デッケルマウントのページ

 デッケルマウントとは通称である。コンパーシャッターを作っていたフリードリヒ・デッケル社の名前からそう呼ばれるようになった。レンズの後方、マウント内にリーフシャッターを配置して一眼レフのマウントを提供する規格で、フランジバックや絞り連動の機構は共通であるが、マウントの爪は供給先の各社で異なる設計をしており、カメラシリーズが異なると別物になりレンズの互換性はない。フォクトレンダーはカメラとレンズの両方を作っており自社で完結しているのであるが、カメラを作ってレンズが他社から供給されている場合はややこしい。コダックレチナシリーズにはシュナイダーとローデンシュトックから供給がありRetina-と名前が入ったレンズはレチナシリーズに使える*。しかし同じレンズメーカーでもイロカ向けやブラウン向けのレンズはレチナには装着できない
(例えばシュナイダー:クセナー50mmのレチナ用とブラウン用、ローデンシュトック:ロテラー135mmのレチナ用とイロカ用、など)。稀に、マウントの爪を削ってカメラシリーズ間で互換性を持たせている人もいるが、一般的にはマウントアダプターを使ってM42マウントのカメラに装着したりすることがもっとも普及したやり方だろう。これであれば、マウントを加工しなくても、色んなメーカーのレンズを新しい世代のカメラに装着して楽しむことができる。
 このマウントに限らず、リーフシャッターを内蔵したマウントに共通する欠点として、最短撮影距離が長いというのがある。シャッター機構がマウント内にあり、シャッター羽根を駆動する機械を収めた筒状の部分にレンズ後端を突っ込んでいることから、レンズを繰り出すとレンズ後方からフィルムに至る光束が筒に遮られるのが原因というのが定説である。そのため最短撮影距離が85-90mmレンズで1.8-2m、135mmレンズで4m、200mmレンズで8.5-10mとかになってしまう。その点は不便であるが、同じスペックのM42マウントのレンズよりは安価なレンズが多く、フォクトレンダーやシュナイダーのレンズは供給量が多かったようで市場に多く出回っているから探しやすい。そしてレンズの写りが良いのが何よりありがたい。私の場合は、M42マウントよりデッケルのシリーズの方が多くなってしまった。

(*注:Retina-と入っていないコダックレチナシリーズ用のレンズもあるのでこれまたややこしい。もちろんレチナシリーズには装着可能である。)

Bessamatic-m *

ベッサマチック-m,Skoparex 35mmF3.4 フォクトレンダーのデッケルマウントの一眼レフはベッサマチックとウルトラマチックがあるが、このベッサマチックmは、ベッサマチックシリーズの後の方、64年に出ている。レンズシャッター一眼レフであり、インスタントリターンミラーになっていないので、撮影後ファインダ像は暗転したままになる。このカメラは、シリーズでは異色の機体である。露出計が外され、全面マットのスクリーンを採用し、絞りとシャッターを独立で変える機構になっている。通常、デッケル機はライトヴァリュー(LV)を決めると、絞りとシャッターが連動してLVを一定にするよう動く。このカメラはその機構がないので、露出を意図的に変える作業がしやすい。シャッター自体は非常に静かであるが、ミラー動作のショックは小さいとは言えない。作動音はパコッという感じで、軽快。
 このカメラは大きく重いので手放してしまい、その後はM42マウントへのアダプターを使ってベッサフレックスなどで撮影している。きれいなスクリーンや正確な露出計が使えること、インスタントリターンミラーであるのはメリットである。ただ、自動絞り機構は連動しないので、暗いシーンでは開放でピントを合わせて撮影時に絞る、などの手順が要る。

Retina IIIS

 このマウントはレンズシャッター式の一眼レフを想定しているが、コダックやバルダ、イロカがレンジファインダー機を出している
(細かいことを言うと、これより前にフォクトレンダーのヴィテッサTやブラウンのスーパーカラレッテなどで使われたタイプのレンズもあるが、互換性はない)。一眼レフのミラーの分、長くなったフランジバックのために、ボディから突き出たマウント形状ではあるが、35/50/85mmのレンズが薄いので意外に大きな感じはしない(28mm、50mmF1.9や135mmレンズはどうしても長くなるので目立つ)。このカメラで使うには、レンズ側の距離計連動のカムの有無を確認する必要がある。広角と標準では最短撮影距離は90cmで、85mmや135mmはそれぞれの最短撮影距離になる。
 ファインダー視野は蛇腹のレチナシリーズのIIICなどと同様、明るくてくっきりとしていて見やすいが、二重像は中央部に小さくぼんやりとした円になっていて、ライカM型のような実像式ではないため境界部分がぼやけてあまりコントラストが感じられない。視野枠はレンズによって切り替わるが、35mmの枠は常時出ていて、その中で50/85/135mmの枠が切り替わるようになっている。パララックス補正もあるので、近距離の構図も失敗が少ない。
 露出計は空の影響を受けやすいのでカメラの上に手をかざしたりして対応している。この露出計との連動はマウント下部にある歯車を回しながら絞り値を露出計の針に合わせるやり方であるが、カメラ内の連動機構が紐であり、これが切れて壊れていることが多いようだ。また、露出計の感度を合わせる部分(ボタンのような部品)がなくなっている個体も見られる。
 わざわざ一眼レフ用のレンズを使ってRFを、というコンセプトの最大のメリットはシャッターリリース時の作動ショックが極めて小さいことであろう。ライカのようなフォーカルプレーンシャッターの機種よりも、リーフシャッターの方がブレは少ないし、作動音も静かである。コダック系のレンズしか着かないが、活用して行きたいと思う。


 
クルタゴン Curtagon 28mmF4 (シュナイダー)
 デッケルマウントの中では最も画角が広いレンズである。いろいろ探して60cmまでの近接タイプを入手した。もっとも、近接したければM42マウントのレンズを探せば良い(28cmまで寄れる)のであるが、デッケルマウントアダプターを装着したら、M42レンズと交換しながら撮るのはやはり面倒で、デッケルで揃えた方が便利なのだ。
 描写は、中央部はシャープで、色もきれいに出るが、四隅は甘く、F8程度に絞っても怪しい感じが残る。発売年を考えれば致し方ないかと。
 
レチナ・オイリゴン Retina-Eurygon 30mmF2.8 (ローデンシュトック)
 レアな30mmレンズ。レンズカタログによるとこのレンズは一眼レフのレフレックスS専用
(Nur für RETINA REFLEX S zu verwenden)とあるものの、距離計用のカムも装備されており、実際にIIISに装着すると距離計に連動し撮影は可能だ(最短撮影距離は90cm)。レチナIIISでのフレームは35mm枠が出るが、ファインダー枠いっぱいで概ね実用になるようだ。ただ、レトロフォーカス型構成のために大きな凹レンズがあるから、鏡胴は太くファインダー像は大きく遮られる。そういう意味では、一眼レフの方が使いやすいのは事実である。
 絞り開放ではコントラストが低く、くっきりとした感じがないが、絞れば普通によく写るレンズである。ボケ味はざわざわしていて、きれいとは言えない。
           
クルタゴン Curtagon 35mmF2.8 (シュナイダー)
 レチナレフレックス用の最後期のレンズである。最短撮影距離は60cm、前世代にあったフードをつけるバヨネット部分は省略されている。大きな前玉がレンズ先端にあり、収納時に傷をつける懸念があるので、コシナフォクトレンダーのレンズキャップをはめて持ち歩いている。描写はクリアでコントラストが良い。
 その後、レチナIIIS導入に伴って距離計連動カムが装備された最短撮影距離90cmのモデルも手に入れている
(こちらはレンズ銘がRetina-Curtagonとなる)。以下の作例はどちらのレンズも含んでいる。これらの2世代のレンズが同じなのか、60cm近接の方が第2世代になっているのかは分からない。
 
スコパレクス Skoparex 35mmF3.4 (フォクトレンダー)
 カメラと同時に購入。40cmまでの近接タイプだ(旧タイプは90cm)。しかし、35mmレンズで近接がこれでは厳しい。それなら、一眼レフでなくRFでもいっこうに差し支えないような気がする。レンズはクリアな色再現で、樽型の歪曲があるが、シャープ。なお、後年M42で出る同名のレンズは別設計である。このシリーズ中では比較的安価で、玉数も多いので、探すのには苦労しないと思う。
Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4
Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4
Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4 Skoparex 35mmF3.4
 
ブラウン・レフレックス・リタゴン Braun-Reflex-Lithagon 35mmF3.5 (エンナ)
 ブラウン社のパクセッテレフレックスの交換レンズで、トリプレットに凹レンズをレトロフォーカス配置した4枚構成レンズであるらしい。最短撮影距離は90cm、全体にコントラストが弱く、絞らないと解像も甘めである。大きな凹レンズが突き出た位置にあり、他社のデッケルマウントレンズと違った雰囲気があって良い。
 
レチナ・オイリゴン Retina-Eurygon 35mmF4 (ローデンシュトック)
 ローデンシュトックのデッケルマウントレンズはどれもあまり市場になく、特にオイリゴンの30mmやヘリゴン50mmは高い値段がついているが、この35mmはレアではあるが安価である。最短撮影距離は90cm。レンズ外観はクセナー50mm初期のような鏡胴に収まっており、フードを装着するバヨネットも共通である。
 絞り開放がF4であり最短撮影距離も遠いタイプなので、ボケを狙った写真は撮れないし、ボケ味もさほど良くはないので、あまり近距離のものは撮っていない。
           
スコパゴン Skopagon 40mmF2 (フォクトレンダー) *
 アサヒカメラ誌などによく寄稿している写真家の赤城耕一氏は自らを「35mm病」と称しているが、それに倣えば私は「40mm病」である。このレンズ、普通のガウス系のレンズの先にもう一つレンズを付けたような構成で、望遠レンズのような外観である。果たして、よく写るのか?..と思うが、よく写るレンズであった。最初に持っていたものは最短撮影距離が90cmと遠いので取りまわしはよくなかったし、フードをつけるとさらに巨大化するので、40mm好きだというのにあまり活躍せず、売却してしまった。最近50cm近接タイプを手に入れ復帰した。
(21年4月、作例をすべて差し替え)
 
ゼプトン Septon 50mmF2 (フォクトレンダー)
 通称デッケルマウントのレンズでも、最も美しい佇まいをみせるレンズだと思う。ゼプトンとは、7枚のレンズを使っていることから命名されているようだ。後期の、60cm近接タイプである。それでも、今時の一眼レフ用レンズに比べると、近くに寄れるとは言えない。ピント、ボケ、色が最高のバランスで得られ、素晴らしい描写をする。今後も活用することになろう。
Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2
Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2
Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2 Septon 50mmF2
 
レチナ・クセノン Retina-Xenon 50mmF1.9 (シュナイダー)
 コダックのレチナフレックス用のレンズだ。シュナイダー製。ゼプトンと双璧とも思える、美しいレンズである。ボケはゼプトンに比べると二線ボケっぽいところはあるが、ピントはシャープで、なかなかの描写だ。
 フィルターが60mm径で特殊であるが、レンズが鏡胴の深いところにあり、レンズにキズが付いたりはしにくいようだ。私が持っているレンズは、60cmまで寄れるタイプのものだ。
Retina-Xenon 50mmF1.9 Retina-Xenon 50mmF1.9 Retina-Xenon 50mmF1.9 Retina-Xenon 50mmF1.9 Retina-Xenon 50mmF1.9 Retina-Xenon 50mmF1.9
Retina-Xenon 50mmF1.9 Retina-Xenon 50mmF1.9 Retina-Xenon 50mmF1.9 Retina-Xenon 50mmF1.9 Retina-Xenon 50mmF1.9 Retina-Xenon 50mmF1.9
 
イロカ・クヴィノン(キノン) Iloca-Quinon 50mmF1.9 (シュタインハイル)
 イロカ向けのシュタインハイル社のレンズで、あまり市場では見られない。所有しているレンズは最短撮影距離は90cmである。対応するカメラが距離計連動機のイロカ・エレクトリックしかないのでそれより近接できるレンズはなさそうだ。上述のカメラは当時としては珍しい電動巻き上げで、今となっては動作している個体が見当たらない
(大抵は電池の液漏れで電池室周りが腐食している)から、アダプターを経由してベッサフレックスなどで使うしかない。ファインダー像がくっきりとしていて撮っていて気持ちが良いレンズだ。写りは、中央部は極めてシャープであるが、周辺は甘く光量落ちも目立つ。
           
カラースコパー Color-Skopar 50mmF2.8 (フォクトレンダー)
 フォクトレンダーのデッケル機では最も多く見られる標準レンズだ。レンズが薄く、ピントリングが操作しにくいほどだ。シャープで良い描写。F2.8の4枚構成レンズにしてはボケも自然である。私が所有しているレンズは最短撮影距離が60cmのタイプ。もう少し寄れると嬉しいが、これでも短い方なのである。レンズシャッターSLRの宿命と思って諦めている。
C-Skopar 50mmF2.8 C-Skopar 50mmF2.8 C-Skopar 50mmF2.8 C-Skopar 50mmF2.8 C-Skopar 50mmF2.8 C-Skopar 50mmF2.8
C-Skopar 50mmF2.8 C-Skopar 50mmF2.8
 
カラーランター Color-Lanthar 50mmF2.8 (フォクトレンダー)
 フォクトレンダーの末期にレンズ固定式のシリーズでも多機種に搭載された、前玉回転式の3枚構成レンズだ。レンズが薄く、被写界深度目盛りの絞り連動機構はなく、絞り値が刻印されている。かなり絞らないと周辺は甘目で、近接時も甘い描写である。デッケルマウントではあまり市場では見かけない感じがする。元が廉価版で販売価格が安すぎ、店としても旨味が少ないのかもしれない。実際、たいへん廉価であった。
 
レチナ・クセナー Retina-Xenar 50mmF2.8 (シュナイダー)
 F1.9のクセノンに比べると非常に小型、薄型のレンズだ。最短撮影距離が60cmのものを選んで手に入れた。絞り開放では周辺が甘い感じはあるが、F4以降はシャープで均一な写りだ。色もくっきりしていて良い。
 その後、レチナIIIS導入に伴って最短撮影距離90cmのモデルも手に入れている。以下の作例はどちらのレンズも含んでいる。
 
レチナ・イザレクス Retina-Ysarex 50mmF2.8 (ローデンシュトック)
 レチナ系統のローデンシュトック社の小型標準レンズだ。ボケはざわつくがピントはシャープでよく写る。距離計カムが装備されており、レチナIIISでも使用可能。
           
ブラウン・レフレックス・ウルトラリート Braun-Reflex-Ultralit 50mmF2.8 (シュテーブレ)
 ブラウン社のパクセッテレフレックス用のレンズで、RF機のパクセッテシリーズのウルトラリートと同じであるなら、3枚構成の廉価版のレンズだと思われる。絞り開放から中央部はシャープだが、周辺は甘い。最短撮影距離は1mと遠く、他社がRF機でも0.9mを実現しているのに一眼レフ用でこれでは訴求力に欠けた仕様ではないだろうか。
 
レチナ・テレアートン Retina-Tele-Arton 85mmF4 (シュナイダー)
 シュナイダー製の中望遠レンズ。4群5枚のクセノタータイプで、標準レンズと間違えそうなほど小型に出来ている。最短撮影距離は1.8m、フォクトレンダーのディナレクスよりはマシだが、やはり遠い。ニュートラルな色合いでシャープな描写。距離計カムが装備されており、レチナIIISでも使用可能。
 
レチナ・ロテラー Retina-Rotelar 85mmF4 (ローデンシュトック)
 テレアートンより市場でみかけることが少ないレンズである。テレアートンに比べるとレンズ全長が長く、中望遠レンズっぽい外見である。最短撮影距離は1.8mでテレアートンと同じ。シャープでボケも整った良いレンズである。距離計カムが装備されており、レチナIIISでも使用可能。
           
ディナレクス Dynarex 90mmF3.4 (フォクトレンダー)
 他のマウントシステムの一眼レフレンズに比べると小型にまとまった中望遠レンズだ。ただ、デッケルマウントではテレアートンやロテラーなどもっと小さいものがあり、こちらは鏡胴の径が大きくずんぐりした感じである。最短撮影距離は2m。色合いはほんの少し黄色味がある。ファインダー像が暗く、陽が落ちてくるとピントが合わせにくいのは残念だ。
Dynarex 90mmF3.4 Dynarex 90mmF3.4 Dynarex 90mmF3.4 Dynarex 90mmF3.4 Dynarex 90mmF3.4 Dynarex 90mmF3.4
Dynarex 90mmF3.4 Dynarex 90mmF3.4 Dynarex 90mmF3.4 Dynarex 90mmF3.4 Dynarex 90mmF3.4 Dynarex 90mmF3.4
Dynarex 90mmF3.4 Dynarex 90mmF3.4
 
テレアートン Tele-Arton 90mmF4 (シュナイダー)
 後期に出たレンズで、レンズ銘からレチナの文字が消えている。最短撮影距離は85mmに比べ10cm遠くなり1.9mだ。ヘリコイド部品などを共用し繰り出し量が85mmと同じなのかも知れない。クルタゴン35mmの後期と同様、レンズが前枠近くにあって傷がつきやすそうで、携行時はキャップをしないと不安になる。写りはくっきりとしていて解像もよく、すばらしい。
 
ディナレクス Dynarex 100mmF4.8 (フォクトレンダー)
 デッケルマウントのレンズはマウント部のレンズシャッターの筒の制約から、レンズ繰り出しがあまりできず(光束が筒に遮られる)最短撮影距離が遠いというのが定説であるが、このレンズの最短撮影距離はなんと1mである。なぜか。これはプロミネントのディナレクス100mmF4.5からのモディファイと思われる。つまり、プロミネントではマウント部が繰り出されて50mmレンズ用の動きをするのだが、それをレンズ交換にするために、レンズをボディに固定してレンズを50mmの動きで前後させるが、レンズの全群を繰り出すのではなく、前玉だけを動かしてレンズ全体は100mmとしてピントが合うように設計されている。この方式がこのデッケルマウントレンズ用に応用され、90mmレンズが最短2mなのに100mmレンズが1mという逆転現象が起こっているわけだ。ただ、開放F値が4.8では暗いスクリーンでピントを合わせるのは困難で、セールス的にもあまりふるわなかったのか、市場に残っている個体数は少ない。
 写りは良い。マウントアダプターで使っていると、アダプターのクリック感から開放F値4.8はほとんどF5.6に近い。逆光や曇り空の影響でコントラストは下がりがちなので、フードを装着する方が良い。幸い、レンズ前枠は40.5mm径なので汎用のフードが使える。
           
スーパーディナレクス Super-Dynarex 135mmF4 (フォクトレンダー)
 デッケル機はシャッターの口径が小さく、望遠レンズは繰り出すとシャッターに光線をけられるため、最短撮影距離が異様に長くなってしまう。このレンズの最短は4m。ライカでも、1.5mくらいまでは寄れるはずだ。一眼レフなのでピントと構図は正確であるが、この最短距離はいささか使いにくい。これより長焦点になると、もっと遠くなる。最大の350mmF5.6は、なんと28mにもなる。
 なお、このレンズは中玉の周辺にクモリがあるものを格安で購入したが、影響はなく、シャープに写る。色も濃く出て良いのだが、周辺光量は少し落ちる。
Super Dynarex 135mmF4 Super Dynarex 135mmF4 Super Dynarex 135mmF4 Super Dynarex 135mmF4 Super Dynarex 135mmF4 Super Dynarex 135mmF4
Super Dynarex 135mmF4
 
テレクセナー Tele-Xenar 135mmF4 (シュナイダー)
 カメラの露出計への影響を減らすために、鏡胴が黒くなった後期のタイプである。最短撮影距離は4m。ピント面はシャープで、ボケもきれいだ。良いレンズだと思う。
 
レチナ・ロテラー Retina-Rotelar 135mmF4 (ローデンシュトック)
 レチナIIISで使える距離計カム付きのレンズである。最短撮影距離は4mと遠いし、RFではファインダー枠は小さく、いろいろ不便なレンズである。一眼レフで撮る方が歩留が良さそうだが、レチナIIISにつけても格好が良く、見ていて楽しい。
スーパーディナレクス Super-Dynarex 200mmF4 (フォクトレンダー)
 最短撮影距離はなんと8.5mにもなる。こうなると遠景を切り取ることに専念するしかない。レンズ全長が長い上に前枠は77mmとかなり巨大な見た目であるが、ヘリコイドはデッケルマウントの共用部品だから操作は手元になり、ハンドリングは良くない。画質は良い。近づけないのでボケを活かした写真にはなりにくいが、シャープでよく写る。
 
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