聞こえる。見ると、歩道の除雪をしていた。雪の多い地方では、どうしても道路優先だし、人通りの少ない歩道は雪が溜まってしまいがちだから出てこれは良い。昔、岩手県北上市にいた頃、街から少し外れにたところにいたので、車道を除雪した雪が歩道を埋めてしまって歩きにくいと感じたものだった。

 一度目が覚めるともう眠れない。しばらく寝転がりつつ起きていて、7時になったところで食堂に向かった。食堂は2階にあっ
て、ハムとチーズとパン、魚の漬けたものがあった。食堂には他に誰もいなくて少し肌寒く、寂しい朝食であった。パンは美味しく、魚を漬けたものも美味しかった。普通の酢漬けに加えて、トマトソースとカレーソースがあった。魚はサバで、それぞれのソースの個性が面白い。

 食事を済ませて廊下に出ると、別室にいたホテルの人に呼び止められた。このフロアで支払いをするようだ。確かに、入口にはレジも何もなかったし。といっても、ここにもレジがあるわけでもなく、普通のオフィスにクレジットカードの端末があるだけだった。この人と、もう一室オフィスがあったからもう一人従業員がいるのだろう。この二人が、朝食を準備し部屋のセットをして、あとはお客にメイルを出して鍵を部屋に置く、と。合理的ではあるね。

 しばらく外を散歩して、レンタカーを借りに行くことにする。時間は10時からに変更してある。雪の上をスーツケース引いて歩くのは昨晩懲りたので、それは部屋に置いて、身軽な格好でレンタカー屋に向かう。歩道の雪は除雪されたと言っても、その上に新雪が積もって、キュッキュッと軽やかな音がする。しばしその音を楽しんだ。
 レンタカー屋は、日産のディーラーと兼業のようだ。予約時のカテゴリーはVWゴルフのワゴン車、マニュアルトランスミッションであったが、ディーラー兼業という設定であるから、貸してくれる車も日産だった。車種は日本名ではエクストレイル、こちらではキャッシュカイと言うようだ。所謂、SUVというジャンルだが、借りた車はFF駆動の車だった。この地方なら4WDだろと思ったが、タイヤはスパイクが付いているし、まあ何とかなるだろう。

 ナヴィゲーションは車にもついているが、ノルウェイ語で案内されると理解できないしメニュー設定や行先設定をやるのも手間だとと思い、ここは自分の携帯電話を活用する。これから行く場所が通信圏外かも知れないので、あらかじめGoogle mapのオフラインマップをダウンロードしてある。エアコン吹き出し口にホルダーを付けたら、ちょうど見やすい位置になった。
 一通りの説明を受けて、いよいよ出発だ。まずはホテルに戻って荷物を積まなければいけない。街中に戻る方向なので、スピードはさほど出ていなくてノルウェイ初心者にはありがたい。左折(日本で言えば右折)もすんなり出来た。

 ホテルから荷物を持ってくる。このホテルはチェックアウトという手続きもないのだった。車に荷物を積んで、助手席にカメラを設置する。今回、運転中の動画を撮るために、動画の29分制限がないパナソニックのGX7mk2を持ってきている。レンズは20mmF1.7。長時間の稼働に備えて電池部分に挿入してUSB給電するためのダミー電池とアダプターケーブル、座席に固定するためのクランプも用意している。セットしてみると、座席のヘッドレストの部分だとフロント窓から遠い上に、窓があまり大きくないせいもあり、窓の周囲まで写り込んでしまう。座席を目一杯前にしてもダメだ。仕方ないので、サンバイザーにクランプをつけて、そこにカメラを2台付けるためのバーと自由雲台を経由しカメラを固定してみた。かなり不恰好かつ不安定である。とりあえずこれでやってみる。

 行き先を入れて、出発する。街中を過ぎると、速度が上がる。岩手県の会社に転勤していたころ、5回の冬を経験していて雪道の経験はそれなりにはあるが、初めての地なので慎重に運転する。何台かに追い抜かれたが、交通量が少ないので迷惑にはなっていない、と思う。大きな橋があってすごく良い景観だったので写真撮りたいと思うが、退避場所がないのでそのまま走るしか無かった。全般に景色は素晴らしいが、曇っているので空とのコントラストがあまりないのが残念だ。道路状況は、きれいに圧雪されていてところどころミラーバーンのようになってはいるものの、車の挙動は安定していて運転に支障はない。道はスウェーデンとの国境の峠に向けて基本的には登って行くのであるが、坂も曲線も緩やかだし、なるほど皆さん速度を出すわけだ。
 E6からE10のスウェーデン方面に分岐すると、交通量はますます減って、というより自分の車の前後、誰も曲がって来ない。その理由はしばらくして判明した。ビヨルンフェルというところで、何台かの車が停車しているのが見えた。事故かと思ったら、通行止めであった。携帯電話で道路情報を見たら、悪天候のため閉鎖とある。今のところここの天候は悪くはないのであるが、ここから先は峠なのでもちろん先のことは分からない。待つ間、何台かの乗用車が引き返して行った。残ったのは大型トラックがほとんどで、少数の乗用車もいる。

 ちょうど道路管理事務所のような建物があって、時々除雪車が出入りしている。ネットで見ても情報の更新はほぼないが、どうやらスウェーデン側の問題のようだ。ここからスウェーデン国境までは車で20分くらい、さほど距離はないが、その先が通れないのであれば進めても結局国境で止められてしまうし、とにかく待つしかない。
 4時間ほど待った。事務所にトイレがあるので使わせてもらう。建物の中に入っても暖房されていなくて寒いが、トイレの中はヒーターが効いていて別世界のように暖かかった。トイレを出ると、除雪車の運転手が話しかけてきた。スウェーデン側の道路が開く保証はないが、国境のところの方が施設が整っているから、小型車だけ国境まで進ませることにした。すぐについてきて、と言う。慌てて車に戻り発進したが、自分は車列の後ろの方にいたこともあり出遅れてしまい、前の数台が通って行き遮断機が降りるのを目前に見る羽目になった。あぁぁぁぁ〜待ってくれ〜。

 数十分後、先ほど数台の小型車を先導した除雪車が戻って来た。恨めしい。なんであとちょっと遮断器を開けていてくれなかったのか。と言いたいが仕方がない。まだスウェーデン側は解除されていないし。
 さらにしばらく待つと、スウェーデン側が開くかも知れないから、先ず小型車から行こう、と言われる。今度は遮断機の真ん前、先頭にいるから置いて行かれる心配はない。しかし、除雪車のすぐ後ろを走るのはなかなか大変だ。何しろ雪煙が激しい。除雪車だから当たり前である。少し車間距離を空けて走るが、ここは峠道だし、さすがの現地の人たちも追い越しては行かなかった。

 スウェーデンとの国境に着いた。空港同様、出入国審査はなく税関のみで、その税関も徐行しながら素通りである。スウェーデン側への通行は出来たが、少し進むとすぐにまた通行止めになった。場所はリクスグレンセンで、自分の目的地カッタリヨックはここから僅か1.7kmである。なんとまあ、ちょっと坂を下るだけ、みたいな距離ではないか。しかし仕方ない。リクスグレンセンに泊まるのであれば、通行止めの遮断機の手前で左折すれば良いのだが。宿泊地を決める時にリクスグレンセンかカッタリヨックか迷ったんだよなあ、と思いながらここでまた1時間ほど待った。

 遮断機が上がった。まずはノルウェイ方面への車列を通す。この人たちはスウェーデンのどこかで6時間以上待っていたのだろう。その車列が通り、こちらも動き出した。道路はきれいに除雪されていて、天候が悪かった形跡は感じられない。目的地にはすぐに着いた。見落としそうな小さなT字を右折すると宿の目の前であった。宿の前の新雪の深いところでスタックした。緩やかな斜面になっていて、タイヤがスリップすると左にズルズルと滑ってしまう。やれやれ、スパイクも深い雪には効かないし、こういう時2WDは弱い。少し戻って、勢いをつけて雪の壁に向けて駐車した。エンジンルームに風雪が入らない方が良いというあれで。なおこの地方ではエンジンのヒーター用電源などはなさそうである。フェアバンクスでは駐車場に電源があって、夜間や長時間の駐車時はエンジンオイル凍結防止のためにヒーターに通電していた。気象データを見ると、10度近くこちらのほうが暖かく、段違いである。

 宿は、カッタリヨック・アパートメントで、向かって左側の地上階にコープ、1階(日本式なら2階)にレストランがあり、右側の建物が泊まる部屋である。部屋はアパートメントと言う通りキッチンと調理器具と食器一式があり、2人用のベッドが2段になっているが、ベッドの幅が狭いので大人4人は難しいような気がする。ベッドメイクは宿泊者自身がやり、チェックアウト時は部屋の掃除をする必要があるので、ホテル的なサービスを求める人には面倒だが、逆に宿泊中はずっとドントディスターブ状態なので、勝手に過ごしたい向きには良いと思う(ベッドメイキングや清掃は有料で依頼することも可能)。コープ側の出入口は夜間は施錠されるが、宿泊者用の夜間出入口が別にあり、そこはパスコード入力方式で自由に出入り出来るとのことだ。パスコード方式、で予想される通り、ナルヴィクのエンターホテルと同じく、ホテル従業員が常駐する受付は無く、レストランのレジで宿泊料金の精算や鍵の受け渡しをする。レストランは12時〜18時の営業で、ホテルの係の人は10時〜18時くらいの勤務のようだ。私は最終日にナルヴィク空港10:40発の飛行機に乗るため6時くらいに出発するつもりで(ここからナルヴィク空港までは85kmほどで、平均30km/hで3時間と想定)、受付時間外になる。チェックアウトはどうすれば良いか訊いてみると、鍵は郵便受けに入れてくれとのこと。宿泊費は今精算しておく。

 レストランの営業時刻から分かる通り、朝食の営業はないから、コープで買い物をしておく。カレールウでも売っていれば滞在日数分作っても良いかと思ったが、無かった。まあ手間かけずインスタントラーメンで過ごすかな。海外版のラーメンも面白いので、店にある種類を網羅しておく。精算はセルフレジでクレジットカードである。いやはや、全く現金使わないなぁ。

 外を少し散歩する。宿の隣に除雪車の運転手の詰め所(ひょっとすると住んでいる?)のような建物があり、E10道路側に少し離れたところにオーロラ観察時に暖を取るための小屋があった。小屋は雪に埋もれていてドアが開かない。天気はずっと曇っているので今晩のオーロラ観察は難しそうだ。
 部屋に戻り、ベッドメイクしてシャワーを浴びてFacebookなど眺めていたらいつしか眠ってしまった。


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