09年4月下旬−5月中旬
第4次欧州旅行


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●第2日 09年4月25日(土) フランクフルト→バート・クロイツナハ→フランクフルト

 4時半頃に目が覚めてしまった。昨夜は22時くらいには寝ていたから一応6時間以上は眠ったことになる。日本時間なら11時半だから、夜更かしした翌日、といったところだろう。PCを立ち上げてネットを見たりしていたが、空腹感が激しく、朝食時刻が待ち遠しい。どちらかというと朝が弱い私において、朝食が待ち遠しいとは異常事態、つまりは時差ボケだ。しばらくして、少しでも寝ていようとベッドに潜り込むが、やはり眠れなかった。
 7時に朝食室に行く。朝食室は7階
(日本風には8階、以降現地の呼称で統一)にある。エレヴェータが6階までしか行かず、最後が階段になるのは、7朝食階が屋根裏部屋だからだ。窓の外には向かいの建物の屋根が見えて、これはこれで風情があって良い。食事は、ハム3種チーズ1種、パン数種、シリアル3種、ゆで卵、ヨーグルト、ジ朝食室の様子ュース(オレンジとりんご)、コーヒー、紅茶、牛乳である。野菜が全くないのだが、ヨーロッパのホテルの朝食ってたいていこういうパターンだったと思い出す。種類は少ないが、ハムとパンが美味しかった。
 食べ終わると7時半。けっこう時間をかけているが、TVで連続ドラマらしきものがやっていて、なんとなく見ていたのだ(内容も分からず)。宿の主人とそのかみさん、と思われる2人は、コーヒーをマグカップに入れたままじっと見入っていた。それで、なんとなく切りのいいところで(根拠なし)出てきた。

 フランクフルト中央駅外に出るとけっこう寒い。上着を着てこなかったのだ。でもたぶん天気は良さそうだし、このまま歩こう。まずは駅。行き止まり式の巨大な駅だ。複数の層に分けずに二十以上の線路が並ぶさまは偉大と言わざるを得ない。これで、近郊路線のSバーンは別なのだから。しばらく駅を眺めて、窓口に向かう。ユーレイルパスをヴァリデート(有効化)しなければならない。パスは買っただけでは使えないのだ。このヴァリデートというのは、しなければ使っていないという証明になるので、ヴァリデート以前なら払い戻しもできる(要手数料)。15年前の旅行では乗る当日にヴァリデートをし、窓口でけっこう時間を費やしてしまった覚えがある。なので、今回は前日に済ませておく。窓口に行ってみると、前のお兄ちゃんと通りがかりのおばちゃんの会話で、私は間違った窓口に居ることが分かった。ここはバーンカード(ドイツ鉄道の割引会員)所有者専用だったのだ。ドイツ語の会話でも、そういうネタだとなんとなく分かるので助かった。改めて一般の窓口に回る。そこは銀行と同じく、番号札を取って順番待ちをするシステムだ。朝早くだが窓口が10箇所以上開いていて案外スムーズ(でも数分はかかった)に順番が回ってくる。ヴァリデートのついでに、明日朝の10:21発ヴィーン行きICE25を予約した。予約料金は5ユーロだ。さらに、午後出かけるつもりのバート・クロイツナハまでのローカルのチケットを自販機で買っておく。この区間は80kmしかないので、ユーレイルパスを使うのはもったいない。

 さらにしばらく時間つぶしをする。というのも、駅の観光案内所が開いていない。歩いているときにいちいち「地球の歩き方」を参照するのが面倒なので、観光案内所で地図をもらおうというわけだが、9時まで待って入った案内所には無料地図はなく、0.5ユーロ払って買った地図は縮尺が粗くて今ひとつ使いにくいものだった。このために待っていたかと思うと空しい。
牛と熊 1日乗車券(5.6ユーロ)を買い、S8に乗ってハウプトヴァッヘに向かう。中央警備所、みたいな意新緑の季節味だと思うが、今は警察ではなくカフェになっている。ここからアルテ・オーパ(旧歌劇場)まではUバーン(地下鉄)で1駅だが、ここは歩くことにする。土曜の朝とあって周囲の人通りは少ない。ひんやりとした空気と青空が気持ちよい。気温には徐々に慣れてきた。ある広場に牛と熊の像があった。後で調べたらフランクフルト証券取引所の前で、この銅像は高値(雄牛)と安値(熊)を表すそうだ。商店街から横道に入ると小さなバーがあったりして、夜は良い雰囲気になりそうなところだが、今はもちろん閉まっている。

 アルテ・オーパに行くのは、今晩スイス・ロマンド管弦楽団が演奏会があるのでチケットを買っておこうと思い立ったからだ。昨晩ネットで検索した成果だ。昨晩はここでヘッセン放送交響楽団(以前はフランクフルト放送響だったと記憶しているが)がアルプス交響曲をやっている。間に合わなくもなかったが、移動疲れで寝てしまいそうだったのでたぶん行かなくてよかったのだろう。その点、今日は比較的安全だと思われる。
アルテ・オーパー しばらく歩いていたらアルテ・オーパに着いた。立派な建物だ。通りがかりの人に記念写真を頼まれつつ、自分も工事中いろいろ撮影していた。ここでも窓口営業開始まで時間があり、付近をうろうろしていた。チケットはすんなり取れた。空きが十分あるらしい。席は上から4番目のカテゴリーで47ユーロ。なぜか窓口で直接買うと少し値引きがあって42.8ユーロ(5500円くらい)だ。安いと思ったがヘッセン放送交響楽団の同じカテゴリーはわずか22ユーロだ。一応、隣国から来る費用はかかっているらしい。ともあれ、チケットが確保できたのでまた歩くことにする。

レーマー ハウプトヴァッヘまでU4で一駅。地下鉄は緑色のかわいい車体である。駅を出ると、先ほどこういう建物も多いは歩かなかった方向に進む。ちょうどカメラ屋があったので覗いてみたら、ずいぶん高かった。やはりカメラが安いのは日本だな..海外でカメラ店を覗く度に抱く感想であるが。カメラ屋からマイン川の方角に歩くと、古い建物が多く並ぶ地区に至る。その中心たる建物がレーマー(旧市庁舎)だ。残念ながら目の前にトラックが止まっていてまともな写真が撮れず。そのまま広場を抜け道路を渡るとマイン川に出る。対岸まで歩行者用の橋がかかっていた。それで対岸まで歩いてみたら、大きなフリーマーケットが開催されていた。美術品のようなものから、ごみのようなものまでまさにピンキリ。一応チェックするがカメラ類はほとんど見かけず、残念だ。

フリーマーケット またレーマーまで戻り、ツァイルという大きな通りに出る。デパートなどが並ぶところだ。東に歩き、コンシュタープラーヴァッヘというところまで行くと、広場で市場が開かれてマイン川いた。人々が野菜や肉などを買い求めており、盛況である。昼時でもあるし、屋台のソーセージにアプフェルヴァイン(りんごワイン)でも、と思うのだが、食事スペースがタバコで煙たい。ドイツ人はまだまだタバコ好きが多いようだ。結局屋台はやめて、ノルトゼー(北海)という魚を中心とした料理のチェーン店でサンドイッチを買う。ホテルに戻り、部屋で食べる。白身魚のフライをパンにはさんだもの、えびサラダをトルティーアにくるんだもので、どちらも具が新鮮で美味しい。

ノルトゼーのサンドイッチなど 30分ほど寝て、駅に向かう。14:25発のRE(レギオナル・エクスプレス)に乗る。REとは地域内急行とでも訳すべきか。バート・クロイツナハまでの80kmを1時間で走る。追加料金なしの列車としてはけっこう速いと思う。車両はディーゼル車で、つまりバート・クロイツナハは非電化区間にあるわけだ。
 ところで、なぜバート・クロイツナハなのだ、と思われる方がほとんどバート・クロイツナハへだろう。カメラに興味がある方はご存知、シュナイダーというレンズメーカが1890年にこの地で創業している。私はローライ35のクセナー40mmF3.5、デッケルマウントのクセノン50mmF1.9くらいしか持っていないのでファンと言えるほど愛好していないが、どんな街か見てこようと思う。
 列車はスムーズに駅を出た。駅の外で何か通過待ちか行き違いのために停車したが、その後はなかなかの快速ぶり。時速130kmくらいは出していたのではなかろうか。車内は清潔で機能的にできている。椅子は極力スペースを稼ぐためにクッションは薄く、全体にそっけない印象だ。列車が郊外にさしかかると、目立つのは家庭菜園のような畑。区切られた敷地に小屋や遊び場なども作られていて、週末を家族で過ごすのだろうか。

バート・クロイツナハ駅 予定より少し遅れてバート・クロイツナハに到着した。古い駅で、車両とプラットフォームの高低差が大きい。車椅子の人たちを専用のリフトで降ろしていた。
 クロイツナハ駅前はバスターミナルと売店があるだけで閑散としている。土曜の午後なので商店も閉店しているところがほとんどだ。駅前の道路を渡った先にカメラ屋があって(これも閉店)、中古カメラもいくつか置いてある。アグファの安いカメラや日本製一眼レフのOEM製品などだ。一台だけ、ひときわ高いところに鎮座しているのはローライ35(でも115ユーロ)で、当地発祥のシュナイダーレンズつきかと期待したら、ツァイスのテッサーだった。デジタルカメラは日本製のものに加え、プラクチカブランドの廉価カメラや、サムスン製のものもある。サムスン製にはシュナイダー銘のレンズが搭載されているので、「バート・クロイツナハのシュナイダー光学製レンズつき」と書いて展示されているものがあった。実際にはここで作られているかどうかは怪しい。
こういうカメラもあることはあるが そこから町の中心のほうに歩いてみる。中心部には賑やかな商店街があり、土カメラ屋発見曜だが開けている店も多い。広場に面した角地にまたもカメラ屋があったので入ってみる。店員に挨拶して、ここクロイツナハにはシュナイダーがあるよね、と聞いてみると、今日は土曜だから開いてないよ、との答え。見学希望と思われたのだろうか。シュナイダーは今は一般的なカメラ用のレンズをあまり作っていないから知名度が下がっているが、良いレンズを作る会社だ。健在であれば結構なことだ。
 このカメラ屋にも若干だが中古カメラが並んでいる。コンタックスG1に"Leica M7"と札をつけるあたり、なかなかのシャレっ気ではないか。
 さらに商店街を歩き、1時間のクロイツナハ散策は終了した。なんだかカメラ屋探索をしていたように見えてしまうが、そんなことはない(たぶん)。帰りは16:31発、行きに通らなかったマインツ中央駅を通る。ここは行き止まり式で、進行方向が変わる。進行方向を向いているほうが好きなのだが、車内が混んでいるため席は移動しなかった。進行方向云々より残念なのは、逆方向になったため結果的に行きと同じ景色を見ることになっていまう点だ。

 フランクフルトに戻る。コンサートは20時だからまだ時間があるので、先に食事にしよう。駅前の中華料理店に入る。旅先でわざわざ中華料理というのも変な話だが、これが意外に個性があって面白いのだ。注文はチキン入りチャーハン。ビールは、地元のがあまりに大きいので青島にしてしまった。こういうとき、一人旅は弱い。料理はすぐ出てきた。客は私のほかに2人しかおらず、暇だったのだろう。このチャーハンは大当たりだった。チキンが固くならず程よい食感で、味もよく合っている。しゃきっとしたモヤシも良かった。
 ホテルで荷物を降ろし、身軽になる。持参した小さなカバンにコンパクトデジカメを入れて出かける。SバーンもUバーンも慣れたもので、スムーズに乗り換えることがアルテ・オーパーのホールできた。ホールには20分前に到着。服装はジャケットを羽織っただけでノータイだがどうやら問題なさそう。ホールのロビイは開演前に飲食する人たちでごった返していた。ロビイを見た感じ、このホールはかなり広いようだ。私はそのまま階段を上っていく。座席は2階席と思い込んでいたが、実際には4階席くらいの場所だ。2階席とそれ以上は区切られており、遠目には長く大きな斜面の2階席に見えるが、実際座ってみると私の席は舞台からかなり遠かった。
 ところで演奏曲目は以下だ。
・ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調
・同/左手のためのピアノ協奏曲
・ベルリオーズ/幻想交響曲
Pf:ジャン=イヴ・ティボーデ
指揮:マレク・ヤノフスキ/スイス・ロマンド管弦楽団
 演奏が始まってみると、私の席が遠すぎるのがはっきり分かる。特に、1曲目は管楽器が少なくて量感があまりない曲なのだ。それはともかく、冒頭からけっこう速いテンポで楽しい。木管のソロはどれもすばらしい。フルートの人など、派手な音ではないのに客席まですっと届き、不思議な魅力を持っている。ピアノのティボーデ氏はテクニック抜群。テンポは指揮者と煽りあいをしているかの如く、攻めて攻めて、そして崩れない。2楽章の提示は音が単純なだけに味がでないと退屈だが、それも問題なかった。たいした人だ。2曲目もかなり速い。左手だけなので、伴奏とメロディを同時にはできないから、そこは時差をつけて弾くのだが、全体のテンポを速めてもそこらへんが破綻しないのが素晴らしい。長い拍手の後、アンコールに応えて何かを弾いたが、私は全く知らず。でもきれいにまとめていた。夜のアルテ・オーパー
 休憩時には客のほとんどがロビイに出て行った。私は客席に居て日記を書いていた。休憩後の「幻想交響曲」ではオケが大きいこともあって、迫力が増した。テンポ感はこれも快速。指揮者がそういう人なのかも。最後には遠くに座っていることも忘れて没入できた。これも長い拍手の後、アンコールに2回応えてくれた。
 終演は22時半近く。予定では22時とあったから、拍手とアンコールで30分近く延びたというわけだ。帰りは列車の接続が少し悪かったが、23時前には戻ってきた。日記を書いて、ヴィーンの宿を慌てて取って、26時半くらいに就寝。


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