09年4月下旬−5月中旬
第4次欧州旅行
前口上
我が会社では入社10周年以降、5年毎に特別の休暇が与えられる。そのうち20周年の休暇だけは、連続した平日で10日間の休暇である(他は5日間)。そして、まがいなりにも私は20年働いたので、この際大きな旅行をしてみようと考えた。
行き先はヨーロッパ。その中でも、ドイツ、オーストリア、チェコ、ノルウェイを主に回る。ドイツの中でも、通常の旅行では行けないであろう、ツヴィカウ(作曲家シューマンの生誕地)は入れたいし、その近くで観光の拠点となるライプツィヒはメンデルスゾーンやバッハゆかりの地である。ここを重点的に見たい。オーストリア、チェコはその周囲というか、列車で移動しつつ音楽でも聴ければいい、という程度だ。そしてノルウェイは純粋に景色を眺める旅行。フィヨルドやノールカップ、でもベルゲンに行けばグリークの家も見たいし、でけっこう盛りだくさんの旅程になった。
前の欧州旅行(01年)のときは独身で、その旅行はオーケストラの演奏旅行だったから同行者が100人以上いて、何も考えなくても予定が決まっていた。しかし今回は自由旅行だし結婚もしている。家族を連れて行くとか、そういうことも考慮しなくてはならない。それで配偶者Sはというと..「ツヴィッカウ?なにそれ?」であった。一応、Sもオケでチェロを弾くから、ちっとは興味を示してくれるかと思ったが、元々ヨーロッパには興味がなくて「定年後にでも」と言っているくらいなのだ。これは誘い方が悪かった。
そんなわけで、家族を置き去りにする24日間の旅程が出来上がった。わざと興味なさそうなところを選んでSに提案したわけではないが、結果としてひたすら自由を満喫するような計画になってしまい、職場の人や友人から「ええ〜〜っ」との声が多数。やっぱりそうだよな..すみません非常識で..
(拡大する写真には枠がついています。また文中にも写真へのリンクがあります。)
●第1日 09年4月24日(金) 自宅→成田→フランクフルト
昨晩は配偶者Sと息子と、3人一緒に寝た。普段はSと息子が一緒で、毎晩夜更かしな私だけ別に寝ているのだが、さすがに旅行が近くなって自責の念にかられてというか寂しくなって、3人で寝ようと提案したのだった。しかしベッドが狭くてあまりよく眠れなかった。夜半に寝相の悪い息子に何度も蹴られたのは良い思い出としておこう。
3人で朝食を取る。保育園に送る時間があるのでそう言ったら、息子は「ママがいいの」とつれない返事であった。普段はほとんど私なので、たまには母親がいいと思うのだろうけど、息子よ、明日からはママだけなんだよ。くれぐれもママいやとか言わないでくれ。
洗濯物を干して、掃除機をかけてから出発した。それでも時間が余って、横浜駅で成田エクスプレスを20分も待っていた。成田空港には11時前に到着した。3分ほど遅れていたが問題はない。空港の売店でちょこっと買い物をして早速チェックインする。行きはファーストクラスである。マイレージ特典のビジネスクラス往復、のつもりだったのでこれは本意ではないのだが、あいにくと空席がなかったのだ。4月発券から燃油サーチャージが大幅ダウンとなり、4月1日早朝に予約を入れてみたが時すでに遅し、見事キャンセル待ちに。それで、後日空きが出たファーストクラスに変更したのだった。
所用あってマレーシアに郵便を出し、出国審査を通り、JALのラウンジに行く。ファーストクラスのチケットなのでファーストクラスのラウンジに案内される。慣れないことなので居心地があまりよろしくない。格別豪華でもないのに、隅っこでPCの設定などしてオレンジジュースを飲んでいた。この旅行のために買った小型PC、実はまだ無線LANにつなげたことがなく、少々とまどった。それで搭乗時刻近くに慌ててメイル見たりmixiにコメントしたり、最後には小走りに搭乗ゲートに向かう羽目になった。
搭乗は64番ゲート。航空機はB777-300ERだ。NYやサンフランシスコに飛んでいる一番新しいシートがついたものではないが、十分広い。シートは9席しかなく、大きな樹脂の塊のよう。銀色の樹脂塗装部がところどころ傷になっていてちょっと目立つ。席は3Kで、右側の最後部窓側だ。ヨーロッパに行くとなればシベリアを眺めることができるわけで、太陽がまぶしくないように右側を希望したのだ。
CAさんがボーズのノイズキャンセリングヘッドフォンを持ってきた。離着陸時も使えるというから嬉しい。残念なことに、端子部分が特殊形状なので、自分が持ち込んだMP3プレイヤには使えない。仕方ないので、ヘッドフォンは2つ手元に置くことになった。その借りたボーズだが、ノイズキャンセルの効果は絶大だ。航空機ノイズに特化しているのだろうか。しかし、肝心のオーディオシステムにブーというノイズが乗っている。外のノイズをキャンセルした結果それが分かるようになってしまったのは皮肉な結果だ。
定刻に出発する。天気は曇りである。雲の上をしばらく飛んだら日本海に出た。海上は少し雲が減ってきて、これからのロシア上空からの景色が楽しみだ。
食事のサーヴィスが始まる。まずはシャンパン(シャンパーニュ・パルメドール
ニコラ・フィアット 1997)。おつまみにあられと乾燥納豆が出る。これはJALの他のクラスでも袋入りで配られているものだと思うが、乾燥納豆は今まで意味もなく忌避していた。今回は皿に盛られているので試しに口にしてみたら美味しかった。ただ、シャンパンには合わない。食事のサーヴィスは左手前方の席から始まっているようだ。いろいろ手順があるので全員いっぺんに、というわけにも行かない。そういう意味でも9席しかないのは良いバランスかもしれぬ。私のコースはビーフ。これは予約時に電話で聞かれていたことなのだが、一応確認もされた。こういうあたり、実に丁寧である。ここで、メニューを転載しておこう。
・食前の小さなお皿 取り合わせ
桜海老のロワイヤル シェリー酒の香り
フォアグラフォンダンのミニエクレア バラのコンフィ添え
レモンのジュレにのったスズキとサーモンのセビッシュ仕立て 胡椒をきかせたスティックパイと共に
・アペタイザー
鮎と帆立貝のパルフェ オニオンとピーマンのコンフィ添え
・メインディッシュ
和牛フィレ肉のシャトーブリアンステーキ シャスールソース
・デザート盛合せ
レモンケーキにのせたブラマンシェ メロンのジュレを添えて
エキゾティックカラメルケーキ
ヴァニラアイスクリームにクリスタルオレンジの飾り
カスタードとラズベリーのソースと共に
..書いていて疲れた..選択肢は省略だ。ワインは白が2007 デュルクハイマー・ホッホメス
リースリンク・シュペートレーゼ・トロッケン(ドイツ)、赤はアルタイール・シデラル
2003(チリ)。ワインのことなんぞ知らないので、主体的に選んだわけではなく、なんとなくである。ドイツワインはトロッケンの名前が示すとおり、辛口である。リースリンクらしいフルーティさは残しながらもさっぱり辛口で美味しい。ところで、オードブルはなかなか美味しいのだが、なんだか冷えすぎのような気がする。機内の気温もちと涼しすぎである。メインの肉は非常に良かった。ミディアムレアで頼んだのだが、上手く焼けていた。パンについてきたバターは30gもあって大きすぎ..チーズかと勘違いした。チーズは、食後に赤ワインを残していたら盛り合わせを持ってきてくれた。ブルーチーズが美味しい。私はこの手のが苦手だったのだが、今日のは非常に上手く合っていて美味しい。
食事の途中でロシア上空に入っていた。しばらくは雲が多くあまり景色が見えなかったのだが、西シベリア低地あたりでは晴れて雪の大平原がしっかり見えた。ただ、食後で昼寝の時間なのか、皆さん窓のブラインドを下ろして機内は真っ暗だ。時々外を見るのがちょっと申し訳ない気分。西行きなんだから昼間からあまり寝なくてもいいと思うのだが、規則で決まっているのだろうか。
仕方ないので、機内エンタテインメントで「旭山動物園物語」を見る。面白い。実話だというのだが、本当に市長の親戚が職員だったりしたのだろうか。まあそこらへんは物語の本質には関係ないか。旭山動物園には2月に息子を連れて行ったのだが、あまり時間がなくてろくに見られなかった。次はもっとじっくり見たいと思う。時計を見ると日本時間で20時半を回っていた。まだあと5時間近く飛ぶ。2回目以降の食事は決まった時刻には出さないで、客の好きなときに出すというので、リングイネパスタ
ほうれん草とパンチェッタのクリームソースなるものを注文する。美味しいが量がちょっと少ない。到着前にもう一品かなあ。
日記をPCでまとめておく。しかしここまで書いてまだ2時間40分も残っているんだなあ、飛行時間が。ドイツ語の勉強をする気もしないし、退屈だ。いまのうちに寝ておくか..
到着1時間半前に起きた。バルト海の上だ。ここからは強烈な西日を浴びるので、引き続き窓は閉めたままにしておく。カレーを注文する。野菜のカレーで、辛口だ。ラウンジにあるどろっとしたビーフカレーではなく、さらっとした感じでこれはこれで美味しい。
ドイツ上空は薄く雲がかかっている。フランクフルト着陸前は厚い雲の中の降下となり、かなり揺れた。定刻通りの到着だった。ファーストクラスなので一番先に機外に出られる。しかし後から後からどんどん人が急ぎ足でついてくるので、なんだか落ち着かない。空港内を観察する間もなく、入国審査に並んだ。空港内は工事中のところが多い。この入国審査場も、天井の配管がむき出しで、仮の場所のように感じる。窓口も少ない。入国審査官はけっこうまじめに質問してくる。最近、黙っているばかりのところに行っていたのでちょっと新鮮だ。
さて、JALが着くのはターミナル2で、鉄道駅は1のほうにある。シャトルバスがあるという表示なので、出口を出たらすぐそこに停車していた。急いで乗車したら10分近く待たされた。ターミナル1までは近いと思ったら、道路はすんなりつながっていなくて、バスはくねくねと走っていた。停留所のすぐ下がレギオナルバーンの駅だ。長距離駅は連絡通路を渡って少し歩く。レギオナルバーンの駅は薄暗くてちょっと怖い雰囲気だ。成田にしても羽田にしても、日本の駅は(空港駅に限らず)明るいと実感する。切符の自販機は文字が小さくて使いにくい。ガイドブックに書いてあるはずだが私はガイドブックのその手のページを全く読まないので、さてどうするかというと、他の人の様子を見るのだ。すると、フランクフルト中央駅行きは特別にボタンが設定されている。ならば簡単、3.7ユーロの券を購入する。プラットフォームに降りるとちょうど市内行きの列車が出て行くところだった。まあ慌てないで次のにしよう。電光掲示板にはKurze(まもなく)とあるからすぐ来ると思ったら10分くらい待った。車内は簡易な内装のいかにも近郊型電車といった感じ。日本人女性が2人、ドア付近に立ってポケットの中身を入れ替えたりしている。非常に危ないですなこれは。ドア付近=狙われやすい上に、そんな場所で財布とおぼしきものを出し入れしていては。
窓の外は新緑がきれいで、観光にはちょうどいい季節だ。Sバーンは3駅でフランクフルト中央駅に到着した。Sバーンの駅は地下駅だ。長距離の駅とは分かれていてなるほどこれは合理的だと思う。日本だと長距離も近距離も同じ駅構内で、改札口はあるし、ちと歩きにくい。
皆が上がっていく方向は町の中ではないようだ。町の方向は寂しい感じの階段があり、そこから地下通路を歩くと、駅前の太い道路をくぐることができる。目指すホテルはそこから1ブロック先であった。ホテルの周囲は怪しい店が多数。ストリップやらセックスショップやらが立ち並ぶ一角である。駅近くで安い(といっても1泊朝食つきで40ユーロ)宿となるとこういうところになってしまうのか。チェックインする。部屋はセミダブルのベッドで、内装は非常に素っ気無い。天井のランプがつかないので入り口だけ明るいのだがまあいいや。ベッドの枕元にはスタンドがある。
一旦外に出て、飲み物を調達する。ミネラルウォータと、りんごの香りつき炭酸水だ。2本で2.38ユーロ。空港では1本2.5だったからむちゃくちゃなボッタクリ価格だ。リンゴ炭酸水は砂糖は入っておらず、香りだけである。さっぱりして良い。部屋に戻り、WLANをつないでみた。無事にネットにつながった。WLANは電波が十数か所検出され、付近のホテルや店、至る所に無線LANがあるようだ。
シャワーを浴びて寝る。夜半、外が騒がしかった。金曜の夜、怪しい地区となれば酔客も多かろう。疲れていたのですぐに寝入ってしまった。
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