09年4月下旬−5月中旬
第4次欧州旅行


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●第7日 09年4月30日(木) プラハ

 8時にアラームの音で起きた。非常に眠い。昨夜、ベッドに入ってから電話で起こされ、家族とskypeで通信してみたのだった。さすがに遠く、音声も画像も途切れ途切れだったが、息子の笑顔が見られたのは実に嬉しいことだった。
朝食コーナー 朝こんな感じ食は、部屋の前に小さなブッフェコーナーがあって、好きなものを取り、朝食室というか小さなロビイで食べるという形式だ。ブッフェコーナーとロビイが離れているのは使いにくい。ロビイには誰もおらず、これはひょっとすると自室で食べている人が多いのかも知れない。ま、とりあえず広いところで食べられるほうがいいので、私はロビイで食べた。ハムが4種、チーズ3種、ソーセージを切って炒めたもの、シリアル、ヨーグルト、パン3種、となかなか盛りだくさんで、美味しい。コーヒーを余分にもらい、マグカップを部屋に持ち込んでPCを開きながら飲んだ。
 そのPCとは、今晩の演奏会の検索である。ルドルフィヌム(チェコフィルの本拠地)では今日明日とブロムシュテットがドヴォジャークの交響曲第8番、ブラームスの交響曲第1番を振るという。これは迷うことがない。すぐに予約した。ホールのHPによると、正面バルコニーには3種の席があって、600、440、220コルナである。こうして並べるとああそうとも言えるのだが、問題は440と220の席である。これらの席は、列が同じなのに値段に倍の開きがある。よく見たら、220の席は、柱の後ろに配置されているのだった。舞台の一部が見えないのは古いホールにはありがちとはいえ、柱の後ろとは恐れ入った。なので、私は柱に関係ない600コルナの席を予約した。

 昨日とは異なる、市街に近いほうの駅に歩いてみる。坂道を下る方向だ。自販機で24時間チケットを購入する(100コルナ)。これも硬貨で買う必要があるから、ホテルでアイスティを買って崩しておいたのだった。
 改札をして、地下鉄に乗る。すぐにヴィシェフラドで降りる。地下鉄のアナウンスでは「ヴィッシェフラ」
(最初にアクセント)と聞こえる。日本人だと、平坦に読むか、ヴィシェフラードと後ろに重きを置きそうで、ずいぶん違うと思う。駅の外に出ると、10年前の記憶が蘇る。そのときは腹を下していてつらかった。トイレに何度も行かねばならず、そのたびに小銭が要って困ったものだった。それはともかく、道も案外覚えているもので、すんなり歩ける。今日は晴れているが、遠景は少し霞んでいる。とはいえ、プラハのオレンジ色の屋根の集まりはやはり美しい。ヴィシェフラドはその名の通り高台にあるから、遠景がよく見渡せる。今回、持参したものの未だほとんど使っていなかった望遠ズームがようやく活躍の場を得た。
 城の中にあるのは今や教会と墓地だけで、城の構造物と言えるものはほとんどない。その墓地にはドヴォジャークスメタナの墓もあるので、10年前と同じくチェックしておいた。そこには小学生の課外授業とおぼしき集団がいて、各所の墓碑銘をチェックしていた。チェコの歴史の勉強だろうか。その集団を除き、ヴィシェフラドには人影がまばらである。元々観光客が少ないのか、ここの広さゆえなのかは分からない。のんびりと写真を撮りながら散歩した。
ヴィセフラド駅近くから 落書き?あるいはこういう壁? てるてる坊主 ヴィシェフラドの中はきれいな公園 きれいに整備されている
ヴィシェフラドからプラハ城を望む 大パノラマを撮ってみた

 2時間ほど居て、ヴィシェフラドを後にする。地下鉄のムゼウム駅でA線に乗り換え。この路線は初期のもので、地下深くに作られている。核シェルター代わりともいうが本当だろうか。それにしても、冬の冷気を溜め込んでいたのかと思うほど、寒い。ムーステクで下車。前に来たときはこの駅が最寄のアンバサダーホテルに泊まったのだが、いま考えるとずいぶん贅沢なロケーションである。いまでは1泊3万円くらいは取られるホテルだ。10年前は半額くらいだったと思う。
 旧市街を歩く。ものすごい人ごみである。そして旧市街の店は明らかに観光客目当ての土産物屋さんばかり。前からそうだったかも知れないが、より増えたような気がする。それでも、そういう店は地階だけだから、1階以上を見上げれば古くてきれいな建物がそこにある。それが嬉しい。そんなわけで、上を向いて歩いていたら、突然私を呼ぶ声が。なんと、会社のオケのK夫妻がいた。うーむ、プラハにきて、知人と会うことは想定していなかった。とはいえK夫妻は演奏会、オペラ好きだから、全世界の都市で考えれば遭う確率が高いところに居たと考えられなくもない。彼らはプラハとヴィーンだけだという。プラハには5日居るそうだから、演奏会という目的ではかなり楽しめるだろう。ただ、観光資源は市内の場合狭いところに集中しているので、プラハだけだと物足りないかも知れない。そんなことを話して、別れた。

カレル橋より カレル橋に行く。ただでさえ混む橋は、一部が工事中でさらに混んでいた。東の塔は登土産物屋、よく見ると..れるのであるが、70コルナとけっこう高いのと、工事中の橋を俯瞰しても楽しくないからやめた。人ごみを掻き分け、ようやく橋を渡り切る。ここだけで何だか疲れた。ここからは坂を登って、プラハ城に向かう。城に行くのは今回が初めてなのだ。長い石畳の坂を登るのはきついが、風が涼しくて過ごしやすい。城からは先ほど居たヴィシェフラドが霞んで見えた。
 見学コースには入らず、城の中をぐるりと回って終わりにする。人通りの少ない坂道を下っていくと、若い女の子がカメラのセルフタイマーのセットに苦労していた。三脚がなく、坂道の手すりにポシェットを乗せてなんとかカメラを固定しようとしているのだ。すかさず、撮って上げましょうかと提案。聞くと、プラハ城の壁の凹んだ部分に立って、そこから飛び降りる瞬間を撮って欲しいという。なるほど。そういうことなら任せなさい。で、完璧なのを撮って差し上げたら期待以上の出来だったようで、すごく感謝された。大げさな感謝ぶりだけど、こういうのはこっちも嬉しくなる。
午後になると遠景は霞む ヴィシェフラドの方向 プラハ城にて プラハ城にて 狭い路地もあり

 ヴルタヴァ(モルダウ)の河畔に下りて、フィッシュ・レストランなる店で遅い昼食を取る。ダックの脚とほうれん草入りダンプリング(小麦粉を練って蒸したもの)と、ピルスナ美味しいー・ウルケル。ピルスナー・ウルケルはチェコのプルゼニュ発祥、現在のビールでは定番の、金色で透明なピルスナータイプの元祖である。ウルケルとは元祖、の意味。座席は店のテラス部分なので涼しい風が吹いて心地よい。そしてピルスナー・ウルケル。外で飲むこれは実に美味しい。料理は、チェコの伝統的な料理だと書いてあったのだが、ダックの肉に味がしみていて美味しい。ソースと、紫キャベツの酢漬けも肉によく合っている。ダンプリングはテニスボールよりちょっと小さい程度で、量が多すぎである。それそのものには味がついていなくて、少々飽きた。会計は440コルナ、16ユーロ相当だからかなり高ルドルフィヌムかった。
 カレル橋を渡るのはもういやなので、ルドルフィヌムに近い橋を渡る。ルドルフィヌムのチケット窓口でインターネット予約番号を言い、今晩のチケットを受け取る。旅行者でもやりやすいシステムでありがたい。

フス像 その後、フス像を見て、市内をぶらぶらする。10年前に回ったカメラ屋たちは健在だった。相変わらず銀塩関係の在庫はあるし、見ていて楽しい。東欧系のカメラが多く、けっこう安いのだが、置いてあるカメラは大きくかさばるものばかりで、いくらペンタコン6が安いといっても、買うわけには行かない。5軒ほどつっかい棒見てホテルに戻ることにする。パンクラーク駅のショッピングモールでカフェラテを買い、ホテルで休憩する。窓を開け放しにして涼しい空気を取り込みながら過ごした。

 18:45ごろにホテルを出てルドルフィヌムには19:10ごろに着いた。席は1階バルコニーの中央付近だ。すぐに階段を登り席に着く。例の、柱のかげの席はたしかに安くて然るべきで、あれほど直接的に視界が遮られるというのもないと思う。ホールは天井が高く、きれいに手入れされていて美しい。これは良い響きがしそうだ。客が少なく座席がガラガラだったのだが、開演直前にほぼ満席となった。
 オーケストラが入場する。編成は1stヴァイオリン7プルト半でけっこう大きい。管楽器は楽譜指定通コンサートの様子りの配置だ。指揮者ブロムシュテットが次いで入場し、演奏が始まった。ドヴォジャーク/交響曲第8番冒頭のチェロのメロディがすばらしい。聴き慣れた、なんてことはないメロディなのだが、不思議な魅力に引き込まれここでもう感動してしまった。ブロムシュテットは年を取って飄々としたおじいさんの風だが、時々きっちり引き締めているのが心地よい。オケがこの曲に慣れているということもあるだろうが、非常に見通しの良い、フレーズ感がしっかり伝わってくる明確な快演だったと思う。全体に早めのテンポだったが、それでいて安っぽくならないのは立派だと思う。意外に思ったのは、チェコフィルだというのに、ヴィヴラートを過度にかけないこと。国際的になって個性が薄れたのか、ブロムシュテットの指示なのかは分からない。個人的には、あまりきついのは苦手なので、今回の演奏は非常に聴きやすかったし、それでいて味がなかったということは全然ない。ところで、ティンパニのお兄ちゃんは、ずいぶん本来の楽譜にない音を演奏していた。瞬時に音を変えられる技術があるのだろうが、ちょっとやりすぎだと思う。それ以外は、全体のまとまりが良くて一体感があり、良い演奏だった。長い拍手が続き、ブロムシュテットは何度も舞台に戻らなければならなかった。
夜のルドルフィヌム いっぽう、後半(ブラームス/交響曲第1番)は、少しぎこちなさが出た演奏だった。一体感が薄れ、特にホルンの1番が大きすぎた。2楽章の、コンサートマスターとのユニゾンのソロでは、ホルンばかりが主張して、ヴァイオリンはかき消されていた。前述のティンパニはこの曲で1発、音変えを失敗しひどいのを叩いた。ただし、それも全体が壊れるまでではなかったし、弦楽器は安定して上手いし、総じていい演奏会だったと思う。この曲も長い拍手が続いた。アンコールは無かったけれど充実した音楽で十分楽しめた。

 会場を出て、川のほうで夜景を撮ったりしながら散歩。この時間帯でも人はまだまだ多い。旧市街広場に出て、ピルスナー・ウルケルを飲んでからホテルに戻った。
ドヴォルジャーク像 カレル橋・プラハ城 路地にて 広場にて やはりピルスナー・ウルケル


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