09年4月下旬−5月中旬
第4次欧州旅行


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●第10日 09年5月3日(日) ライプツィヒ

 アラームで起きた。8時だ。今朝も食堂は混んでいる。今日はゲヴァントハウスでMDR(中部ドイツ放送)交響楽団の演なんだかかわいい奏会、その後、楽器博物館とシューマンハウスに行く予定。
 そのMDRシンフォニーの演奏会、開演が11時、とはなかなか日本では見られない時刻(午前です、念のため)。これは教会に行った後に演奏会にでも、という信心深い人たちのための設定だろうか。たしかトーマス教会も9時半から礼拝だったはず。私は不信心なので、部屋でゆっくりして、10時近くにホテルを出た。いつものトラムの停留所で注意深く掲示を読むと、このトラムの、中央駅での発着番線が変わったのは、ゲヴァントハウスがあるアウグストゥス広場あたりの工事によるものだった。それで、本来アウグストゥス広場からDBの中央駅前に向かって街の東北部分を走るべきところが、工事のため南西から北西に向かって迂回しているということのようだ。なので、その迂回路も乗ってみようと、今日は中央駅の臨時停留所で降りず、そのまま乗って行くことに。トーマス教会が見えて、しばらく走ったところで下車。開演30分前なのでそのままゲヴァントハウスまで歩いてちょうど良い時刻だ。

 ハイドン「四季」はほとんど聴いたことがないので、パンフレットゲヴァントハウスを一応買っておくが、中身はさっぱりである
(パンフレットは全部ドイツ語)。出演者などを書いておこう。

ハイドン/オラトリオ「四季」
ソプラノ:アンナ・コロンディ (クリスティアン・エルゼ急病のため交代)
テノール:マルクス・シェーファ
バス:ゲオルク・ツェッペンフェルト
指揮:準・メルクル
MDR交響楽団・合唱団(合唱指揮:デイヴィッド・ジョーンズ)

 急病云々は、以下の紙切れが入っていたから知った。
Christiane Oelze hat krankheitshalber ihre Mitwirkung an diesen Konzerten absagen mussen. Wir danken ANNA KORONDI fur die kurzfristige Ubernahme der Sopranpartie.
「クリスティアン・エルゼは病気のため本コンサートへの参加を取りやめた。我々はアンナ・コロンディの急遽のソプラノパートの代役出演に感謝する。」といったところだろう。もっとも、私の取った席は舞台から遠いので、パンフレットを買わなかったらその事実を知らないままだったと思う。
 さて、演奏会場は、これはもういろんなところですっかり定着している、ワインヤード式というやつで、舞台を囲んで客席が配置されているものだ。オーケストラ後方の席は3人しか客がいなくて、開演間際に会場の係が2人をサイド席に移動させていた。残る1人は杖をついていたので移動せず。放送交響楽団であるから、収録もするようで、ものすごい数のマイクがぶら下がり、突っ立っている。ちょっと目障りだ。放送局って、洋の東西を問わずこんな調子なので好きになれない。これでいい音が送り出せているかいうと、少なくとも日本はダメである。どうダメなのかというと、平板なのだ。どこの音もきっちり聞こえて遠近感がないというか。最近のオケは十分機能的には上手いから、そんなにマイクで拾わなくても個々の音も聞こえるというのに、とにかくディテイルが出ればそれでいい、という風に感じてしまうのだ。音楽全体を聞かせるようになってくれないものだろうか。
 客層の7割くらいが老人ではないかと思われた。私はいの一番に会場に入り、しかも通路側のはじっこだったので、後から来る老齢の方々にダンケダンケと、たぶん一生分言われたような気がする。おばあちゃんが列を確認しながら「えんとしゅーーーるでぃげん、ずぃーびって」とノンビリ話しかけてくるとこっちも笑顔で席を立ってあげたくなる。それにしても、日本で言う3階席の一番上まで、えっちらおっちら、皆さん急な階段をゆっくり登られる。これは大変だわ。

 演奏は、まず演奏時間が145分と非常に長いので、四季のうち夏までを前半として休憩が入る。オーケストラは2管編成(終曲だけトランペット3人)にトロンボーン、コントラファゴット。このコントラファゴットはベルが上に向いていた。けっこう珍しいと思う。最初、まさかオフィクレイドかと思ったのだが違った。ヴァイオリンは5プルトなので普通よりちょっと小さいくらいだ。オケの出来は、突出したところがなくて、正直な感想としては退屈な感じがした。準・メルクル氏の指揮は明快で、全体の流れは見通しがよく順調、全体にくっきりした演奏でコンパクトにまとめようという意識はあったと思われる。ラッパは極めて普通の、モダンな演奏で、音が軽くて浮き気味。個人的な好みからはあまり好きになれない演奏だった。終曲だけの3番の人は、せっかくの出番も、あまり重要なことをさせてもらえない。むしろ、これまた1曲しか出番がないタンバリン・トライアングルのほうが印象深い(そりゃ楽器のキャラクターからしてそうだが)。トロンボーンはアルトの人がトランペットみたいな固い音でびっくり。合唱のサポートになってないような。ホールの音響も、ちょっと直接的な音が聞こえる感じだった。
 合唱は良かった。バランスが良いし、オケにも負けないし。ソロは、代役のソプラノと、テノールでちょっと合わないところがあったものの、総じてレヴェルは高くて特にテノールとバスはそれぞれのキャラクターをよく活かした歌唱だったのではないかと思う。
 休憩のとき、会場内の様子さすがに通路側でずっと座っているのはまずいかと思い、ホール内を探索。地階部分、フォワイエはホール手前のサイドで、クロークが奥にある。そのクローク部分も通り抜けができるので、地階だけでぐるりと1周することができる。チケットにはアルファベットで大きくまず一文字あって、それは入口ドアの印なのだが、上るべき階段をも示していてこれは分かりやすい。そして開演前に鳴るベルまたはブザーの大きな壁画(?)がある代わりに、なんとシューマンの交響曲第1番の冒頭が鳴る。そう、この曲はここで初演されたのだった。ついでに言うと、シューマンが書いた通りにゲヴァントハウスのラッパの人が上手く吹けなくて、冒頭部分は初演時に直されたのだった(ヴァルヴつきラッパがなくて、短調での提示がきれいにできなかった。後に、マーラーがそれを戻した版を作っている)。それはともかく、「春」の冒頭ってのはいい趣味だ。まあ2番じゃ誰も気づかないだろうから。
 演奏が長かったせいか、後半では客席が少し空いた。日曜の昼、他に出かける用事もあるだろう。私の後ろはかなりガラガラになった。私の隣のおじいさんはずいぶん熱心のようで、前半終了後に立って拍手していたし、それぞれ皆さん楽しまれたようだ。終演時には何かよくわからないが、合唱の人全員に、花を一輪ずつ配っていた。それができるほど、長く拍手が続いていた。

シュパーゲルを食べる 終演後、ゲヴァントハウス前のレストランに行き、昼食。注文したのはSpargel mit Filet vom Schwein an Sc. Dijonaise und Kartoffelnというもので、白アスパラガスの豚のフィレ肉添え、ディジョネーズソースとポテト、といったところか。ディジョネーズソースはディジョンマスタードとマヨネーズが主体のソースとのこと。白アスパラガスは風味が何とも言えず美味しい。ドイツの春ならではの食べ物だそうで、鮮度が重要らしくなかなか他ではお目にかかることができない。それにしても、これで14ユーロってのは高かった。まあゲヴァントハウスの目の前のレストラン、いかにも高そうな立地条件ではあグラッシ博物館った。そうそう、忘れてはいけない、豚肉も美味しいのだ。ちょっとピリ辛の下味がつけてあり、それとまろやかなシュパーゲルの味とが上手く合っている。

 楽器博物館は、グラッシ博物館の中にある。楽器博物館はライプツィヒ大学の運営によるものだ。入場料と写真撮影許可を取り(札をくれ3Dサックバットる)、早速中に入る、というところで荷物はロッカーに入れろという。仕方ないので、E-620と9-18mm、ちょっと距離があるところのものを撮るために14-42mmも持ってこれはポケットに入れる。館内はガラガラ、というか、どうも見学者は私しかいないようだ。それはそれで寂しい。
 ここの展示も、やはり部屋ごとに時代を区切っている。そして、3D音響システムなるもので部屋全体にその展示室はなかなか広い時代の音楽(当然、オリジナルの楽器による演奏)が流せるのだ。混んでいると自分の好みの音楽が流せないから、今日のように一人しか居ない場合はいいが、やはり個別オーディオガイドのほうが博物館という機能には向いているような気はする。もっとも、そんなに客が来ないのかも知れないが。トランペットの展示では、缶のような円筒形の楽器があった。当然ナチュラル楽器なのだが、その長さを小さくまとめるために、ぐるぐる巻きにして缶の中に入れたというものだ。X線写真があったが、有料というので持ち出せず。財布もロッカーに入れてしまったのだ。残念。展示は充実していて、来てよかったと思う。
ゴットフリート・ライヒェ 小型トランペット? 肩掛け式チェロ 杖型トランペット 色々な工夫が美しく、楽しい
調性切り替え式ホルン 自動演奏ラッパ(?) ファンファーレ用トランペット これはなんともすごい ライプツィヒといえば楽譜出版

 次街の近くに廃工場にシューマンハウス。そこはさらに郊外の方向に歩いたところにある。周囲は閑静な住宅街だ。手前に大きな廃工場があって若干不気味であるが、徐々に再整備されていくのだろう。昨日行ったメンデルスゾーンハウスと同じく、シューマンハウスも展示は階段を上がって1階になる。入口が閉められているので本当にやシューマンハウスっているのだろうかと不安になるが、歩道のところに小さな表示があるのでここがシューマンハウスであることは分かる。入場料を払い、写真撮影許可をもらい、見学する。ここはシューマンが新婚生活を送ったところで、クラーラの展示も多い。展示物はツヴィッカウのシューマンハウスからの複写もあるので、明後日行くつもりのツヴィッカウで見られるものも多かった。シューマンハウスは、2階以上が「クラーラ・シューマン自由小学校」という学校になっていて、一部は1階の展示スペースと共用になっているのか、廊下には生徒の作品のようなものもあった。シューマンの書斎があったところはだれか職員の居室になっていて展示室としては活用されていなかった。そういう意味では若干、展示が中途半端な気はした。
 17時閉館だったのだがちょっとそれを越えて見学していた。係員は何も言わなかった。ありがとう。
ヴィーク社のピアノ 展示室はこんな感じ 初代ゲヴァントハウスの様子 ロベルトの日記

 夕食は中央駅のショッピングモールで、アジア料理の店に入った。ずっと外食で野菜が足りないのだ。この店は野菜がかなり多めなので、ホッとした。
 夜、窓を開けていたら雨のにおいがした。天気は徐々に悪くなっているようだった。



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