09年4月下旬−5月中旬
第4次欧州旅行
●第19日 09年5月12日(火) ホニングスヴォーク→ノールカップ→ホニングスヴォーク→トロムソ
8時前に起床した。朝食は予約制ではないので、カードで朝食代を払いレストランに入る。予約不要といいつつ、かなりのテーブルに予約の札が入っていた。客の9割は高齢者だ。私くらいの人はいない。ひょっとすると、乗客の中で私が一番若いのではなかろうか。ちょっと場違い感もあるが、まあそれはいい。朝食はビュッフェで、ハムは3種類くらいしかないが、コールスローやカニ(かまぼこ)サラダなどがあり、いろいろヴァリエーションがあって良い。例の、キャラメルのようなチーズもある。美味しかった。
今日は11:45にホニングスヴォークで下船予定だ。そこでノールカップという最北端の岬に行く。それまではキャビンは確保されている。昼の12時で一区切りとなるため、ホニングスヴォークの到着時刻は偶然だが都合の良い頃なのである。天気は相変わらず勝れないが、雨がザーザーというわけでもない。時々7階のサンデッキに出て外を眺めていた。気温は8℃前後、後部サンデッキでは風が当たって寒い。
何やかやですぐに11時過ぎになる。そろそろ荷物を片付けなければならない。一泊だけだったがこのキャビンは過ごしやすかった。ベルゲンのホテルよりは数段上である。
15分ほど遅れてホニングスヴォークに入港した。私の乗船はここで終了である。しかし荷物は荷物置き場に置かせてもらう。キャビンの鍵を出口でスキャンして、観光バスへと向かう。バスは2台あり、ノールカップ観光とバードウォッチングツアーがあるようだ。バードウォッチングは、海鳥の多くいる島に船で近づくらしい。私はノールカップ行きに乗る。バスは1台で、客は40人くらいだろう。最初にガイドさん(男)と、運転手の紹介がある。熟練しているので、たぶん皆さんを連れて帰って来られるでしょう、という紹介で笑いを取るのはお約束なんだろうか。そういえばヴォスからグドヴァンゲンへのバスの運転手も、スタルハイムホテルからの下り坂(超急坂)は今日が初めてなの〜、とわざとらしく言っていた。
このガイドさん、冗談を交えながらノルウェイ語、英語、ドイツ語でずっとしゃべりっぱなし。大した記憶力である。こちらは冗談はもちろん、説明もよく分からず、ずっと話し通しなのはちとうるさく感じた。
ホニングスヴォークは漁業中心の町で、緯度のせいもあって木は生えず、かといってツンドラというには岩が多すぎる。少ない草を食べるためにヤギが放されているのだが、心なしかやせているように感じる。市内はすぐに抜けてしまい、あとは荒涼たる山と丘の連続だ。
途中でサーメ人のキャンプというところに停車する。タンザニアに行ったときのマサイ村と一緒で、見学と土産物屋がセットになっているわけだ。サーメ人(どうもこちらで聞くとサーミに聞こえる)とは、ラップランドあたりを中心に、ロシアから北欧の北部に住んでいる人たちで、北欧の国境線が政治的に変わるたび、分断されつつ生活してきた。今は定住している人が多いというが、以前は、トナカイを放牧し移動をしていたとのことだ。サーメの中に国会に相当するものもあるらしい。そんなわけで、このキャンプにもサーメの住居、苔のようなものを食べるトナカイ、土産物の店がある。サーメには独自の言語があるが、既に長い間各国の言語を使っているため、バイリンガル以上になっている。売店の女性はきれいな英語を話した。この人、よく見たらバスの中に乗っていて、ツアー終了後にはガイドさんと帰って行った。やはり町に住んでいるんですね..
土産物はトナカイの角を加工したキーホルダーやアザラシの皮の財布、木彫り細工などだが単価が高いので私は遠慮した。値切ればいいのかも知れないが。
ノールカップは市内よりは寒かった。4℃くらいである。立派な観光施設があり、そこに入場するだけで215NOK(3200円くらい)かかる。むろんそれを込みでツアー代金を払っているので、フリーパスである。元々、個人で来る場合はホニングスヴォークからの定期観光バスか、レンタカーや自転車といった手段があるものの、今の季節はほとんどがバスのようで、入場料を払ったかどうかのチェックもなかった。施設をいきなり抜けて、裏というか北に回る。ここにノールカップのモニュメントがある。正確には違うのだが、ヨーロッパ最北端と言われているところだ。緯度は北緯71度10分21秒。施設の中には最北端郵便局もある。ただし、客が少ないからか窓口には誰もいなかった。
ツアー客のために、映画があるというのでそちらに移動する。本当はもう少しまじめに写真を撮りたいのだが、映画は1回限りというので皆に着いて行った。その映画は3枚のスクリーンに投影された非常に立派な作品で、これはなかなか撮れないだろうと思える映像がたくさんあった。今日は天気が良くないから、そういう意味ではこんな美しい、選ばれた映像を見るのも楽しい。ただちょっと、米国映画風で、くどくてうるさい音楽はどうかと思ったが。
映画のあと、また外に出る。映画の間に、天候が悪化していた。しまったなあ。それでも意地で撮影をする。それにしても、集合時刻がずいぶんと後に設定されている。おそらく、この施設で昼食を食べてもらおうという魂胆かと思う。船のホニングスヴォーク到着は11:45、そこからサーメキャンプの時間を入れて12:40くらいに着くので、ほとんどの人は昼食を取っていない状態なのである。
14:40に再集合、帰りもずっとしゃべりっぱなしのガイドさん、いやもう、面白い人だがこっちはちょっと疲れたよ。
船に戻る。バーコードはエラーが出るかと思ったらちゃんと認識してくれて、荷物室に行けた。外に出るときにエラーが出たが、係の人は事情をすぐ理解してくれた。よくあることなのだろう。ノールカップ観光をして、ホニングスヴォークで下船という人は私だけだった。独り寂しく出港を見送った。別に見送る必要はないのだが、要するに、することがない。観光案内所は16時で終了、いまの段階ではあと15分くらいあるはずだがもう閉まっているし、そこに併設されている博物館も同じだ。それなら、ということで近くのカフェに入って遅い昼食とも早い夕食ともつかぬ食事をすることにした。マックエールという、トロムソで製造されている世界最北のビールがある。それと、サーモンのグリルを注文した。この店は席で注文するのではなく、カウンターで注文してその場で清算するようだ。いくら待ってもビールが来ないので、確認しに行ったらビールは注文に入っていなかった。ビールと料理で210NOKか..もう何も言うまい。マックエール(ピルスナー)は濃厚な風味があるが万人向けとは言えないような気がする。爽やかな苦味というよりは少し重めでじっくり飲む感じか。料理は、これはどうも間違っているようだ。白身魚のフライである。でもぷりぷりして美味しい。ニンジンの酢漬けと一緒に食べてもいい。ポテトが3つもあるので十分量もあって楽しめた。ビールでかなり酔ったように思う。それに、何となくぐらぐらする。これは船に乗っていたせいだろう。以前、東北新幹線で車内販売のアルバイトをしていたときに、やはり乗務後にはぐらぐらしたのを思い出す。なんだか気持ち悪い。外に出て、深呼吸する。
かなり早いが、空港に向かうことにする。この町には、空港までのバスの便がない。ほとんどの人が自家用車で行ってしまうのか、あるいはバスが必要なほど乗客がいないか、だろう。幸い、タクシー乗り場はカフェのすぐ近くにある。そこの事務所に近づいて行ったら、運転手が出てきた。空港は島の反対側にある。平地が少ないフィヨルド地形の島なので、そこにしか作れなかったのではなかろうか。距離は10分もかからないところで、近い。空港の周辺で大きな工事をしているので、いったいなんだろうとタクシーの運転手に聞いてみたが、よく知らないようだった。道路でも作っているのでは、と言うが、この先空港以外には何も無いし、結局何も分からなかった。代金はちょうど100NOKだった。
空港の手前に何台か車が停まっている。建物内には客はいないので、これはここに停めて出かけた人の車だろう。昨夜、沿岸急行船の中にいるとき、ウィデロー航空からショートメッセージが来ていて、それに従ってチェックインと再確認を行っているから、窓口では荷物を預けるだけである。散歩したいのだが、と聞いたら出発15分前には戻ってきてくれと言われた。
空港の周りには、工事をしている一角を除き、数軒の家と漁業用の作業小屋があるだけだ。歩いても見るものがなく、すぐに飽きてしまう。できれば自分が乗る飛行機の着陸を撮りたいのだが一向に来る様子がない。管制官が塔に現れ、飛行機に積む荷物が出てきた。もうすぐと思うが、それでも来ない。かなり粘って待っていたが、結局外では撮影できず、係員に呼び戻された。
セキュリティを通って出発ロビイに入ると、客は8人。飛行機は39人乗りのダッシュ8-100である。座席は自由だ。しばらく待っていると、北の空に機影が見えた。着陸するところが建物の影で見えず、残念。どうも見たところ、他の空港からの経由地のようで、客の全員は降りてこない。窓側に座れるか少々心配だ。
ようやく搭乗となった。機内は狭い。それでも2+2の4列あり、最後列は真ん中にも座席があって5列。まるでバスのようだ。後方に歩いて行ったら、見事に窓側を取られてしまった。他の客が乗り込み終わるのを待ち、前のほうを確認すると空きがあったのでそこに移動した。しかしプロペラのすぐ横である。道理で誰も座らないわけだ。プロペラの駆動音、振動は大きい。滑走路に出て、片隅でターンして、一気に飛び立った。風はあまりないようで、それほど揺れない。あっという間に雲を突き抜けた。風景を楽しむどころではない。
飛行機は20分ほどでハンメルフェストに降りる。CAは男性1人で、機内サーヴィス(有料)をすばやく済ませ、さらに小さなチョコレートを配った。慣れたもので、手際が良い。ハンメルフェストに到着すると、10人くらい降りた。私は1列だけ後ろに下がった。先の席は一番前なので荷物が足元に置けないのだ。ハンメルフェストからトロムソまでも天候は同じで、見渡す限りの雲海であった。残念である。
トロムソは曇りで、気温も8℃くらいあって過ごしやすい。今日は空港バスには間に合った。このバスの運転手さんは、丁寧で良い。出発前に手荷物検査場に呼びかけに行っていたし。しかしそれだけではない。私はアミ・ホテルというところに泊まるのだが、運転手さんはそれを聞いて、終点の後でそこまで行ってくれたのだ。信じられないほどの対応である。このバスは空港からの最終バスで、あとは車庫に戻るだけという事情もあったとは思うが。いやともかくありがたい。住宅地の中にある小さなホテル前の道に、大きな空港バスが止まっているのは壮観だ。
ホテルは15時までしか係の人がいない。従って、その後はパスコードでドアを開け、部屋の鍵も、パスコードで開けるセキュリティボックスの中に入っている。部屋は24番、ダブルのシングル使用、シャワー・トイレは共用で513NOK(7700円)。とりあえず寝るだけだから共用でもいいや。無線LANのパスワードはABCDE、なんじゃそりゃ。共用のトイレ、シャワー室はきれいで、スペースも十分にあったので快適だった。ベルゲンの宿に比べるとはるかに良い。ネットにつないでメイルチェックをしたら、昨日今日だけでたくさんのメイルが届いていた。会社からは、新型インフルエンザ対策のため帰国後は3日の自宅待機要請が。つまりこれで27日間連続で会社に行かないわけだ。トホホ。
明日のために早く寝ることにした。
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