09年4月下旬−5月中旬
第4次欧州旅行


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●第14日 09年5月7日(木) オスロ

朝食 ベッドが合わないのか、夜半に何度も目が覚めてしまった。目をしょぼしょぼさせながら朝食へ。ハム4種にチーズ、パンも4種くらいあり、パンケーキと甘いパイ、シリアル、ヨーグルトなどがあり種類は豊富だ。ノルウェイらしい食べ物もあり。羊の乳入りのチーズである。甘くて香ばしく、キャラメルのような感じで、塩辛いハムと合わせると意外な美味しさだ。食べ物は美味しくていいのだが、気になるのは食堂が寒いこと。早々に切り上げた。

 ホテルでオスロ・パス(220NOK=3300円、この手のパスでは異様に高い)を購入、地下鉄の駅でヴァリデートのスタンプを押して(その時点から24時間有効)、早速ムンク美術館へ。ホテルから歩いて10分以内で非常に近い。ここだけ市内から外れているので、偶然とはいえここから始めるのは効率が良い。天気は雨だが、美術館・博物館を回る分にムンク美術館は問題ないだろう。
 さてその美術館、どうやらノルウェイではこの手の施設では写真はNGのようだ。そもそも荷物が持ち込めない。地下にあるコインロッカー(返金される)に荷物を入れる。小型のポシェット程度はX線で検査した上で持ち込めるようだ。ま、これはそういう方針なのだから絵に専念しよう。ムンク美術館は、オスロ市に遺贈された作品のごく一部を展示しているところで、広い敷地を見てわくわくしたけど、中が意外に狭くてあれ、もう終わり?と感じてしまった。思わず戻って観直した次第。オスロ・パスでは無料だが無しの場合は80NOK、割高感がある。
 美術館には小学生の集団がいくつも居た。これはこの後回ったところでも一緒だし、他の国の美術館でも同様のことは多く見られる。皆、床に座って先生の説明を聞いている。英語だったらこっちも聞けたのだが。その説明は非常に念が入ったもので、周りのノルウェイの一般人にしてみれば、作品数点に1つしかないオーディオガイドよりよっぽどよかったのではなかろうか。絵そのものについてのコメントは、陳腐になるのでやめておこう。今年はムンクが海外からノルウェイに戻ってから100周年の記念の年だそうで、その居を構えた地での暮らしぶりを写真で紹介しているコーナーがあって興味深かった。写生しているのを、村の子供たちが覗き込んでいるのとか、子供たちはその絵を見てなんと言っただろうか。
 予想できたことだが、ショップでは超絶に高いアイテム続出。Tシャツ、絵が小さいので2700円、シャツ全面に絵が印刷されているのは5000円超。「叫び」クロックが在庫処分で99NOK、それでもそんなに安くないと思ったら、元値は395NOK、6000円!それにしても、ショップとチケット売りが兼務なので、ものすごい列になってしまい、ショップだけで30分くらいかかってしまったのは痛かった。SALG、でセールだということを覚えた。ドイツ語だとAktion!だ。

 地下鉄に地下鉄乗り市内に行き、次は国立美術館。ここは元々無料である。この国に払った付加価値税のトラム額を考えれば、美術館の入場料くらいには既に達していると思う。ここも荷物はロッカー行きだ。ムンクの部屋は2階(以降、日本式に戻す)の一番いいところにあって、光の当たり方がすばらしい。こりゃ、カメラもちこんだら駄目だわ。素人でも画集が作れるほどだ。それに引き換え、ルノワールやモネやゴーギャンやゴッホがいっしょくたになって2階のどんづまりの部屋に置いてあるのはちょっと差別だなあ。でも、これもたぶん策で、その行き止まりの部屋に行く途中は、ノルウェイの作家が並んでいる。それらの作家の絵は必ず2回、目に入るわけで。ソールベルクの「夏の夜」の色遣いが衝撃的で感激したのだが、後でショップで絵葉書を見て落胆。なんで絵葉書ってこんなに印刷がしょぼいんだろう。
 次に市庁舎。市庁舎なんて見てどうするの、と私も最初思っていたのだが、これが予想外に見所あり、楽しめた。庁舎のど真ん中のホールの絵の大きさには圧倒される。2階にはムンクもあり。普通に平日なので、そこらへんの部屋では市の職員が会議をしていた。
オスロ市庁舎 市庁舎のホール ノーベル平和賞授与式会場として有名 ムンクもある
タペストリー オスロ市議会の議場 世界各地との交流の品々を展示

 市庁舎からオスロ・コンサートホール(単にこういう名前。ノルウェイ語ではOslo Konserthus)が近いので、夜のオスロ・フィルのチケットがあるか聞いてみた。すると、なんだかどこかで聞いたようなパターンで、一番上と一番下があるという。価格は360NOKと150NOK、360というと5400円だからけっこう高い。しかし座席表を良く見ると、このホールではカテゴリーは3つしかなくて、IとIIと合唱席(サントリー風に言えばP席)、そのカテゴリーIがむちゃくちゃ広くて、言うなれば8割方がS席という状態。そしていま余っているのはその中でも端の、視界・音響の悪そうな席。そんなところに高い金を払うのはいやなので、思い切って合唱席にした。

 ノーベル平和センターを見学、次はビグドイ地区に行こうと思う。市庁舎近くの埠頭からビグドイ地区に船で渡れ、そこからいくつか博物館に行ける。これも市内の他の交通機関と同じ扱いで、オスロ・パスなら無料なのだ。天気は徐々に回復してきた。
ビグドイへの船 海から市庁舎を見る アーケシュフース城

 船を降りてノルウェイ民俗博物館に、14:45ごろに入場。じつはハイシーズンではないので、展示物(古い建築物)のドアが15時で閉まるのだ。建築物の外観は18時まで見ることができる。私が見たいのは13世紀のスターヴ教会。ノルウェイ式の、木造教会だ。鍵かけるおっさんが向こうから歩いてくるところを駆け込みでセーフ!無事に内部を撮影。その後雨がひどくなったのでしばらくそこらへんをうろうろしていたら急に晴れた。それでまた外部を撮影。
 この博物館は気に入った。17-18世紀の木造建築はなんともラヴリーで、1時間半くらい居たと思うが、見足りない気分だった。
古い家や倉庫などが移築されている 家の内部 世界樹 スターヴ教会内部 きれいに晴れた
スターヴ教会 いいですねこういうの 屋根に草が生えているのがなんとも 厳しい冬を過ごすために、小さい窓 この屋根は好きだなあ

ちなみに、19世紀以降の建物もある。これもなかなかの展示だった。
19世紀の街もある 食料品店 やはり木造が基本 窓の外から中を覗いてみる キオスク

 その後ヴァイキング船博物館に。ここも良い。1隻だけ、ほぼ完全な形で出土したヴァイキング船があって、その造形に見とれていた。ここで17時を過ぎ、タイムオーヴァー。次の博物館に行くには船でもう1区間乗らねばならず、時間切れである。やはり5月では制約が多いようだ。
ヴァイキング船博物館 ほぼ完全な姿の船 船首部分 細かい彫刻 そりも芸術作品のよう
ビグドイ地区の家 帰りの船から、大型フェリーの回頭を見る 犬の散歩、にしては格好が

 ホテルに戻る途中で安いファストフード店を見つけ、ハンバーガーとペットボトルのセット50NOKを購入。ジャンクフードだが、ハンバーグは100gと大きいし、美味しかった。昼食を抜いていたから尚更..ちなみに、マクドナルドやバーガーキングのようなチェーン店のハンバーガーのセットはだいたい90-100NOK、なんと1400円以上である..10年前に来たときは為替相場も同じくらいで、それで700円くらいだったんで「まあ、付加価値税23%だから、こうなるよね」と思っていた。今は税率25%で、結果は倍。恐ろしい価格である。街のレストランも、よく見る価格は99NOKとかが多かった。
 ま、お金の話はともかく、晴れて良かった。

 ホテルで一息ついて、また出かける。19時ちょっと過ぎにホールに着いたら、ホール前で軍楽隊みたいな人たちが野外演奏をしていた。横巻きのフリューゲルホルン。あんまり上手くない。1曲聴いてホールに入った。オスロ・コンサートホール
 今日の曲目などは以下の通り。
・リンドバーグ/フェリア
・ショスタコーヴィチ/ピアノ協奏曲第1番
・シベリウス/交響曲第1番
Pf:ホーヴァルト・ギムセ
Tp:ティーネ・ティン・ヘルセット
ユッカ=ペッカ・サラステ指揮
オスロ・フィルハーモニー管弦楽団
 さて、その「P席」だが、チケットにはUと書いてある。ライプツィヒのゲヴァントハウスではその大きな文字と階段が一致していて、その指示に従って歩けばいいのだが、ここにはUの階段がない..会場係を捕まえて、どうやって行けばいいのと言ったら、Aの文字のところに行きなさいと。全然ちゃうじゃないそれじゃ。
 着いたら、Aの文字はその合唱席専用の階段だった。なぜ文字を変えるのかは謎。さらに、私のチケットには57という番号があるのだが、座席にはそんな番号はない。それどころか、合唱席は列番号だけ振ってあって、それも46番までしかないのだ。ドア係もいなくてこれはどういうことか分からないので、適当に座ってしまう。すると、周りにもなんとなく、同じような悩みを抱えていそうな人たちがウロウロ。その中のおばちゃんが私に話しかけてきた。えーと、すみませんが英語でお願いします。あらごめんなさい、それでね、このチケットの席はどこなのかしら?何番ですか?うわ、129番。実は私は57番なんですがこの通り46列までしかないので、多分フリーですよ。そう、そうよね、どうもありがとう。ホールの様子
 というわけで皆さん意を決して自由に座り、演奏会が始まる。ホールの形はどちらかというと横長で縦の距離はあまりない。残響も少なめ。わがP席は当然ながら打楽器の音が大きくなるものの、金管は譜面台の反射があるのでそんなに悪くもない。なお、放送(か録画)が入っていたので、マイク林立、カメラは5台くらいいたかな。
 1曲目、コテコテの現代曲。ラッパの1番はピッコロ。機能的には非常にうまくやっていると思った。それにしてもわけわからん曲だった。打楽器はいろんなことをやらされていて、ドラをトライアングルのバチでffまでロールで大きくしたり、車のバネのようなものを叩いたり。Pfの人はチェレスタ右手、ピアノ左手なんて離れ業もやっていた。作曲者の指定なのか、人員抑制策なのかはわからないが。個人的な感想ではへんてこりんな曲、としか思えない。感性が古すぎるのかねぇ。
 2曲目は協奏曲で、Pfはさすがに1曲目で使ったのを再利用するわけにはいかず、舞台上はほぼ総入れ替えみたいな状況だ。ここは休憩はないのだが、結局20分近く空いたのではなかろうか。ソリストのラッパの人は22歳の女性。なんか人気みたい。会場に貼ってあったポスターによると、演奏会後にサイン入りCDを販売、とあった。演奏は、1曲目があまりにアレだったので、ショスタコが古典のごとく爽やかに聞こえて思わずニヤリ。元々透明感はあり、それがますます際立ったというか。ラッパの人、ちょっと線が細い気がする。圧倒的な感じがしない。それと、白玉になると最後に高速ヴィヴラート、のパターンで、これは私の個人的な好みの問題だが、気に入らなかった。終演後スタンディングオベーションされてたけど、そんなにいい演奏とは思えず、私は立たずに拍手していた。アンコールは知らない曲だったが、わざわざC管に持ち替えるあたり、アンコールがかかることを想定していたようだ。
 休憩後、若干空席が増えた。ソリストのファンが帰ったということだろうか。後半は指揮者がフィンランド人ということもあるのか、入魂の演奏だった。ラッパはロータリーに持ち替え。すごく太くていい音。上手い。金管セクションとしてもまとまりがあったと思う。チューバが単独で吹くところはかなり唐突、これはP席ゆえかなあ(シベリウスゆえか?)。皆、びくっとしてチューバの方を見ていた。弦楽器のダウン連発攻撃も、気合十分でなかなか。
 そういえば、このホール、空調の音が目立つ。チューニングのAよりちょっと低いくらいだ。オケが、ppでも全体が鳴れば気にならないが、シベ1冒頭のClソロとかだと、聞こえてしまうのだ。これもP席ゆえであればいいが、これで一番高い席でも聞こえたらちょっと問題かも。アンコールはなかったが満足できた演奏会だった。

 そのまま会場を後にし、中央駅で明日のベルゲン行きの切符を出力する。日本で、事前にNSB(ノルウェイ国鉄)のサイトで切符を買っておき、駅の端末で出力できるのだ。パスワードは自分の電話番号。忘れることはないし、これは便利だ。駅にあるRIMIというスーパーでアイスコーヒーを買う。ノルウェイにはセブンイレブンもあるし、ナルヴェセンというチェーン店もあるのだが、価格は高い。今後はなるべくスーパーにしよう。と、結局お金の話で締めてしまうのは情けないことだ。明日は一日中列車の中、あまり気にしないほうが良さそうだ。


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