Braun Paxette

 M39スクリューマウントで、レンズ(リーフ)シャッター式のレンジファインダー機。ライカスクリューとはフランジバックが異なるので、レンズの共用はできない。初期は距離計がレンズのピントリングと連動していなかったが、スーパーパクセッテから連動するようになった。シリーズ共通の型番としてI型はレンズ固定式、II型はスクリューマウントでの交換式、III型は最後期のバヨネットマウントでのレンズ交換式である。III型のバヨネットは類似のものにキング レグラやボルタ フォタヴィット36があるが、それぞれ形状が異なっていて互換性は無い。
 II型の中ではBがついたものが露出計内蔵でLがついたものが採光ブライトフレーム式、BLは露出計内蔵かつブライトフレーム式となる。II型の露出計はシャッター速度や絞り値とは連動せず単独で露出を読み取って設定する必要がある。III型はオートマチックという銘が付いているが、これは自動露出ではなく、露出計が絞りとシャッター速度に連動するという意味である
(絞りリングがカメラ側に入ったことで実現している)

 自分が持っているものはII BL型である。ブライトフレーム(50/85/135mm)入りの距離計連動ファインダーは見やすいものだが、距離による自動パララックス補正は無い。ファインダー内はこのブライトフレームと距離計像以外にも機能があり、巻き上げ済かどうかがサインとして出る。巻き上げは2回必要で、完了していないと50mm枠の左辺が表示されないようになっている。巻き上げ完了とともに左辺を隠していたバーがファインダー内部に移動し、左辺が表示される。この機構はブライトフレームの投影部にあるので、ファインダーの視野を遮ったりはしない。
 シャッターリリースはカメラ上部のボタンではなくレンズシャッターの側面にあるレバーであり、慣れないとブレやすいと思う。巻き戻しはノブやクランクではなく、専用のレバーである。巻き戻す際にはトップカバーにあるスプロケットロック解除ボタンを押し続けなければならない。
 露出計は実用になるが、ついに不動となった。II BLは1958年発売開始で、自分が手に入れた時点で50年近く経っている上にそれから15年以上になるわけで、こればかりは仕方がない。この頃のレンズ交換式、レンズ固定式ともライカなどの著名ブランドに比べると市場価値は低下してしまい、メンテナンスして売るというやり方がペイしなくなってきており、市場での流通は減っている。

 写真が多くなって来たので、作例ページを分けることにした。
 
ウェストロン Westron 35mmF3.5 (イシュコ)
 薄型の広角レンズだ。鏡胴の直径は他のパクセッテマウントレンズに比べると大きく、より薄型レンズっぽく見える。レンズは鏡胴の奥深くに入っていて、このモデルより後に出るM42などのモデル(レトロフォーカスタイプで前玉が大きい)とは異なる。描写は甘く、コントラストもピントもあまりはっきりしない感じである。とはいえ、パクセッテマウントは最も画角が広くてもこの35mmまでしかないから、セットで持ち出す際はこれを使うことになる。なお、他にエンナのリタゴン、シュテーブレのリネオゴンという35mmF3.5レンズも存在するので、いずれは試してみたい。
 パクセッテのインストラクションを見ると、ファインダー全視野で35mm相当という説明であるが、なんとなく、38mmのほうが丁度よいのではないかと思っている。35mm用としてはいかにも狭く感じる。
 
クヴィノン(キノン) Quinon 50mmF2 (シュタインハイル)
 レシュラインのルクソン50mmF2と共に、パクセッテシリーズでもっとも明るいレンズである。ルクソンよりは流通数は多く、市場で見かける確率は高い。同じレンズがライカスクリューマウントにもあり、そちらは非常にレアということで価格が高騰しているが、パクセッテマウントの方は比較的手が出しやすい価格になっているようだ。
 絞り開放ではピント合わせが難しい上に全体のコントラストが低いので、1段絞ると確実であるが、それを言ってしまうとF2の存在価値がなくなってしまうので、今後も積極的に絞りを開けて活用したいと思う。
 
カッサリート Cassarit 50mmF2.8 (シュタインハイル)
 3枚構成の廉価版レンズである。M42マウントに比べると、こちらのほうがずっと入手しやすい。3枚構成だが、1枚目と3枚目を厚くして収差補正に努めた、というような説がある。絞り開放では周辺が荒れるが、絞ればきっちりした写りになる。また、夜景や高輝度部分ではボケ像に輪郭がつく所謂バブルボケになるので、そういうボケが好きな方には好まれそうである。
 ところで、カメラを2台持っていたことから、このレンズが2本手元にある。途中で設計変更されているようで、製造番号196万台はレンズがマウント面の中(フィルム側)に出っ張り、被写体側のレンズは鏡胴の奥にある形式、製造番号220万台はレンズ全体が被写体側に出ていてマウント側の出っ張りがなくなっている。ということから、作例を分けておく。デジタルで同じシーンでの比較をしていて、196万台の方が画角が広い一方で、ボケ方はほとんど同じなので、基本設計は共通のようである。
・製造番号196万台
 
・製造番号220万台
 
ブラウン カラーウルトラリート Braun-Color-Ultralit 50mmF2.8 (シュテーブレ)
 カッサリートと同様に、いろいろなマウント向けに供給されていた3枚構成のレンズである。カメラについていることが多く、市場にも豊富にある。上げた作例は絞った写真しかないのもあるが、普通によく写るレンズである。
           
クヴィナー(キナー) Quinar 85mmF3.5 (シュタインハイル) *
 コンパクトな中望遠レンズで、シュタインハイル好きの自分としては嬉しい存在であったが、システム一式を整理した際にこれも手放している。良いものがあれば復帰したいところだが、あまり市場では見かけない。
           
テレクソン Telexon 85mmF5.6 (シュテーブレ)
 F5.6と抑えたスペックになっており、極めてコンパクトな中望遠レンズである。絞り開放からよく写る。
 
テレナ― Telenar 90mmF3.8 (レシュライン)
 レシュラインは他のマウントで見たことがなく、比較的珍しいレンズであるように思われるが、パクセッテマウントというあまり人気が無いシステムのレンズゆえ、安価に流通している。前玉が大きい割に全長は小さくコンパクトである。最短撮影距離は1.5mで、∞からここまでピントリングを270度くらい回す必要があり、距離計二重像の動きがゆっくり過ぎてピント合わせが難しい。絞り開放ではコントラストが低めであるが像はきっちりしていて、絞れば風景にも向くと思う。
           
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